インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第18話

「つぐっ!? 喰らいなさいまし!」

 

 少し経った後、アリーナではマイクのバルムと、セシリアのブルー・ティアーズが激突していた。

 セシリアは手に持っている大型狙撃銃――否、レーザーライフル、スターライトmkIIIでマイクを狙い、逆にマイクは狙撃銃――否、見た目は狙撃銃その物だが機械的かつれ銃口からはレーザーが放たれ、それをセシリア目掛けて狙っていた。

 何方も相手を遠距離から攻撃しているがセシリアには分が悪かった。理由は一つ、セシリアは男相手に何処か見下すかつ勝ちたい思いがあり、逆にマイクはセシリアに対して勝つよりも軽く誘導しているかつ正確に狙いを定めていた。

 勿論、マイクが狙撃銃を持っているのは少し前に展開したばかりであり、逆にセシリアは何故か高らかに宣言したにも関わらず無防備な状態であった為に、マイクに先制攻撃されたのである。

 そのせいか、セシリアは冷静を保ちつつも、内面は焦りを隠せないでいた。

 

『オルコット選手! クライバー選手に追いつめられている! これは予想外の展開だぁ!』

 

 アナウンスから薫子の実況が流れる。薫子にとって驚きと、ネタが出来た事に喜びを隠せない。しかし、アリーナ席にいる女子生徒達や教師達は何処か違う。

 皆其々、驚愕、困惑、憤怒、恐怖の表情を浮かべている。理由はマイクの実力がそれ相応か、それ以上の実力があるかもしれない事への驚きと、男でありながら自分達の地位を脅かす程の実力持っている事への怒りと恐怖を感じていた。

 が、それ以上に怒っていたのがセシリアであった。

 

「何故ですの!? 何故一週間も練習してない貴方が私の攻撃を避けられますの!?」

 

 セシリアは怒りながらマイクに訊ねる。何故なら、セシリアはマイクが一夏と共に一週間も練習していなかったのだ。

 それはどう見ても練習を怠っており、セシリアから見れば屈辱的かつ怒りしか沸かなかった。

 もう一つ、彼はバルムと言う専用機を持っていた事――専用機とはISを扱う操縦者で、しかもエリート中のエリートしか与えられないのだ。

 それも血も滲む程の努力をして与えられる物なのに彼はそれを持っている。それだけじゃない――彼の専用機は何処の国からもそう言った機体は無く、全くと言っていい程の新しいISだった。

 セシリアから見れば怒りしか沸かないのも頷けるが専用機を持ち、かつ努力もしてないような彼が専用気持ちである事が許さないのだろう。

 

「喰らいなさいまし!」

 

 セシリアは手に持っているレーザーライフルをマイクに向け、引き金を引く。銃口からレーザー光線が放たれるがマイクは紙一重で躱し、逆にセシリアに銃を向け、引き金を引く。

 銃口から一発の銃弾が放たれ、同時に空の薬莢が宙を舞う。刹那、銃弾はセシリアの肩に当たる。

 ――ぐっ!? ――。セシリアは焦りを隠せないが彼の持っている銃を見て、ある事を思う。

 

「(何故ですの!? 何故あんな時代遅れの銃を扱ってますの!?)」

 

 セシリアはマイクの持っている銃を見て、驚きを隠せない――マイクの持ってる銃は狙撃銃だがその銃の名はカラビーナー・アハトウントノインツィヒ・クルツ――ドイツが開発した軍用小銃であり、マイクの主力武器の一つ。

 しかし、セシリアから見れば自分の最先端の技術を駆使して造った銃が、あんな六十年近く前の時代遅れの銃に負けるのは屈辱以外何も無い。

 それにマイクがその銃を使っているせいで、彼が纏っている機体が騎士にも思えるにも拘らずナチスの軍服に見えるせいで、彼がドイツ兵

に見えた。

 まるで、自分は若いドイツ兵と戦っている――セシリアはそう思い下唇を噛む。

 

「このままでは、行きなさい!」

 

 セシリアは事態打開の為に命令した――それは四基のウイングスラスターにだった。セシリアの言葉に四基のウイングスラスターはセシリアの前を通り過ぎ、散らばる。

 それを見たマイクは何も言わなかったが四基のウィングスラスターからピンク色のレーザー光線が放たれる。

 ――!? ――。マイクは目を見開いた物の、落ち着いて躱す為に動く。が、一発だけ背中に当たった。

 

「やりましたわ!」

 

 セシリアは喜びを隠せない。それだけでなく、アリーナ席にいた、セシリアを応援する者達も喜びを隠せない。

 ――マイク!? ――。一方、ピットにいる一夏はモニターに映っているマイクが攻撃された事に驚きを隠せず戸惑う。が、一夏は薄々、気付いていた。

 実は一夏もマイク同様一週間も練習していなかった――それには理由があったが今はその時ではなかった。

 一夏はマイクが攻撃された事に驚いているが一週間も練習していなかったツケが回ったのかと気にしていた。

 

