インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第21話

「オラァァァツ!!」

「テヤァァァッ!!」

 

 アリーナ内にて、二人のISを纏った青年達が声を上げながら激しい戦いを繰り広げていた。その青年達とは一夏とマイク――相棒同士であり、今は戦っていた。

 一夏は槍を、雪村を振り回し、マイクはバルバを、斧槍を振り回しながら相手を攻撃していた。何方もたが互いに突き、薙ぎ払い、叩き、防いだりしていた。

 にも拘らず、何方も一進一退の攻防を繰り広げている。

 

『織斑選手、クライバー選手、何方も引かない! 逆に何方も責めているぅぅ!!』

 

 薫子の実況が流れ、アリーナにいる者達の歓声とブーイングが巻き起こる。が、謎が一つだけあった。それは彼等が一週間一度も練習していない事。

 それは周りが不審がっていた事だが今は良いだろう。それには理由があるが今は互いの目の前の敵に集中していた。

 

「ヤァァァっ!」

 

 一夏は槍でマイクの頭を叩こうとした。が、マイクは斧槍の柄で防ぎ、そして軽く振り払う。一夏は怯むがマイクはその隙を突いて、一夏目掛けて突こうとした。

 が、一夏は槍で弾き返し、そのまま後退する。二人は少し離れたいたが何方も槍を構える。

 

「一夏君……」

「一夏……」

 

 そんな一夏をピットにあるモニターで観ていた刀奈と、アリーナ席にいた箒は心配そうに彼の名を呟く。勿論、彼女達は一夏を想い心配しているが当の本人である一夏は戦いに集中しており、彼女らの想いには気付いていた無かった。

 一夏とマイクは槍を構えていたが突然、槍を解除した。

 

「おや? どうしたのでしょうか!?』

 

 薫子は疑問に思うが、マイクは右腕を高らかに上げる。

 ――エヌマエル! ――刹那、マイクはそう叫ぶ――同時に、右手近くから一つの剣が展開され、彼はそれを手に取ると、一夏に向ける。

 一夏はマイクが出した剣にだじろぎはしなかった物の、彼は何も出さなかった。そして彼等は呟いた。

 

 ――ユニオン2――。

 ――変形合体その弐――。

 

 彼等が呟くと、一夏の鷹が、マイクの鷲が翼を羽ばたかせながら高らかに飛び上がる。

 

『おおっと織斑選手とクライバー選手の鳥達が羽ばたいた!? これはウィングスラスターになるのかぁぁ!?』

 

 薫子は予想する。無論、アリーナにいる者達も皆、あれがウィングスラスターになると予想していた。

 ――あんなのは只の翼でしかない――彼女らはそう思っていた。

 刹那、鷹と鷲が咆哮を上げながら変形する。両翼や両足を引っ込め、顔を後ろへ――否、鷲は顔を前に折り曲げるとそのままマイクへと突き進み、鷹は顔を上に向けながら一夏の元へと突き進む。

 刹那、鷲はマイクの前で背を向ける様に止まると同時に、背中から取っての様な物が現れ、マイクは片手で取ってを握る。

 が、鷹の方は一夏の右腕に止まると、そのままくっ付き、そして離さない様にと翼でがっちりと左右に包み、同時に背中が開き、中から三つのボタンが現れる。

 色は右から赤、青、黄色のボタンがあったが何故か黄色のボタンは押されているのか少しへこんでいる――そして、鷹の嘴は大きく上下に広がり、口内から銃口が出て来た。

 しかし、二匹の鳥は姿を変えた。ウィングスラスターではなく、鷹は銃の様な物へと、鷲は盾へと変形した。

 

『おおっと!? ウィングスラスターではない!? 鷹と鷲が其々の武器に姿を変えました!?』

 

 薫子の実況が流れるが彼女もまた驚きを隠せない。それだけでなく、アリーナ席にいた者達も驚愕と戦慄した。あれは、只の鳥では無い事を、マイクが先のオルコット戦で使った事には気付いていた。

 が、あれはウィングスラスターだけではなく、他の武器にまで変形する事までには気付いていなかった。そうだろう、あれは鳥である同時に翼があるから、単にウィングスラスターだけしか変形出来ないのかと思っていた。

