インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第26話

 クラス代表、副会長就任歓迎会の翌日、此所は一夏達の教室。その教室には疎らだが生徒達はいた。しかし、生徒達は、女子生徒達は今、其々の表情を浮かべていた。

 赤面、困惑、と言った表情をしている。そうしているのには理由があった――それは、ある人物の発した言葉と同時に噂していた。

 それは宣言、告白、そう言った言葉が孕んでいる様にも思えるし、何より彼女達から見れば気にもなるだろう。

 そして、その事を発した人物は今、マイクと話をしながら周りを気にしていた。

 

「なあ、皆どうしたんだ? 何か何処か嬉しそうに見えるんだけど?」

 

 その人物は一夏であった――彼は昨晩、歓迎会の際に薫子の質問でとんでもないことを言ったのだ。それは女子生徒達から見れば気になるのも頷けるし、何より恋愛面とも捉える事が出来るのだ。

 にも拘らず、彼は、一夏はその事には鈍感と言うよりも本音を言っただけであり、気にもしていない。一夏は周りを不思議がる中、マイクは一夏の質問に呆れた視線を送る。

 

「馬鹿かお前? 昨日あんな事を言ったら周りは驚くだろうが?」

「昨日? ――もしかして黛先輩での質問で?」

 

 一夏は首を傾げるがマイクは頭を抱える――彼は、相棒はどんだけ鈍感なのか? マイクはそう思った。あんなことを言えば誰も驚きと赤面する筈だ。

 なのに彼は何も解っていない――それはマイクから見れば呆れるしかなかった。そんな彼にマイクはある事を訊ねようとした。

 が、とある生徒が二人に近づき、訊ねる。

 

「一夏さん、マイクさん、おはようございます」

「えっ、オルコットさん?」

 

 その生徒はセシリアだったが一夏はセシリアの言葉に驚き、マイクは無言んでセシリアを見る。彼女は少し微笑みながら二人を見るが一夏はある事を疑問に抱き、彼女に訊く。

 

「オルコットさん、どうしたの? それに今」

「ダメ、でしたか? 貴方方を名前で呼んでは?」

 

 セシリアは少し不安そうに訊ねる――彼女は、二人を名前で呼んだのは彼等を信頼に値する男性としても見る事にした。セシリアは女尊男卑主義者の者だが今は違う。

 今は純粋に親しくなりたいだけであった。出来る事なら名前で呼びたい――セシリアはそう思い、二人の事を言ったのだ。

 

「ダメでしたか? 出来る事なら無理に言わない事にし」

 

 ――別に良いよ? ――。刹那、一夏はセシリアにそう言う。それを聞いたセシリアは瞠目しながら一夏を見ると、彼は微笑んでいた。

 

「別に良いよオルコットさん、俺は貴女に名前で呼んで欲しくない理由はないし、それに俺達はクラスの同級生でしょ?」

「え、その……」

 

 セシリアは困惑するが彼は言葉を続ける。

 

「それに如何なる理由があってもそう言うダメな理由はない――もしも言いたいのなら言っても良いし、もしまだ慣れないのなら無理に言わんくても良いよ? 時間を掛けてでも、ゆっくりでも良いからさ?」

 

 一夏の言葉にセシリアは目を潤ませながら「一夏さん……」と呟く。すると今度はマイクが彼女に言う。

 

「俺も構わない――だが俺は正直、信頼しない者には名前で呼ばれたくはない」

「あっ……やっぱりダメでしたの?」

「否、そう言ってる訳じゃない――俺は只――まあ良い、お前の自由だ、好きにしろ」

 

 

 マイクの言葉にセシリアは瞠目するが直ぐに嬉しそうに「はい!」と言いながら頷く。良かった――名前で呼ぶ事を認めてくれた、とセシリアは喜びを隠せない。

 そんなセシリアに一夏は微笑むが不意に疑問に抱いた事があり、それをセシリアに指摘した。

 

「ところでオルコットさん?」

「セシリアで良いですわ」

「えっ……あっああ、ところでセシリアは俺達に何の用なの? ただ名前で呼んで欲しいから来ただけなの?」

「いいえ、実は隣のニ組から一人の転校生が来ましたのよ?」

 

 セシリアの言葉に一夏は「転校生?」と言うと、セシリアは頷くと言葉を続ける。

 

「はい、それも中国から来たらしいですわ」

 

 刹那、セシリアの言葉にマイクは瞠目するが直ぐに眉間に皺を寄せる。

 

「ど、どうしましたのマイクさん?」

 