「一夏君……」

 

 そんな一夏に隣にいた刀奈は宥める。が、刀奈もマイクを心配し、モニターを観る。

 アリーナではマイクが四基のウィングスラスターとセシリアを相手に何とか踏ん張っていた。

 

「フフフっ! 一週間も練習しなかったからですわよ!」

 

 セシリアは笑いが止まらなかった――否、セシリアは勝てると思ったのだろう。そんなセシリアにアリーナ席にいたセシリアを応援する者達も何故か笑いや喜びを隠せない。

 所詮、男が女に勝てないのだから――彼女らはそう思っていた――が、マイクはセシリアのウィングスラスターを見て微かに呟いた。

 

 

「目には目、歯には歯――翼には翼を……行けっ!」

 

 マイクはある物に命令する――それは左肩に止まっている鷲に対してだった。刹那、鷲がマイクから離れ、翼を広げ、飛び始める。

 

「なっ!? その鷲は生きているのですの!?」

 

 セシリアは驚きを隠せない中、鷲は方向を上げながら一基のウィングスラスター目掛けて突き進むと、口を開けた。

 刹那、鷲の口内から銃口が現れ、銃口から一発の銃弾が放たれ、銃弾はウィングスラスターに直撃し、ウィングスラスターは機能が停止したのかそのまま落下する。

 ――なっ!? ――。それを見たセシリアは困惑する中、マイクは隙を突いて、自分が放った鷲と共に残り三基のウィングスラスターを機能停止に追い込むように攻撃した。

 ――ああっ!? ――。セシリアは再び驚くが、四基のウィングスラスターは機能停止と言う形で地面に落下した。そして微かに落ちた音が聴こえた。

 

「つぐっ!?」

 

 セシリアは少し困惑しながらも手に持っているレーザーライフルをマイクに向けるが何故か震えていた。

 

「(まずいですわ……どっちから攻撃すれば良いですの?)」

 

 セシリアは焦りを隠せない。何故なら、マイクの他にもマイクが放った鷲がいる。何方かを攻撃すれば、もう片方の的になってしまう。

 逆に外せば両方に攻撃され、逆に何もしなければ結果は同じ――攻撃されてしまうからであった。しかし、何故かマイクや鷲は攻撃してこない。

 マイクはセシリアを見ながら狙撃銃を向け、鷲は何故か窺っている。何方も一ミリも動かなかった。

 

『おおっと!? 何方も動かない!? 相手の出方を窺っているのでしょうか!?』

 

 薫子の実況が流れる。が、アリーナ席からはマイクを応援し、セシリアを応援する者達や何方も応援する者達は固唾を呑んで見守る者や声を出して応援する者達で別けられていた。

 ――ユニオン……――。刹那、マイクはそう呟く。そして鷲が突如咆哮を上げる。

 

「な、何ですの!?」

 

 セシリアは声を上げながら驚き、アリーナにいる女子生徒達や教師達も驚く。すると鷲は咆哮を上げながらマイク目掛け突き進む。

 直後、鷲は顔を後ろへと折り曲げ、身体を回転させ、両足は吸い込まれる様に引っ込め、両翼も引っ込めながらマイクの後ろへと突き進み、そして背中へとくっ付いた。

 刹那、マイクの後ろから両翼が現れる様に羽ばたく――否、それは鷲の翼であった。が、何処か大きく、何処か美しい。

 

「あ、あぁぁ……」

 

 セシリアはそれを見て瞠目した。否、せシリアはその翼に魅入っていたのだ――空の覇者であり、空からの狩人でもあり、鳥類の中では威厳や王者としての風格がある鷲の翼に。

 その翼は何処か威厳があり何処か美しいのと、黒なのか更に魅力を引き立てている――セシリアは魅入る中、アリーナにいる者達も魅入りながらも驚きを隠せない――が、これで判った事があった。

 マイクの機体にはウィングスラスターが無い訳が――マイクはウィングスラスターを装備していなかったのではない――彼は敢えてウィングスラスターを隠し、それを無かった様に見せかけていた。

 否、ウィングスラスターは最初から無かった様にした訳ではない――最初からあった事を隠し、それを鷲がウィングスラスターである事を敢えて教えていたのだ。

 あの鷲は只の飾りでは無かった――あれは、最初から生きているのと、それをウィングスラスターへと変える事や合体する事でウィングスラスターになる事を隠していたのと同時に教えようとしていたのだ。

 周りはあの鷲がウィングスラスターである事に驚きを隠せない中、マイクはセシリアに言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――行くぞ、オルコット……――と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、敗北と助言

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