インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第15話

「それで話しはこれまでにしましょう……」

 

 あれから少し立った後、マイクは十蔵と軽い話しをした後、十蔵からそう言われた。一方のマイクはやれやれと言った感じで溜め息を吐くが肩が重荷が下がるように軽くなるのを感じた。

 彼は十蔵と少し話しをした。話しと言っても、男性操縦者としてはどうか、他の者達から苛められ、迫害されていないかどうかや、もう一人の男性操縦者、一夏とはうまくやっているのかの話しをされていた。

 勿論、彼は一通り答えると、一夏とは背中を預け合う親友である事も答えた――これには十蔵は驚く物の、彼は成長した孫を見る様な優しい目で見つめた。

 赤ん坊の事も訊かれたが彼、マイクは赤ん坊をそのままに出来なかった事や、警察は信用に値するのかも疑問に思い、そして通報しなかった事や、哺乳瓶や粉ミルクは餓死しない様に購入したと答えたのである。

 マイクの言葉に十蔵は彼が優しい事にも気付き、そしてこれからは気をつける様にと言った。謹慎や停学にはしない物の、十蔵は軽い注意で終わらせた。

 

「それよりも、学園長?」

 

 マイクはある疑問を問う様に訊ねると、学園長は「何でしょうか?」と訊ね返す。学園長の言葉にマイクは少し目を伏せながら答えた。

 

「あのガ……赤ん坊はどうなるんだ?」

 

 マイクの言葉に学園長は瞠目したがマイクは少し俯く。マイクは心配していた――赤ん坊はどうなるのか、と。

 最悪の場合、警察に届けられるか児童相談所に連絡し、施設に預けられるのだろう――マイクはそれに気付きながらも敢えて訊ねたのである。

 

「……あの子は……そうですね」

 

 学園長が答えた刹那、扉の叩く音が聴こえた。マイクと学園長が扉の方を見やると、外から声がした。

 ――失礼します――。その声は女性だったが学園長が入るよう促すと、扉が開き、ある教師が指導室に足を踏み入れた。

 その教師は千冬だった――彼女は眉間に皺を寄せていたがが何処か哀しい。

 

「織斑先生? どうしたのですか? クライバー君は私が連れて変えると言いましたが?」

「いえ、そう言う訳ではないんですが、児童相談所とかに連絡しましたか?」

「いえ、未だですが? 無理もありませんが突然の事で驚いているのです」

「そうですか――それよりも学園長にお願いがあります」

「何でしょうか?」

 

 十蔵が訊ねると、千冬は軽く頷き、ある事を言う。

 

「あの赤ちゃんを一日だけ、私達のクラスで見ていいですか?」

 

 千冬の言葉にマイクと十蔵は驚きを隠せない――赤ん坊を見たい? それは十蔵に取って驚きとしか言いようが無かった。

 

「ど、どうしてですか? それにそんな事は」

「無理は承知です――ですが理由は言います」

 

 千冬は十蔵に話した。理由はセシリアが赤ん坊を皆で見ないかと言い、そしてセシリアの言葉を尊重したのは千冬だった。

 千冬はセシリアの切なる願いと、赤ん坊は一人ではない事を教えると、ある事も言った。

 

「学園長――織斑やクライバーを除き、彼女らは何れ母親になる者もいます――ですが彼女らには赤ちゃんを大事にする覚悟もあるかどうかも試したいのと、道徳の授業としても、触れ合う大切さも教えたいのです――無理は承知ですがお願いします」

 

 千冬は頭を下げる。一方、マイクはセシリアが赤ん坊を見たいと言った事に驚きを隠せないでいたが十蔵は少し悩んでいた。

 赤ん坊と触れ合う大切さや何れ母親になる者達もいる――千冬はそれを指摘してきたのだ。

 これには十蔵も悩んだ。が、十蔵は少し悩んだ後、微笑んだ。

 

「判りました――放課後までですが、貴女の受け持つクラスで赤ん坊を見る許可を与えましょう」

 

 十蔵の言葉に千冬は驚き頭を上げ、マイクは驚きながら十蔵を見た。

 

「連絡は少し待ちましょう――その代わり赤ん坊は大切にして下さいね?」

「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

 十蔵の言葉に千冬は何度も感謝の言葉を述べながら頭を下げた。しかし、マイクは十蔵を見て驚いたが俯き、少し微笑んだ。

 ――良かった……――と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ベロベロバァ〜〜」

「ウフフ!」

「あっ笑った! 可愛い〜〜」

「ちょっと何時まで抱っこしているのよ!? 次は私の番よ!?」

「え〜〜っ? 次は私の番よ!?」

 

 少し経った後の昼休みの時間――一夏がいるクラスではクラス中の女子達が赤ん坊一人に対して全員で見ていた。と、言っても赤ん坊を抱いているのは清香だが赤ん坊は笑っていた。

 何故なら数時間前、千冬は学園長からの許可を貰い、学園長から許されたのである。勿論、赤ん坊の面倒を見られるのは放課後までだが遊べる時間は休憩時間や昼休みだけであり、彼女達はその時間を有意義かつ赤ん坊と触れ合う時間として使っていた。

 理由としては赤ん坊には寂しい思いをさせない――コインロッカーと言う薄暗く、誰にも相手にされない思い出を作らせたくないのと、赤ん坊には一人ではない事を教えたい。

 勿論真耶もいたが周りの、女子生徒達の強い気持ちがそれであり、彼女達の心は一つであった。それが今、一人の赤ん坊の為に全員で動いている――それは良い事は悪い事かは判らない――。

