・黒人差別
・人種差別
・虐待、DVをする人達。
あれから一ヶ月後、此処はIS学園。この学園は日本にあるが干渉されない意味で孤島に建てられていた。
そこはとても広く、日々、ISを扱う少女達を育成や教養する為に建てられた建物だ。
しかし、
「「……」」
此所は一年一組の教室。そこは教室全体が広く、真っ白に包まれていた。
そしてそこには、このクラスの生徒達が居た。一人一人違うが全員、白を基準とした制服を纏っている。
が、そこは今、重苦しくも殺伐とした空気に包まれていた。何故なら、そこには二人の男子生徒が居たのだ。一人は日本人、もう一人はドイツ人。
しかし、彼等は周りに居る女子生徒達の好奇と憎悪の視線を向けられていた。
が、彼等はそんな視線に怯みもせず、気にもしていない。
そして、彼等の名は――――日本人は織斑一夏、もう一人はドイツ人のマイク――マイク・クライバー。
そう、彼等こそが男性操縦者であり、あの人物が世界中に伝えた男性操縦者達であった。
そんな彼等を女子生徒達は気になるのと同時に、警戒していた。
――彼等は自分達の立場を脅かすのかも知れない――彼等に憎悪と警戒を抱く者達の心にはそのような言葉があった。
ISを使えるのは女性だけ――そんな当たり前の事が崩れる――女子生徒達はそれを危惧していた。
すると、教室を出入り出来る自動で開く扉から音が聴こえ――教室に居た者達は一斉に扉の方を見ると、そこには、一人の女性が教室に足を踏み入れる。
その女性は手には出席簿を持っているが二十代で子供のように童顔で、緑色のロングカットに翡翠色の瞳に眼鏡を掛けていた。
服は、ドレスともいえる黄色を基準とした服に、茶色のブーツを履いていた。
彼女は黒板の前にまで歩くと、全体を見渡せるように振り返る。
「皆さん――否、新入生の皆さんおはようございます――今日から皆さんに教鞭を執る、
彼女は、このクラスを受け持つ教師だった。そしてさっきの発言が彼女の自己紹介であり、生徒達への最初の発言だった。
しかし、反応は無い――というよりも、気にもしていなかった。
これには彼女、真耶も困惑しているが彼女は出席簿を開くと、生徒達に、ある事を問う。
「で、では皆さんの名前を知りたいのと、黒板の前に立って、皆さんに軽く自己紹介して下さい――あいうえお順で、相川さんからお願いします」
真耶の言葉に殆どが頷くと、一人の女子生徒が立ち上がり、供託の前に立つとクラスの生徒達を見ながら自己紹介した。
「相川清香です、趣味は……」
その女性生徒は自己紹介する。
「ふぅ……」
が、一夏は彼女の自己紹介に耳を傾けていた。
刹那、一夏は誰かに見られている事に気付き、そっちの方を見ると、目を見開いた。
そこには、教室の一番前の窓側には、一人の女子生徒が座っていた。
その女子生徒には見覚えがった。幼き頃に、転校と言う形で離れ離れになり、尚かつ、あの人の妹でもある彼女だった。
忘れる事も無い、長い黒髪をリボンでポニーテールにして纏め、黒い瞳が特徴的な少女。
まるで大和撫子のように凛々しく、とても美しい。
一夏は彼女を見て居たが彼女もまた、一夏を見ている――それも、とても寂しい物だった。
一夏が悪い訳でもなく、彼女もまた一夏に悪い事した訳ではない――二人は六年前に別れ、今日と言う日を迎えるまで長い間、ずっと逢ってはいなかった。
手紙やメール等のやり取りもあっただろう。が、それは無理に等しく、逆にまた二人は特別な関係であり、身内が有名人であるのと、その事が原因とも言えた。
否、今は二人には会話は出来ない――今は自己紹介であり、そして、そんな一夏に真耶が近づく。
「織斑君、織斑君?」
「はい?」
「次は貴方の番ですよ?」
「自分のですか?」
一夏の言葉に真耶は頷くと、一夏は周りを見る。周りは自分を見ていた――まるで自分の番である事を教えている様な行動ともとれる。
一夏は周りの視線にたじろぎはしなかったが彼は立ち上がり、教卓へと向かうと、黒板に背を向けながら目の前に広がる光景を見る。
目の前には、このクラスにいる、マイクを除いた女子生徒達と真耶の女教師。彼等らは自分の言葉を待っている。
しかし、マイクを除いた女子生徒の瞳にはそれぞれの感情が籠っていた。好奇心、嫉妬心、それぞれのプラスとも捉え、マイナスとも捉えるような感情がある様にも思える。
だが、これは単なる自己紹介であり、軽く自分の長所と短所を言えば良いだけの話しである。
一夏は「軽く自己紹介すれば良い」――自分にそう言い聞かせるように頷き、徐に口を開いた。
「俺は織斑……ん?」
刹那、扉が開き、一夏は扉の方を見る――、一夏は瞠目した。そこには、扉の向こう側には一人の二十代前半の女性が立っていた。
腰まで掛かりそうな長い黒髪をゴムで後ろに纏め、凛々しい顔立ちに黒の瞳、黒のスーツを纏っている。
生徒ではない――恐らく、この学園の教師であろう。が、その女教師の表情は何処か困惑と、何処か哀しみに満ちていた。
彼女が見ているのは真耶でもなく、クラスの生徒でもない――彼女が見ているのは、教卓に居る一夏であった。
一夏も彼女を見て驚いていたがクラスの生徒やマイク、真耶も彼女を見ている。
――い、一夏、な、のか? ――刹那、彼女は口を開いた――それは問いにも思えたが彼女は彼が、一夏である事を願っていた。
理由は簡単だが彼女は恐る恐る、一夏に近づく。一歩、また一歩、と、一夏に近づく。
一方、一夏は彼女を見て何も言えなかったが不意に悲しそうに笑うと、口を開いた。
――そうだよ、俺は一夏だよ、千冬姉――と。刹那、一夏の言葉を聞いた彼女、千冬と言う女性は瞠目した。
千冬の問いに一夏は答えてくれた――それは、千冬に取って良い答えでもあった。その証拠に千冬の目からは涙が浮かべられていた。
そして……
「い、一夏アァーーッ!!!」
千冬は泣きながら一夏に抱き着いた。一夏は突然の事で驚くが女子生徒達や真耶は驚き、マイクは瞑目したが少し笑っていた。
一方、一夏は千冬と言う女性に泣きながら抱き着かれており、困惑している。一方で千冬は泣きながら一夏に抱き着いている。
どう見ても異様な光景とも思えるだろう――――否、二人は身内であるからだ。
それも三年前のあの日、あの事件が全てを狂わせ、二人を、二人の姉弟を引き裂く様な事件が起きた。それからは二人は三年と言う長い時間、逢えなかった。
否、それには理由があったが今は如何でも良いだろう。千冬は弟、一夏に縋り付く様に泣いているがそれは逢えない時間を全て埋める様な行動とも捉え、泣いているのも彼女自身の哀しみを吐き出す様な涙とも言えた。
一方で、一夏は千冬の行動に何とか慣れたのか、千冬の背中に両手を回すと、優しく抱き締めた。
一夏も姉に会いたかった。が、今は泣きじゃくる姉に対して、こう言った……。
――ただいま、千冬、姉――と。
次回、少女との再会