 否、それは過去の話しであり、今は現在の話しだ――そんなアリーナ席にいる者達とは違い、彼等は身構えると同時に一夏とマイクは互いに睨み合う。

 マイクは剣と盾を持っているがこれで彼は西洋の騎士としての佇まいと凛々しさを感じる。それだけでなく、狙撃銃を持っていた時はドイツの兵士と言うイメージがあった。

 が、狙撃銃とは違い、剣と盾を持っている事で西洋の騎士らしさがアップしている。

 一方、一夏は銃へと変えた鷹の口内から出て来た銃口をマイクに向ける。

 刹那、銃口から数十発の銃弾が放たれ、空の薬莢が何十発も宙に舞う。銃弾はマイク目掛けて突き進む。逆にマイクは素早く移動しながら躱す。

 しかし、一夏は移動するマイクを逃がさないと言う意味で右腕を動かす。一方、マイクは逃げ逃げ回っていたが手に持っている盾を前に突き出すと、一夏目掛けて突き進む。

 ――っ!? ――。一夏は驚くがマイクはそのまま一夏目掛けて盾で押す様に撲った。

 ――ぐふっ!? ――。一夏は怯むが、マイクは少し離れると、手に持ってる剣で一夏の身体を斬る。一夏の身体から血は出ていないがISにはダメージを与えるくらいであった。

 が、マイクは攻撃の手を休めない――それは彼自身が一夏をジワジワと追いつめようとしていたのだ。

 ――あっ! ――。そんな一夏をモニターで観ていた刀奈、アリーナ席で見た箒は困惑した。が、彼女らは一夏を応援しているが一夏が追いつめられている事に驚きと心配を隠せない。

 しかし、刀奈の隣にいる千冬は一夏をモニターで観ながら身体を震わせていた。が、千冬は困惑しているがその表情は教師としてではなく、姉として心配している事が判る。

 

『おおっと!? クライバー選手、織斑選手を追いつめる!! これには織斑選手は手も足も出ないいぃっ!』

 

 薫子の熱い実況が流れる――薫子自身もまた、この戦いを熱く語るのと、新聞の大きなネタが出来る事への喜びを隠せないでいた。それだけでなく、アリーナ席にいる大半の女子生徒達や僅かな教師達も歓声を上げる。

 彼女達は最早、この戦いを熱く見ているのと、手に汗握る思いと興奮が冷めないでいた。この戦いは男性操縦者同士としてではなく、彼等の実力を知りたいが為であるのと、何方が勝っても関係ない思いでいた。

 逆にまた、女尊男卑主義者の者達は彼等を畏怖していたが更に歓声が上がる。

 理由は一夏がマイクの持ってる剣を左手で掴むと、右腕にある鷹をマイクに向けようとした。

 しかし、マイクはそれを盾で防ごうとしたが一夏はそれを右腕で力一杯振り払う。刹那、マイクは盾を振り払われ、胴体が無防備となってしまう。

 一夏はチャンスと思い、再び鷹をマイクに向けると、鷹の口内にある銃口から数十発の銃弾が放たれると、空の薬莢が宙に舞う。

 ――っぐっ! ――。マイクは激痛で顔を歪めるが剣を手放し、盾をも手放してしまう。剣と盾は落下するがマイクは何故か後退し始める。

 理由は一夏の止まらぬ銃弾による攻撃が重く、それに耐えきらなかったのだ。が、一夏は怯むマイクを見てチャンスと同時に、左手で鷹の背中にある三つのボタンの内、赤いボタンを押す。

 刹那、黄色いボタンは押される様に青いボタンと同じ位置に戻り、赤いボタンは凹むと同時に『大砲』と機械的な声が聞こえた。 

 同時に銃弾は止み、銃口から硝煙が漂うが鷹の口内にあった銃口は口の中に戻るように戻り、今度は別の銃口――否、砲口が現れた。

 一夏は鷹をマイクに向けると、力一杯叫んだ。

 ――喰らえ、マイク!! ――。一夏がそう叫ぶと、鷹の砲口から轟音と共に一発の砲弾が放たれ、マイク目掛けて突き進む。

 マイクは砲弾を瞠目する。刹那、砲弾はマイクの腹に直撃し、同時に爆発した。マイクはそれに巻き込まれたが爆風の中から人影が見える。

 それは言わなくてもマイクだった――が、爆風が消えつつあると同時に彼のISはボロボロであった。火花は飛び散り、煙は出ていた。

 ――っ……――。が、一夏もそうであった。一夏も先の攻撃により、彼のISは既にボロボロかつ火花が飛び出ている。

 何方も既にボロボであった。それは彼等が激闘を繰り広げた事による名誉ある怪我だろう――しかし、何方も互いの力も体力も残っていない。

 そして彼等に残された道は只一つ――否、一夏にはアレがあった――アレを使えば、一夏には勝機があり、そして一夏はこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――やはり、あの技で決めるしかない――と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、一夏の必殺技、一週間練習しなかった理由。

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