インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第20話

『それではもうすぐ織斑選手とクライバー選手の両選手による第二試合を行います』

 

 少し経った後、薫子のアナウンスが流れ、それを聴いた一夏は軽く準備運動を始める。が、本来ならば最初は一夏とセシリアの試合だったがセシリアは――否、セシリアのISは先の戦いでボロボロにされ、修理に出さなければならない程のダメージを負ってしまったのだ。

 その為、急遽、第三試合を第二試合とし、これは悪いが一夏とセシリアの試合は無くなり、セシリアのISはボロボロの為に一夏の不戦勝、セシリアの不戦敗と言う残念かつ、セシリアは全敗と言う残念な結果に終わってしまった。

 勿論、これを一夏に言ったのは、薫子が、とある人物の命によりアナウンスしたのである。そしてそのアナウンスを流したのは……。

 

「取り敢えず大丈夫か一夏? 相手はクライバーだぞ?」

 

 その人物は一夏と、最初から居た刀奈の他に来た人物、千冬であった。千冬は一夏を心配しピットに来たのと同時に薫子にクライバーの勝利と、第二試合を無くし、第三試合を第二試合へと変更する様に言った人物でもある。

 千冬はピットに来たのは、一夏を心配しているのが理由であった――その証拠に、今の彼女は教師としてではなく、弟を心配する姉としての心配の表情を浮かべていた。

 

「大丈夫だよ織斑先生、俺は負ける気は無いし、マイクとは何度も手合わせしているから」

 

 一夏は準備運動をしながら答えた。その言葉には一夏の自信が見て取れるのと同時に、マイクの戦いを熟知し、マイクのクセをも知っている様にも捉える事が出来た。

 ――一夏……マイクとは知り合いなのか? ――。一夏の言葉に千冬は何処か寂しそうかつ、何処か嫉妬をも感じた。

 マイク・クライバー、それは千冬の受け持つクラスの生徒の一人であり、一夏のルームメイトであり、一夏の相棒。それは千冬に取って、一夏が信頼し、背中を預け合うのに値する者であった。

 同時に、彼が戦うのは自分の弟でもある一夏であるのだ。それは一夏やマイクに取って苦渋かも知れない――だが何れ敵対する事もあるが今がそれだった。

 二人はもうすぐ戦おうとしている――それは二人にとって幸か不幸かは判らない――しかし、必然と片付けるしか無いだろう。千冬はそう思いながらも不意に哀しそうに目を逸らす。

 自分は一夏とは仲を取り戻しているのだろうか? 千冬は一夏との姉弟としてのやり取りを気にしていた。自分と一夏は少しづつだが姉弟としての話しや軽いやり取りをしている。

 が、これと言った結果は無く、逆に気まずい状態が続いていたのだ。ツケが回ったとしか言いようがないが自分は一夏に何をしてやれたのだろうか? 千冬はそう思ったが不意にアナウンスが流れる。

 

『それでは、織斑選手とクライバー選手の両選手の試合を始めます――両選手、スタンバイしてください』

 

 薫子の実況が流れ、それを聞いた一夏は頷くと、千冬と刀奈を見る。

 

「二人とも離れてて――展開するから」

 

 一夏はそう言うと、二人は頷き、離れる。そんな二人に一夏は微笑むと、直ぐに表情を険しくし、腕輪を付けている腕を高らかに上げる。

 ――大和! ――。一夏は叫んだ。刹那、一夏の腕輪から白い光が現れ、光は腕輪だけでなく、一夏をも包み始める様に広がる。

 一夏は完全に光に包まれるが光は徐々に消えて行く。

 ――あっ……――そんな一夏を見ていた刀奈は不意に心配そうに声を出すが、光が完全に消えると、一夏は――否、一夏はISを纏っていた。

 そのISは白銀に輝きながらも所々赤い線が見られる防具であり、日本が誇る鎧だった。――それは白銀の輝きが美しくも、鎧が勇ましくも凛々しくも見える。

 それだけではない――左肩には日本の国章でもある菊と、右胸には日ノ本を表しているのか赤い丸が描かれ、右肩には白い鷹が止まっている。

 背中にはウィングスラスターは無いが鷹が一夏のウィングスラスターなのだろうか? 二人はそう思ったが二人は一夏の纏っているISを魅入っていた。

 何処か美しく凛々しい――まるで現代に蘇った様にも思え、昔の日本が誇り、西洋の騎士を対なす意味でもある東洋の鎧武者――否、それ以上かもしれない。

 そのISは光を灯し、持ち主である一夏の挫けない心に応えるかの様にも思え、マイクのISと対なす存在とも思える。

 彼の、マイクのIS・バルムは黒であり西洋の騎士――逆に一夏のIS、大和は白銀で東洋の鎧武者。

 どう見ても互いを対なす事や彼等が相棒である事を意味している様に思えた。刀奈と千冬が魅入る中、一夏は微笑む。

 ――行って来るよ――。一夏は二人にそう言った。その言葉には彼なりの二人への気遣いと自信がある事を孕んでいる。その言葉を聞いた二人は我に返るが彼は二人に背を向け、アリーナへと続く出口へと機体を飛ばした。