 そんなマイクにセシリアは少し怯える。が、別にセシリアが悪い訳ではなかった。

 マイクはセシリアの言葉に何故か眉間に皺を寄せながら目を逸らす。彼は単にセシリアに怒っている訳ではない――彼はセシリアの、ある言葉を聞いて不愉快な気分に襲われる。

 その言葉とは『中国』と言う言葉であり、国でもあった。中国――それはアジアの中では一番に国の面積は大きく、高度経済成長と言う意味で経済が発展している。

 しかし、その国は、中国人は嫌な人物が多い――例としては島関係や、観光でのトラブル――それも外国人の中では多い様にも思われている。

 マイクは中国が嫌いと言う訳ではないが中国と言う国が好きになれないからであった。コピー商品は当たり前の様に造られ、中には問題とも思われるキャラの使用や許可したかも判らない海外の名所をも造っているのだ。

 観光では問題を起こすばかり――それだけでも胸糞悪く、何れ出入り禁止も視野に入られるだろう。

 そして国自体が汚いイメージもある――中国は四千年の歴史があるにも関わらず、何処か好きになれない――マイクはそう感じていると同時に中国を嫌いな国としても認識しつつあった。

 恐らく世界中から嫌われ――否、そう感じられているのも無理はないだろうし、中国人は全員が悪い人ではない事も、マイクは直感していた。

 誰が悪いかは誰にも判らない――だがこれだけは言える――誰が悪い訳でもないからであった。

 マイクは未だ眉間に皺を寄せる中、セシリアは不思議そうかつ少し怯えていた。自分は何か変な事を言ったのだろうか? そう思っていた。

 そんなセシリアを心配し、それをフォローする形で一夏がマイクに言う。

 

「マイク、セシリアは変な事を言った訳じゃないから」

「……ああ、悪かった――セシリア、済まん」

 

 マイクは我に返るとセシリアとは目を合わせずに謝ると、セシリアは慌てて言う。

 

「と、とんでもありませんわ!? 此方こそごめんなさい、マイクさんが何を嫌っているかは知りませんでしたからつい!」

「――済まないな、だがそれがなんだ? 俺から見れば転校生は珍しくもない――関係ない話だ」

 

 マイクはそう言うと溜め息を吐く。

 

「ま、まあマイクさんから見れば転校生は別でしょうけど、それよりも別件と言うよりも本題がありますのよ?」

 

 ――本題? ――。セシリアの言葉に一夏は首を傾げる。するとセシリアは軽く頷くとそれを話し始める。

 

「ええ、今度のクラス代表対抗戦、優勝者やその者が所属しているクラスには学食でのスイーツ全品半年間の無料食べ放題と言う美味しいイベントがありますのよ」

「えっ? それって……マイクが勝つ事を前提でか、応援での話なの?」

 

 一夏はセシリアの言葉に不思議かつ困惑した。何故なら彼女はマイクがクラス代表対抗戦で勝つ事を期待し、そして士気を上げる形で応援の言葉を贈る意味でも、転校生とは別の話をするつもりでもあった。

 スイーツの食べ放題――それは女子生徒達にとって、甘い物好きの女子生徒達にとっては嬉しくも、夢の様な話でもある。

 それが夢の様な話が現実かつ、実現する様な形で食べる事が出来るのだ。その証拠に周りに居た女子生徒達は少し喜びながら彼等に近づき、マイクに言う。

 

「そうだったわ!? クライバー君、絶対に勝ってよね!?」

「そうよスイーツが賭かっているから!」

「それに専用気持ちは一組と四組しか居ないから楽勝よ!!」

 

 周りの女子生徒達は喜びの声を上げる。何故なら彼女達はスイーツが欲しいのである。それも半年間無料は夢のような物であるが彼女達から見ればどうしても欲しいのだろう。

 そんな女子生徒達に一夏とセシリアは苦笑いし、マイクは呆れて頭を抱える。

 

 ――そんな情ほ……っ!? ――。刹那、扉の方から声が聞こえ、周りは一斉に扉の方を見やる――刹那、一夏は目を見開いた。

 その扉近くには、声を出した者に驚いていた。その者は女子生徒だが少し小柄で、幼女の様な顔立ちに翡翠色の瞳に八重歯が特徴的かつ、茶色い長い髪をツインテールにする形で纏めている。

 制服は少し軽装的にデザインされているが動き易い様にもデザインされていた。

 が、その女子生徒は何故か驚いていた――彼女の視線の先には彼が、一夏がいる――否、他の者達が目に入らなかったのと、単に彼に惚れた訳ではない。

 その女子生徒は一夏とは知り合いかつ、一夏とは箒とは別のもう一人の幼なじみであった。

 そしてその女子生徒は瞳を潤ませながら目に涙を溜めると、一夏目掛けて走りながら叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――い、一夏――――――っ!! ――と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、中国の幼なじみとの一時の昼休み。

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