インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

27 / 29
第27話

 あれから数時間後、此所は学生食堂――今の時間帯は昼休みなのか生徒達で溢れていた。最も女子生徒達ばかりだが、とあるテーブルには二人の男子生徒、三人の女子生徒がいた。

 二人の男性は一夏とマイク、三人の女子生徒は箒、セシリア――そして今日転校して来た中国の少女。

 彼等の間には沈黙が流れる――それは怒り、憎しみ、哀しみ、喜び、楽しみと言った雰囲気ではない――とても重く、誰かがそれを和ませる意味で話題を変えるしか方法はなかった。

 刹那、それを名乗りを上げる様に一人の青年が口を開く――一夏であった。

 

「久しぶりだな……鈴」

 

 一夏は中国から来た少女に訊ねた。そして中国から来た少女の名は(ふぁん) 鈴音(りんいん)。中国から来た少女であり、一夏の幼馴染み。

 彼女とは今朝逢ったばかりだが生憎、チャイムが鳴り、そこで中断となり、今の時間帯になるまで逢えなくなってしまった。普通なら授業を挟んだ時間もあったが少し長めの昼休み時間で逢う事にしたのである。

 そう言ったのは一夏であり、それを鈴は承知した。マイクは一夏が紹介したいのと、セシリアは単に自己紹介したいだけであり、箒は一kが紹介したいと言う理由で同席してもらった。

 因みに一夏はカレーライス、マイクはオムライス、セシリアはサンドイッチ、箒は鯖味噌定食、鈴はラーメンである。

 

「また言うけど、久しぶりね……一夏」

 

 鈴は翡翠色の瞳を潤わせながら微笑みながら言うと、一夏は哀しそうに微笑む。一夏と鈴――二人は三年前に、とある事件で別れてしまった。否、その時から既に引き裂かれたとも言えば良いだろう。

 一夏の行方不明――それは鈴にとって哀しみに暮れさせ、本来の彼女の元気をも奪ってしまう。突然とは言え、定められた出来事とも言うべきなのだろうか?

 今日――二人は逢えたがそれは定めを終える事を意味しているのだろうか? それは誰にも判らないがそれは誰も知る術はない。

 が今は、三年と言う長くも短くもない時を埋める形で彼等は再び出逢えた。最初は涙を流す物であったが今は落ち着いているのか、二人の間にはそう言った出来事は済まされる形で終わった。

 今は軽い自己紹介と言う、懐かしくも新たなる一歩を踏む事をしょうとしていた。

 

「久しぶりだな鈴――そうだ、彼を紹介するよ――彼はマイク――マイク・クライバー、ドイツ人で俺の相棒だ」

 

 一夏は近くにいるマイクを紹介すると、マイクは無言で軽くお辞儀する。

 

「そう……貴方、一夏の相棒なの?」

 

 鈴は怪訝そうかつ訊ねると、マイクは答えた。

 

「ああ……彼、一夏とは三年前に出逢い、そして今日まで寝食を共にして来た」

 

 マイクの言葉に鈴は「えっ!?」と驚きを隠せない。そうだろう、鈴はマイクが、彼が一夏の相棒である事を知らなかった。もし知っていたとしても鈴はマイクが何者で、只の二人目の男性操縦者だとしか認識していなかった。

 なのに一夏の言葉で只の操縦者ではない――彼は一夏の何かを知っている――彼に何が遭ったのかを知っている。鈴はそう直感していたがマイクは鈴から目を逸らすと、サンドイッチを一つ手に取り、それを食す。

 

「鈴、どうしたんだ?」

 

 そんなマイクを見続けていた鈴に一夏が訊ねると、鈴は我に返り首を左右に振る。

 

「な、何でもないわ! ちょっと――クライバーで良いかしら?」

「…………別に構わん」

「そう……それよりも一夏、貴方逞しくなったんじゃない?」

 

 鈴は一夏に訊ねると、一夏は「えっ?」と惚けるが鈴は頬を少し紅くさせていた。鈴は一夏を見て感想を述べていた。何故なら一夏は行方不明になる前は少し弱気かつ暗かった。

 なのに今は違う――彼は三年前よりも逞しくも成長した様にも思える。女性としての直感だが鈴にはそう思われても仕方ない――何故なら彼女は、一夏に想いを寄せているのだった。

 鈴の言葉に一夏は未だ判らないでいる中、そんな彼を寂しそうに見ている者がいた――箒である。

 ――一夏……――。箒は彼を見てそう呟いた。何故なら彼女も一夏に思いを寄せていた。なのに彼には刀奈がいる――否、箒は彼女が一夏の恋人ではないかと勘違いしている。

 酷な話とは言え、箒は失恋したと勘違いしている――それだけでなく彼は、一夏は昨晩、薫子の指摘とも言える質問に答えたのだ。

 自分は刀奈が好き、と。それは失恋を確定させ、叶わぬ恋である事をも教える様なものだった。しかし、箒は鈴を見て何も言えなくなる。

 まさか彼女も……箒は女性としての直感をし、鈴もまた一夏に恋する者の一人としても気付いた。そうなれば鈴も何れ……刹那、鈴は箒とセシリアを見る。

 