 そんな一夏を見た刀奈と千冬は少し驚きながらも不意に微笑んだ。それは一夏が背を向けた後であったが彼女達は一夏を信じる事にしたのだ。

 刀奈は想い人として、千冬はたった一人の弟として、彼を、一夏を応援しょうとした。勿論、一夏とマイクの何方に軍配が上がるのかは、

神のみぞ知る。

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 その頃、アリーナ中央の上空ではマイクがバルムを纏いながら待機していた。彼の左肩には鷲が止まっているが彼の表情は何処か険しい。

 それもその筈、アリーナ席にいる女子生徒達や教師達の其々の思惑が籠った様な無数の視線に苛立を隠せないでいた。

 好奇、憎悪と言った視線は兎も角、マイクを実力ある物として見ている者達もいるのと同時に警戒している者達もいた。立場が危ういと言う訳ではない――単に、マイクが気に入らないのと、少しは出来る事を感じていたのだ。

 刹那、一機のISがピットから出てくるのと同時に、微かに歓声とブーイングが巻き起こる。そのISを――否、そのISを纏っているのは一夏であった。

 一夏はマイクの少し先で止まると、彼を見据える――その表情は険しいが何処か哀しそうであった。

 彼と一戦交える事への喜びや、出来るなら戦いたくないと言う弱気もあった。が、彼は相棒であるのと同時に避けては通れない障壁。

 この戦いに勝てば、クラス代表は誰になるかは目に見えるのと同時に、自分の実力を見せつけるチャンスもあった。そしてアナウンスが流れる。

 

『それでは織斑選手、クライバー選手によるクラス代表戦第二試合を行います――試合開始!』

 

 薫子の喜びが孕んでいる様なアナウンスが流れるのと同時に、更に歓声とブーイングが巻き起こる。が、それは百も承知であり、一夏はそれを気にする事も無く、彼は左腕を高らかに上げ、マイクは右腕を横に伸ばすと互いに言った。

 一夏は『雪村!』、マイクは『バルバ』と。刹那、一夏の右腕近くから炎に包まれた、穂先が十文字になっている槍が展開され、逆にマイクの右腕近くから黒い霧に包まれながらも、見た目は槍だが穂先は槍にも思えると同時に斧にも見える槍だった。

 二人は互いに展開した槍を持ち、相手に対し身構える。が、マイクは兎も角として、一夏は槍術には長けており、マイクは少し扱える程度である。

 しかし、一夏は兎も角として、マイクは気付いていた。彼は、一夏は槍を使ってくるのではないかと。理由としては相手は自分に有利な武器を使ってくる事が多く、それで先制攻撃をする事も珍しくなかったからだ。それでも、二人は身構えたまま叫んだ。

 ――行くぞ、マイク! ――。

 ――行くぞ、一夏! ――。

 

 二人はそう叫ぶと同時に突き進む、刹那、二人は槍と槍の鍔競り合いから始まった。何方も表情を険しくしている一方で、薫子の実況が流れる。

 

『おおっといきなり鍔競り合いからだぁぁっ!! 何方も相手に先制攻撃するつもりだったのでしょうか!?』

 

 薫子の熱い実況と共に歓声とブーイングがわき上がる。それでも二人は互いに一歩も引かない――刹那、二人は互いに離れ、そして槍と槍から火花が飛び散る。

 が、二人が下がると共に一夏が槍を横に持ちか構えながらマイクに近づき、マイクに対して薙ぎ払おうとしていた。

 しかし、マイクは素早く下がり、一夏の攻撃は空振りで終わると同時に隙を作ってしまった。

 これにはマイクも好機と言わんばかりに彼はバルバを、斧槍の穂先を一夏目掛けて刺そうとした。

 が、一夏はこれを紙一重で躱すと共に素早く後退した。

 一夏は後退したが彼は槍の穂先をマイクに向けると、マイクも斧槍の穂先を一夏に向ける。何方も互いの相手を警戒していたが一夏は不意にこう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――やはりお前と、マイクと戦うのは、警戒しかないな! ――と。

 

 

 

 

 

 

 




 次回、鷹と鷲、ウィングスラスターと更なる秘密。

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