インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第29話

 あれから数分後、此所は〇〇市の倉庫――そこには東南アジア系の女性達と、スーツの女性に数人の武装した男達――そして、楯無が居た。

 しかし、楯無は両手を縄で縛られながら座っていた。数分前、楯無は後ろに居た別の男に銃を突きつけられ、何も反撃出来なかった。

 理由は東南アジア系の女性達を人質に取られるのと、ここは埃が溜まっており、何かの拍子で火事になる危険もあり、ISを使おうにも人質を取られる危険をも伴う為、従うしかなかった。

 楯無はスーツの女性を睨む。が、そんな楯無にスーツの女性は鼻で笑うと、楯無の前に立つと、楯無を見下ろす。その表情には余裕が見て取れる。

 

「ふふっ、全くお馬鹿な女ね? 自分一人でこの場所に踏み入れる何てね?」

 

 スーツの女性は楯無の髪を触ると、楯無は「っ!」と下唇を噛む。

 

「まあ良いわ――それよりも貴女、良い身体してるわね? どうやったらそんなナイスボディになるのかしら?」

「そんなのは別に良いわ……それよりも貴女に訊きたい事があるわ――貴女、そこの人達をどうするつもりなのよ!?」

 

 楯無は東南アジア系の女性達を見る、彼女等は楯無を見て何処か怒っている。無理もない――彼女達は日本と言う国に憎悪を抱いている。

 

 それだけでなく、彼女が助けに来たとしても入国管理局にバレると同時に、国に送り帰されるのがオチであった。彼女達は既に心に大きな傷を負っている。

 身体を触られ、挙げ句の果てには穢され、処女をも奪われてしまった。最悪の場合、孕む危険もあり、淋病、梅毒等の性病を患う危険もあった。

 が、スーツの女性から見れば何の意味もないだろう――そんな女性達を他所にスーツの女性は口を開き指摘した。

 

「別に何ともないわよ? ただ、金儲けの為に利用したまでよ?」

「ナッ!? フ、フザケナイデ!? 貴女ガ日本デイイ仕事ガアルトイッタカラ、私ハツイテイッタノヨ!? ソレナノニ何ヨ!? ドレモ触ラレルバカリジャナイ!?」

「ソウヨ!? ソレナノニミンナ、マッサージト言ッテモ、オッサンバカリジャナイ!?」

 

 女性達は怒る――否、女性達にも非はあった。何故なら彼女等は不法入国したにも関わらず、スーツの女性に従いていった。どうみても危険な仕事であると判っていたのだろうか?

 それに甘い言葉で惑わされ、お金と言う言葉で我を忘れたからなのか? それは女性達にしか判らないが親を思うがあまり、お金が欲しいのと、罪を犯す形で日本に来た事には共通するだろう。

 それ以上にスーツの女性にも非はあるが彼女は彼女達よりもタチが悪く、最低な女かも知れない。彼女は、彼女達の親を思う心を利用し、

金儲けの為に利用した事に変わりはない。

 

「煩いわね貴女達、それに入国管理局にバレないよう、ちゃんと匿ってあげてるでしょ?」

「ソウジャナイヨ!? ソレニオカネモラッテナイ!!」

 

 一人の女性の言葉に楯無は「なっ!?」と驚きを隠せないでいた。何故ならスーツの女性は彼女達にお金を上げていなかった。スーツの女性は彼女達を搾る形で利用し、自分は何もせずにお金を手に入れていた。

 では彼女が経営者なのだろうか? 楯無はそう思うのと同時に、訊ねる。

 

「まさか貴女、経営者のくせに彼女達をただ働きさせていたの!?」

「あら? 経営者って何の事かしら? それに私はマッサージ店の経営者じゃないわよ?」

「えっ? 如何いう事なの?」

 

 楯無は女性が経営者ではない事に驚きを隠せない。理由としては、経営者は誰なのかと、その者は男性か女性かは判らない――その為、情報には偽りはないがその実態までは調べる事は出来なかった……。

 楯無が驚いているのを他所にスーツの女性は楯無を見下ろしながら不敵に笑う。

 

「私はね経営者ではないわ――私はね……」

 

 刹那、スーツの女性は懐からある物を取り出し、振り返る――一発の音が響いた。

 ――キャァァァァァ――――――っ!? ――。刹那、女性達の悲鳴が響き渡る――そして、女性の手には拳銃があった――そう、音の正体は銃声であり、銃声――否、音と共に銃弾が放たれ、銃弾は東南アジア系の女性の一人に当たり、女性はそのまま倒れる。