 だが、これだけは言える――彼女達は赤ん坊の相手をしているのとどういう結果になるかは誰にも判らないだろう――。

 そんな光景を一夏は微笑ましそうに見つめ、赤ん坊を連れて来た張本人であるマイクは呆れながらも赤ん坊を見据えていた――二人は少し離れた場所で見ていた。

 

「何か不思議だな……一人の赤ん坊の為に皆が動くのって……」

 

 一夏は不意に呟くがマイクは答えた。

 

「フン……それはお前の姉の言葉と願いを聞き入れたまでだろ?」

 

 マイクは一夏の姉、千冬のことを言う――勿論、こうなったのも千冬が周りに行ったのと、周りが同意したに過ぎない。

 しかし、逆にマイクは千冬に対して好印象は無く、嫌いでもなかった。彼はただ、千冬のカリスマ性に驚いてた。あの大会を二連覇を達成し、実力や高い位にいながらも誰にも迫害や差別をしない事にも感銘していた。

 彼女達が動いたのも、千冬の人間性と優しさなのだろうか? ――マイクはそう思っていたが一夏は不意に呟いた。

 

「それは違うよマイク――千冬姉は赤ん坊を心配したのもそうだけど、ある人の願いを聞き入れたまでだぜ?」

「ある人? ……まさかオルコットか?」

 

 マイクが訊ねると一夏はマイクに微笑みながら頷くと、一夏はある人物を見た――セシリアだった。

 セシリアは赤ん坊を微笑ましそうに見守っていた。

 

「俺には女性の心は判らないけど、俺には思うんだ――オルコットは優しいんじゃないかって?」

「優しい? フン、俺は昨日、男を馬鹿にした様な発言をした女を信じたくはない」

 

 マイクはそう言いながらそっぽを向くが一夏は苦笑いすると、不意に赤ん坊を見る。赤ん坊は周りの行動や二曇りを感じているのかキャッキャッと笑っていた。

 これには一夏も釣られて笑うが赤ん坊は笑顔を絶やさない。一夏は赤ん坊を見て不意に呟いた。

 ――何か、不思議だよな、赤ちゃんって――。一夏はそう呟くがそうなるのも無理はなかった。

 赤ん坊には不思議な力があった――それは幼き頃から強大な人物になる事や有名になるかどうかも判らないが誰よりも弱く、誰よりも優しい。

 それに赤ん坊の笑顔はどんな人物でも笑顔にする魅力がある――善や悪と言ったイメージではなく、純粋に人を引きつける何かがあった。

 しかし、それは赤ん坊での記憶であり、将来はどんな人物になるかは判らない……穏やかか,冷酷か、能天気な性格になるかは判らない。

 それは赤ん坊の成長や周りの力や支えがあるからこそなりたつだろう。が、今は赤ん坊であり、今の時間を大切にして欲しい。

 一夏はそう思うと不意に笑った。

 

「フフッ……」

「何がおかしい?」

 

 マイクには不審がられたが一夏はそれを自ら指摘する様に答えた。

 

「否、皆赤ちゃんの為に動くのは凄いのと、赤ちゃんは穢れない存在だと思ったからだよ」

 

 一夏はそう言うと、赤ん坊を見る。赤ん坊は未だ笑っていたがいつの間には別の人物が抱き抱えていた。それは静寂だったが静寂は赤ん坊を見て、不意にある事に気付く。

 

「あっ、そうだ、次はオルコットさんよ?」

 

 静寂はそう言うと近くにいるセシリアを見る。――えっ、私ですか? ――。セシリアは瞠目したが静寂は微笑みながら頷くと、ある事を言った。

 

「赤ん坊を見たいと言ったのはオルコットさんでしょ? それにこの子に温もりを与えたいと言ったのはオルコットさんでしょ?」

 

 静寂は言葉を述べると、セシリアは驚きを隠せない。勿論、静寂はセシリアに赤ん坊を渡すと言ったのはセシリアが赤ん坊に温もりを与えたいと言ったからである。

 セシリアの純粋な願いと、セシリアが自分と同じ境遇で同情したに過ぎないが前者の方が強いだろう。静寂はセシリアに赤ん坊を渡そうと差し出す中、セシリアは困惑していた。

 

「で、ですが私は……」

「今は良いよ?」

 

 静寂の言葉にセシリアは「えっ?」と驚く。勿論、セシリアは昨日の件で色々と確執が出来ていた。周りから見ればセシリアは嫌な人としか見られないだろう。

 だが今は、赤ん坊の為に皆が動いているのと、静寂は純粋にセシリアに渡したいだけであった。

 

「オルコットさん……次は、はい」

「あっ……判りましたわ」

 

 セシリアは静寂から赤ん坊を渡されると、赤ん坊を優しく抱き抱える。

 

「キャッキャッ」

 

 赤ん坊はセシリアを見て笑顔を見せる。それを見たせシリアは驚くも、直ぐに微笑むと、優しく抱き締める。

 大丈夫、一人ではない――セシリアは赤ん坊にそう教えたかった。周りはセシリアを見て微笑むも、少し離れた一夏も微笑む。

 しかし、そんな中、マイクは違った。彼はセシリア――否、赤ん坊を見て何かを思うと、直ぐに目を逸らし、こう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――同じだ……俺と――と。

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、刀奈の想い、一夏と箒、再会と会話

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