インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第24話

「と言う訳で、クラス代表はクライバー君になりました――皆さん、拍手を送り下さい!」

 

 翌日、此所は一夏とマイクがいる教室では、真耶が教卓の前に立ちながらマイクがクラス代表になった事を宣言する形で言うと、クラスから拍手と喝采が起こる。

 それはマイクがクラス代表になる事を望んでいた事や、彼ならクラス代表になっても可笑しくないからであった。彼の実力は昨日知り、専用気持ちであるセシリアを何とか倒し、負けたとはいえ一夏とは互角の戦いを見せたのだ。

 彼ならばクラス代表でも良かった、が、中には不服な者も多少いた。その者達は一夏がクラス代表かつ、セシリアがクラス代表担って欲しい者達だった。

 前者は兎も角、後者は単に男性操縦者がクラス代表である事を快く思っていない――証拠に彼女等の表情は何処か悔しそうかつ不貞腐れている。

 が、セシリア――彼女だけは辛そうに俯いていた。何故なら彼女はマイクに負け、一夏に不戦敗した為、全戦全敗と言う屈辱的かつプライドを砕かれたのだ。

 これには彼女も哀しく、今まで必死に努力をしたにも構わず男性操縦者に負けたのも辛く、何も言えない。それだけでなく、自分を応援してくれた者達からは何て言われるか判った物ではない。

 セシリアが俯く中、それ以上に怒っているのが一人いた――マイクである。彼はクラス代表に成れた事や喜び等は無かった――彼は何故か不貞腐れているのと同時に怒りを感じていた。

 自分は始めからクラス代表には成りたくなかった――それどころかそれを一夏に押し付けようとしたがそれは出来なかった。彼が辞退した訳ではない――その理由は、真耶が皆に伝える形で話す。

 が、生徒達は一向に収まる気配はなく、千冬が一喝すると静かになるが真耶は気を取り直して、ある事を伝える。

 

「それともう一つ、お知らせがあります――実は本来はクラス代表は織斑君に成る筈だったんですが、彼は更識生徒会長の命により、生徒会副会長をやる事になりました」

 

 真耶の言葉に周りは、大半は驚きの目で一夏を見やる。一夏は少し苦笑いしていたが彼が副会長をやる事になったのは刀奈の提案でもあった。

 実は本来、一夏は千冬からクラス代表はお前だと言われたがそれを一夏は不服としていた。何故なら自分よりもマイクをクラス代表にしてくれと言ったのだ。

 彼ならばクラス代表としてのカリスマもあり、実力をも兼ね備えている――彼ならどんな困難にも対応し、いざと言う時にはクラスを守る盾にもなれるからだ。

 それだけでなく、彼は自分やあの人達以外に心を開いていない――それでは彼は独りであり、寂しい思いをさせるのは嫌であるのと、彼には人と触れ合う大切さを知って貰いたかったのだ。

 一夏の言葉に千冬は一夏がマイクを、彼を相棒としての力量や大切に思っている事を知り戸惑うも、クラス代表は一夏しか出来なかった。

 マイクはやらないと言うし、セシリアに至っては重荷になるだろうと、千冬は思っていたのだ。

 

 

 が、それは一夏のマイクへの、相棒への人との触れ合う大切さを知って欲しい、一夏の切なる願いでもあった。

 

 

 そんな一夏の気持ちを察した者がいた――刀奈である。彼女は一夏がマイクを大切にしている事を知ると、そしてマイクをクラス代表にさせる代わりに彼には、ある事を命令を下した。

 

『だったら、生徒会長の副会長をやらない?』

 

 刀奈の言葉に一夏は驚く物の、彼女は訳を述べる。副会長ならばクラス代表に就かないで済むし、彼が、マイクがクラス代表になっても可笑しくないからであった。

 因みに本心は『一夏と居たい』という切ない気持ちや思いがあったが生憎、一夏には刀奈の気持ちを知らず、生徒会副会長になれと言われても戸惑うしか無かった。

 が、マイクを思うあまり、彼は副会長になる事を承知し、刀奈が嬉しさのあまり抱き着いたのは言うまでもなく、マイクからは驚きと呆れられるが何とか承知したのは言うまでもなかった。

 マイクがクラス代表でクラスの者達が喜びや嫌悪を表す者達で別れる中、一夏が生徒会副会長に就いた事でクラスの者達は共通で驚く中、

マイクは呆れて頭を抱え、一夏は苦笑いする中、千冬はクラスの者達を一喝して黙らせる。

 その後、真耶が二人にある事を願った。

 

「それではクライバー君はクラス代表になった事、織斑君は副会長に就いた事で何か一言お願いします」

 

