インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第22話

「こうなったら……」

 

 一夏は目の前にいるマイクを見てある考えを浮かべる。マイクは機体を纏いながらも彼の機体はボロボロで火花が飛び散り、煙が出ている――それはあと一回か数回攻撃すれば自分の勝利は確実となる。が、逆に自分も後一回か数回攻撃されれば敗北は確実だろう。

 なのに身体が動かない――それもその筈、彼等は既に動く力さえもない。動けば体力を減らし、負けは確定する。

 二人はその事に気付きながらも一夏は、あの技を――否、あの技で全てを賭けようとした。一夏は頷くと微かに呟いた。

 ――変形その伍――。刹那、一夏の右腕にあった鷹が離れ、鷹は姿を変える、両翼を少しだけ伸ばす様に羽ばたかせ、嘴の口内にある砲口を中に戻し、頭部は前に折り曲げる。

 ――引っ込めた両足を伸ばし、そしてくっ付くと、再び一夏の前に止まる。そして、一夏は鷹の両足首を片手で掴むと、彼はそれを片手で持ちながらマイクに向けた。

 

『おおっと!? 織斑選手の鷹が銃の様な物から、何かに変わったぁぁぁ!?』

 

 薫子の実況が流れ、アリーナ席にいる者達は皆驚きを隠せない。そうだろう――一夏の鷹は、マイクの鷲同様変形するがその数までは判らなかった。

 一夏とマイクが微かに呟いているだけであるのと、彼女等が単に聞こえなかった事が原因かも知れない――しかし、鷹と鷲が変形出来る数は謎であるが判ったのは――見る事が出来たの未だ四つだった。

 ウィングスラスター、盾、腕に装着するような銃の物――そして彼が、一夏が鷹に変形する様に言った物と、鷹が変形したのは――団扇だった。

 それは一夏の鷹の第伍の変形であった。それに一夏の鷹の第参、第四の変形は見られなかったが何れ見れるだろう。因みに第壱はウィングスラスターであり、第弐はさっきの銃の様な物だが一夏は団扇を高らかに上げ、軽く回す。

 刹那、一夏の周りに風が発生する。それは最初は小さかったが徐々に大きくなって行き、彼の真上に竜巻が発生する。

 

『おおっと織斑選手!? 鷹の武器みたいな物で竜巻を起こしているぞ!? 何をするつもりなのか!?』

 

 薫子が言うと、アリーナ席にいる者達は何も言えなくなる――逆に彼女達は一夏が何をするのかを気になっていた。一夏はあの竜巻で何をするつもりなのだろうか?

 彼女達は何も解らず考えていたがマイクは険しい表情で一夏を見ていたが一瞬だけ、下の方を見た。

 だが、一夏はマイクを見て何かに気付き険しい表情を浮かべている。

 彼が何もしてこない事――それは一夏を不審がらせるには充分だったが今はマイクにとどめを刺すべく、一夏は団扇を振り下ろしながら叫んだ。

 

「風神烈風波――っ!!」

 

 一夏はそう言いながら団扇を扇ぐと、竜巻はマイク目掛けて突き進む。刹那、竜巻はマイクを包み、彼にダメージを与えると同時に彼のISのシールドエネルギーは零になり、一夏の勝利が確定した……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っぐつ!?」

「一夏君!?」

「一夏!?」

 

 少し経った後、此所はピット――そこにはISを解除した一夏と、最初からいた刀奈、途中から来た千冬の三人がいた。しかし、一夏がISを解除した途端、彼は倒れそうになり、それを刀奈と千冬が慌てて彼を両側から支える。

 

「大丈夫一夏君!?」

「一夏!?」

 

 二人が心配そうに声を掛けると、一夏は少し苦笑いしながら答える。

 

「大丈夫だよ二人共、それよりも横にさせてくれないか? ちょっとさっきの戦いは元より、さっき必殺技を使ったからちょっと疲れているんだ」

 

 一夏がそう言うと、二人は互いを見て頷くと、彼を寝かせる。一夏は腕で顔を覆い隠すが疲れの色が見える。さっきの戦いが彼の疲労を物語らせ、彼にちょっとした疲労を与えている事を物語らせていた。

 

「……一夏君」

 

 そんな彼を見た刀奈は不意に寂しそうに呟くと、刀奈は一夏の横に腰を下ろす。――っ!? ――。刹那、刀奈は一夏の頭を掴み、自分の膝の上に置く。

 つまり一夏は刀奈に膝枕してもらっている――それは男性から見れば嬉しいのと恥ずかしいだろう。その証拠に一夏は顔を真っ赤にしている。

 ――か、刀奈、さん? ――。一夏は刀奈の行動に困惑するが彼女はクスッと笑う。

 

「一夏君、かわいい〜」

 

 刀奈の言葉に一夏は『ッ!?』と更に真っ赤にさせる。しかし、そんな一夏に千冬は厳しめな口調である事を訊ねる。

 