「そう言えば貴女達は? 自己紹介がまだだったわよね?」

「あっ、はい、私はセシリア・オルコット、イギリスから来ましたわ」

「あっ……うむ、私は篠ノ之箒――一夏の幼馴染みだ」

 

 セシリアは元より、箒の自己紹介で鈴は驚きを隠せない――自分の他にも幼馴染みがいた事に――勿論、自分だけしか幼馴染みがいた訳ではない事も鈴は気付いていた。

 

「そうなんだ、それよりも一夏、弾や数馬に逢ったの?」

「えっ……ごめん、逢ってないんだ」

 

 鈴の言葉に一夏の表情に影が差す。それは逢ってない事を意味していた。そんな一夏に鈴は「ごめん」と気まずそうに謝る。

 

「別に良いよ――何れ逢う機会を作るから」

「そう……それよりも一夏、副会長に就任したんだって?」

 

 鈴の言葉に一夏は瞠目し、そんな一夏に鈴は意地悪そうに笑う。

 

「馬鹿にしないでよね? そのくらいの情報は耳に入っているわよ? ――でも、凄いわね〜〜一年の身でありながら生徒会ナンバー2は珍しいわよ?」

「そうかな? ……それに副会長は……」

「知ってるわよ? 生徒会長の推しですって?」

「えっ? 知ってるの?」

 

 一夏の言葉に鈴は呆れて溜め息を吐くとそれを指摘する様に言葉を述べる。鈴は昨晩、学園に来たばかりであるが情報は自分が受け持つクラスで知ったのである。

 それだけでなく、鈴は今朝、一夏のいるクラスに来たのは男性操縦者達が何者かで、その内の一人がクラス代表に就いた事も知り、宣戦布告と言う形で来たのだった。

 しかし、その内の一人が一夏である事は想定外であった。が、今は副会長である事を指摘すると共に凄いと鈴は思っていた。

 そして、副会長が生徒会長である更識楯無の推薦である事も知ったのである。

 

「それにしても、生徒会長が一夏とは知り合いだった何てね〜〜それにいつ知り合ったの?」

 

 鈴はそう言った後、ラーメンを啜る。

 

「う〜〜ん……ごめん、それは言えない」

「……そう、でも一夏に訊きたい事があるわ?」

 

 鈴の言葉に一夏は「えっ?」と惚ける。が、鈴は表情を曇らせる。鈴はある事を一夏に訊ねようとしていた。それは鈴にとって知りたくも、事実か如何かも気にしていた。

 それはクラスメイトから聞いた話だが周りはそれが恋愛面である事に恥ずかしいのと喜びを隠せないでいた。

 それが本当ならば一夏は楯無――否、刀奈に対してどんな感情を抱いているのかと――。もしそうだとしても自分はそれを受け入れるのと、何れ乗り越えなければならないだろう。

 鈴は表情を険しくすると、一夏にある事を訊ねる。

 

「一夏はさ、生徒会長が好きなの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不法入国したアジア系の女性達がいる違法マッサージ店の経営者がいる基地の潜入ですか?」

 

 その頃、此所は生徒会室――ここには刀奈――否、楯無がいた。楯無は手に持ってるスマートフォンを耳に当てながら誰かと会話をしている。

 しかし、楯無の表情は険しかった――それもその筈、今は刀奈ではなく暗部の当主、更識楯無の顔をしていた。楯無はスマートフォンの向こう側にいる者からの内容に不快な気分に襲われる。

 不法入国者達――それは許可なく勝手に入国しては出稼ぎに来たりしている者達である。理由はいくつかあるがそれは違法であると共に、バレれば入国管理局の手によって送り帰されるのがオチだ。

 なのに不法入国者を匿う様な輩には怒りが沸いて来る――楯無は何とか怒りを抑えつつ耳を傾け続ける。

 

「それでは今夜〇〇市の倉庫に? ええ、ええ判りました――人の手は借りません――数人で行くと見つかる危険もあります上、人質を取られると動きにくくなります――私一人で充分です――それに……否、それ以上は言いません」

 

 楯無は会話しながら瞑目する。そんな楯無のいる生徒会を出入り出来る扉近くには、とある眼鏡をかけた女子生徒がいた。その女子生徒は一夏や刀奈とは違い、リボンの色が違う――上級生、それも三年生であった。

 しかし、彼女は楯無の会話を扉の隙間からこっそり聞いていた。が、その表情は心配そうに曇っていた。

 そして彼女は刀奈を――楯無を見て不意に呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――お嬢様、一人では危険です……――と。

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、少女の潜入、少女の青年への援軍願い

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。