 撃たれた女性の身体からは血が出ており、ピクピクと痙攣していた。既に虫の息と言うよりも、ひん死の重傷を負っていた。

 

「イヤァァァァァ!!」

「ヒィィィィィィ!!」

「モウイヤァ――――ッ!」

 

 女性達は泣き叫ぶ――恐怖――女性達は日本に憎悪を抱くのと同時に恐怖を植え付けられてしまった。否、既に前から植え付けられてしまったのかも知れない。

 その証拠に耳を塞ぐ者、泣き叫ぶ者や互いに抱き合う者達もいた。彼女等は恐怖のあまり行動を起こしていた。

 ――黙れクソアマ共! ――。そんな女性達に男達は銃で威嚇する。銃声は何度も響き渡り、連続で響き渡る銃もあった。

 しかし、一部の女性達には効果はなく、中には逃げ出そうとした者も居た。が、その女性は射殺されてしまう。

 それが功を奏したのか女性達は泣き止んだが身体を震わせていた。

 

「っ――あ、貴女達外道だわ!! 人間のクズよ!」

 

 楯無はスーツの女性と男達に言うが効果はなかった。否、楯無は無理でも止めたかったが今の自分の立場ではなにも出来なかった。

 同時に楯無を見たスーツの女性は不敵に笑う。

 

「フフッ……良いわね? 何も出来ない貴女を見るとゾクゾクしちゃうし、無力さを思い知れば良いわ!」

「貴女――やっぱり外道よ!? それに経営者は誰なのよ!?」

 

 楯無は女性に訊く。彼女が経営者でない事は判ったが経営者が誰なのかを訊こうとしていた。無理だったカマクビガメ楯無は囚われの身であり、スーツの女性には効果はなかった。

 

「あらあら? それは無理な相談ね? それに経営者は……いえ、それは無駄よ」

 

 スーツの女性は手に持ってた拳銃を楯無に向ける。硝煙が微かに漂っていたが臭いもする。が、それは楯無を殺す事を意味していた。

 見たからには生かしておけない――そう教えていた。

 ――ぐっ……! ――。楯無は拳銃を見て下唇を噛むが反撃のチャンスはなかった。

 女性達は震えているのと同時に逃げようとはしない上、射殺される。本当なら犠牲無しでの制圧をしたかったが既に二人の死傷者を出している。

 自分ももうすぐ死ぬかも知れない――楯無はそう思っていた。そんな楯無をスーツの女性は不敵に笑いながら銃の引き金に手を掛けた。

 刹那、近くの壁が破壊された。

 ――なにっ!? ――。スーツの女性や男達は驚きながら壁を見る。壁からは煙が出でいたが何かが目にも止まらぬ早さで楯無とスーツの女性目掛けて突き進む。

 スーツの女性は突然の事で何も出来ず、尻餅を打つ――直後、楯無はその何かに連れ去られる形で掴まれ、その何かに掴まれたまま――否、そのまま守られる形で抱き包まれ、天井の方へと上がる。

 刹那、天井は破壊され、天井の物らしき破片がスーツの女性目掛けて落ちて行く。同時に、その何かは空中で止まった――楯無を優しく包む形で横抱きしながら……。

 

「…………あっ」

 

 楯無は自分が空中にいる事に気付いたが更にある事に気付き、瞠目した。自分は横抱きされている――それもその何かに。

 その何かは白銀色の鎧を纏い、背中には鳥の様な大きな翼を羽ばたかせている。それだけでなく今の時間帯は夜だが白銀色の鎧を輝かせる意味でもその役目を果たしている。

 が、それ以上に驚いたのがそれは、白銀色の鎧はISであった。

 そのISを纏っているのは女性ではない――十代後半の、自分と年が近い青年だった。楯無はまだ驚いていた。

 その者を楯無は知っていた。一方、その者は楯無を、否、刀奈を見て微笑んでいた。

 彼女が無事であるのと同時に、ある者からの助けを請われた為に、この場所へと来たのだ。

 

「い、一夏君?」

 

 楯無は、否、彼女はその者を一夏と呼んだ。そう――彼女を助けたのは一夏であった。彼女は彼が、一夏が此所にいる事に驚きを隠せなかった。

 楯無は、刀奈は驚く一方で彼は、一夏は刀奈に、こう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――ご無事ですか刀奈さん? そして俺達は貴女を助けに来ましたよ……――と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 次回、青年達の怒り、そして東南アジア系の女性達の救い様のない最悪な結末。

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