「それよりも一夏、何故一週間も練習しなかった? 練習しとけばそんなに疲れないだろう?」

 

 千冬は一夏にそう言うと、一夏は驚くと少し目を逸らす。何故なら千冬は一夏とマイクが一週間も練習していない事に疑問と不信感を抱いていた。

 今日までとは言え、一週間の猶予があった――それなのに彼等は練習していない――それは彼等を危険に追い込み、更には体力が衰える事をも意味している。

 たいてい練習をする者達は一日たりとも練習を欠かせない――逆に毎日では身体を壊す為に休暇も必要である。

 が、一夏やマイクの場合は一週間もサボリと言う名のトレーニングをしてはいなかった。

 していればマイクはセシリア戦では何とか戦い、一夏もマイクに勝ったとは言え、そんなに疲れないだろう。

 千冬は一夏にそう指摘すると、一夏はその理由を述べ始める。

 

「実は一週間練習しなかったのは、自らペナルティを与える為だったんだよ……」

 

 一夏の言葉に刀奈と千冬は瞠目するが一夏はその訳を語り始める。実は一週間前、一夏とマイクはセシリアに宣戦布告された際や、千冬が一週間後にクラス代表戦をやる事から始まった。

 それは二人にとって初戦でもあり、互いが相手にあるのは二人からみれば仕方ないと思った。が、一週間練習しなかったのは互いが一週間で何れだけ腕が鈍ったのと同時に、セシリアの為でもあった。

 何故なら二人が一週間も練習すればセシリアを難なく倒せる。が、彼女を精神的にダメージを負わせる事にもなる。そうなれば彼女は立場を悪くし、周りから迫害されるだろう。

 そしたら彼女はどうなる? ――勿論、一生肩身の狭い思いをするだろう。それを一夏は許さなかったのと同時に、彼女にも軽いお灸を据えさせたかったのである。

 セシリアの言動は日本を侮辱しているのと同時に、男性が女性に勝てないと言う馬鹿げた考えをして欲しくもなかった。だから一夏はマイクと共に練習しなかったのも、セシリアへのハンデを与えたのだ。

 彼のセシリアへの気遣いとも言えるが実際は自分達のISを学園中の生徒達と教師達には見せたくはなかったのと同時に、自分やマイクのISは第四世代のISであるのと同時に、強大な力を持っている事を知られたくはなかった。

 知られれば周りは畏怖し、更に自分達の立場を危うく感じるのと同時に自分達を殺しに掛かると危惧していた。

 

 しかし、今は疑問に思った事があった。一夏は寂しそうに自分は良いがマイクが問題だった。

 マイクは、彼は何故あの時、自分の必殺技を受けたのだろうか? あれは、風神烈風波は隙だらけかつ出すまでには時間も掛かる。

 あの時の自分は無防備かつ隙だらけであり、攻撃すれば勝てた筈――それなのにマイクは何もしなかったのだ。

 一夏はマイクに疑問を浮かべる中、不意に頭を撫でられ、一夏は驚きと共に頭を撫でた者を見る。

 頭を撫でたのは――刀奈だった。刀奈は一夏を見てやるせない思いと、彼の――否、彼等の行動に少し怒りをも感じた。

 それは間違っていた――何故なら二人は自らペナルティを与えても、自分達には何の徳にもならない。

 それを彼は、一夏はそれを気にもしない――これでは彼が優しすぎる、何れ自分を破滅へと導き、崩壊する。

 何故彼は、こんなにも優しいのだろうか? 彼には怒りどころか呆れどころかなにかを感じた。

 幼き頃の彼はとても優しく、何時も自分を励まし、遊んでくれた。姉と比べられながらも本来の自分を見失ってはいなかった。

 あの時の自分は少し心配していたが彼はそう言う素振りを見せなかった。

 

「あなたは馬鹿よ……いえ、大馬鹿よ」

 

 刀奈は一夏の頭を撫でながらそう言った。刀奈は一夏の優しさに困惑と、自分の首を絞める様な行動をとった事にも怒りを通り越して哀しい思いで一杯だった。

 出来る事なら彼には安堵の時間を与えてやりたい――そう思った。が、一夏は刀奈の言葉に何も解らず困惑しているが、近くにいる千冬は気付いていた。

 ――まさか、更識姉――お前……――。千冬は刀奈の行動と様子に気付く。恐らく彼女は一夏に想いを寄せている――千冬は女性として、同性でもある刀奈の気持ちに気付く。

 にも拘らず、彼は、一夏は、弟はそう言うのは鈍感かつ女性の気持ちには気付いていない――千冬は弟に呆れながらもある事に気付き、一夏に訊ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――所で一、織斑、クラス代表戦の結果だが……――。

 

 

 

 

 




 次回、マイクのわざと負けた理由とクラス代表者。

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