 真耶の言葉に一夏は少し不意を突かれたがマイクは瞑目していた。

 ――その前にやる事がある――。刹那、マイクが不意に呟く。真耶は「えっ?」と不意を突かれたが彼は目を開け、立ち上がると、周りを見渡す――彼の表情は何処か険しい。

 まるでクラスメート達に何かを言うつもりでもあった。

 

「俺はクラス代表になった事を述べる前にお前等に訊く――お前等は俺がクラス代表になった事で何を得る?」

 

 マイクの言葉にクラスの者達は何故か少し驚く――マイクはそれでも言葉を続ける。

 

「そうだろうな……俺がクラス代表になっても何も変わらない――それだけでなく、お前等は一夏やオルコットはどう思う?」

 

 ――えっ? ――。マイクの言葉にセシリアは顔を上げ瞠目した。が、マイクは言葉を続ける。

 

「貴様等は二人をどう思っている? それにクラス代表は実力を持った者だけがなれる物で周りを纏める事が出来る者がなれる物だ――なのに何だ? 何故お前等は一夏やオルコットの慰めの言葉をやらない?」

 

 マイクがそう言うと周りは再び驚く――何故なら彼女等は二人には慰めの言葉をかけてない――否、最初から彼女達はある事を期待しており、そちらを優先と言うなの利益を考えていた。

 マイクから見れば何かは判らないがマイクはそう思っていた――だからこそ女子生徒達に呆れていた。

 

「俺はお前等がどう思っているかは関係ない――だが今は、オルコット」

 

 マイクの言葉にセシリアは驚くがマイクは眉間に皺を寄せる。

 

「皆に言いたい事があるんだろ? それを今言うんだ」

「えっ……私がですか?」

 

 セシリアはマイクの言葉を聞いて何故か驚きを隠せない――何故ならせシリアは周りに言いたい事があった。昨晩、セシリアは全戦全敗の後、一人泣いていた。

 理由は男に負けた事、それに自分は微かに抵抗したにも関わらず負けたのだ。これには自分は愚かであった事、男を侮辱した自分が恥ずかしくてたまらなかった。

 それだけでなく、母国イギリスからは何て言われるのだろうか? 自分を迫害し、恥さらしと言うのだろうか? セシリアはそう思うと恐怖で身体を震わせた。

 怖い――このままでは自分は一生、そう言う立場になると自分やあのメイドは悲惨な目に遭う、と。

 セシリアはマイクの言葉に驚き続ける中、マイクは溜め息を吐くと、ある事を言う。

 

「なあお前等、オルコットを許してやってくれないか?」

 

 ――なっ!? ――。周りは驚きを隠せない。それ以上に驚いているのがセシリアだったがマイクは両手を制服のポケットを入れると、不意に顔を逸らす。

 

「勘違いするな――お前の為ではない――俺は只……」

 

 マイクはセシリアを見据える。

 

「俺は只、クラスで迫害される貴様が嫌なだけだ」

 

 マイクの言葉にセシリアは目を見開く。否、マイクは単に彼女を心配しているのだった――言葉とは裏腹とも言えるが彼なりの気遣いでもあった。

 彼は彼女を怨んではいない――あの時の彼は怨みそうになったがそれを阻止したのは紛れもなく、あの人の存在――あの人は、彼女はマイクを一番に心配し、ナチスと言う呪いを気にせず、ドイツ人として生まれた事を誇りに持つよう厳しくも優しくいい聞かせてくれた。

 だからこそ、彼は人を思いやる優しさを身につけ、大切さを知った。それが今、彼はセシリアを思いやる心を持ち、彼女に勇気を与えようとしていた。

 ――まだ戻せる、みんなに謝る事は――と。

 

 彼は、マイクはセシリアを心配し、彼女に時間と本来の自分に戻って欲しい事を、切に願っていた。

 

 ――く、クライバーさん……――。そんなマイクにセシリアは彼に魅入る――彼は、マイク・クライバーは凄い男だ――あの時の自分は彼に攻撃したにも関わらず、彼は自分を気遣っている。

 それだけでなく、彼は自分に手を差し伸べてくれる――もし、もしも彼が居なかったら自分はどうなっていたのだろうか? 恐らく――否、それ以上は言わなかった。

 そしてセシリアは困惑しながらも彼の気持ちに答える様に立ち上がると、教卓の所まで歩く、教卓には真耶が居たが真耶はセシリアの気持ちを察し、微笑むと静かに身を引く。

 そしてセシリアは教室を見渡す。教室には全ての、このクラスの生徒が居る――一夏とマイク、千冬と真耶、箒を含めた生徒達はセシリアを見て何かを思うが、セシリアは険しい表情を浮かべると、頭を下げながら言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――皆さん、あの時はすみませんでした!! ――と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、クラス代表歓迎会――薫子、一夏の紹介と指摘

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