インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第14話

「取り敢えず、クライバーは学園長に任せたが今は落ち着いてくれ」

 

 あれから少し経った後、千冬は自分が受け持つクラスに戻り、教卓の前に立つと、未だ困惑している生徒達を落ち着かせていた。

 それが功を奏したのか生徒達は少しは落ち着いた物の未だ困惑していた。そんな中、彼、一夏は違った。

 

「マイク……」

 

 一夏はマイクを心配しているのか少し暗い――マイクは、彼は自分の相棒であるのと、大切な親友である。

 それなのに彼は今、学園長と話しをしている――それはまるで学園長から厳重注意を受けているのではないかと、一夏は心配していた。

 退学にはならないが最悪の場合、彼は停学になるのだろうか? 一夏はそう思っていた刹那、ある一人が千冬に対して千を上げながら訊ねる。

 

「あ、あの織斑先生、あ、赤ちゃんはどうしていますか!?」

「どうした鷹月? 赤ん坊なら山田先生が看ているぞ?」

 

 千冬は、手を挙げた生徒、鷹月と言う生徒の言葉に軽く答えると、鷹月――否、鷹月静寐はその理由を話し始めた。

 

「あ、あの赤ちゃんは何故、コインロッカーに捨てられていたのでしょうか!? それが判りません!?」

 

 静寐は千冬に問う。それは彼女が赤ちゃんを心配しているのと、何故、赤ん坊の親がそんな事をしたのかが判らなかった。

 静寐から見れば、神経がどうかしているとしか思えないのと、無責任かつ育児放棄としか思えなかった。

 静寐だけではない、周りにいる者達も赤ん坊を心配し、親に対しての、親としての無責任すぎる行動に怒っていた。

 

「…………それは私にも判らぬ」

 

 刹那、千冬が口を開いた。それは千冬自身の答えとも捉える事が出来る――そんな千冬の言葉に周りは驚きを隠せない。

 千冬の言う事は無責任としか思えなかった――が、千冬は言葉を続ける。

 

「逆に諸君に訊く――お前達は赤ん坊が欲しいか?」

 

 千冬の言葉に周りはビクッとした。しかし、千冬は言葉を続ける。

 

「赤ん坊は欲しいか? ――それに諸君は一人で育てる事は出来るか?」

「そ、それは……」

「出来ないだろう? それは赤ん坊が夜中泣くのと、毎日相手にしなければならない――それに家事の合間にぬったりとしなければならない――逆にそれは、ストレスが溜まるからな?」

 

 千冬は生徒達に指摘した。それは赤ん坊を持つ親としての自覚を生徒達に指摘した。今の生徒達は、一夏を除いた生徒達は何れ結婚し、家庭を持ち、親となるだろう。

 しかし、それは幾多の困難も待っているのと、それが親としての自覚があるのかを訊いていた。が、逆に心配もしていた。

 家庭を持っても崩壊すれば終わりであるのと、彼女達は赤ん坊――否、我が子との二人きりの生活が出来るのかを問い質していた。

 赤ん坊を育てるのは多少のストレスが溜まる――それだけでなく、周りに頼れる人がいないのと、それがストレスが溜まる原因と、それを吐き出す為に子供を虐待してしまう親もいる。

 経済面でもあるが親は自分の事になると子供が邪魔になる考えをも持ってしまうのだ。それが最悪の結末――即ち虐待で殺してしまい、施設に預ける者もいるだろう。

 だが、あの赤ん坊は施設ではなく、コインロッカーと言う最悪な場所で置き去りにされたのだ。それは環境の悪い場所であり、子供が死にかねない――千冬はそれを生徒達に言った。

 生徒達は千冬の言葉に反論出来ない中、一夏は千冬を見てある事を思い出す。

 

「まさか、千冬姉……」

 

 一夏は千冬を見てある事を思い出す。千冬は赤ん坊や子供を育てた経験は無い――否、千冬はあったのだ。それは一夏と言う、自分のたった一人の弟。

 千冬から見れば掛け替えの無い弟でああった。しかし、千冬は少し辛そうに俯いた。

 

「私は……そんなことを言える立場ではない――私は……」

 

 千冬は不意に一夏を見る。その瞳は少し罪悪感があ様にも思えたが一夏は直ぐに気付いた。

 それは一夏が千冬との性格があった時、千冬は勉学や仕事で忙しい日々を送っていた。その為、一夏の相手をあまりしてやれなかった。

 それは千冬がストレスを溜めているのと、千冬がそれを一夏に当てる危険もあったからだろう。が、相手にしなかったのは忙しいからであった。

 一夏を虐待しているようにも思えたが千冬は一夏を心配かけてくない一心で、一夏を安心させたい一心で無意識にそう言う行動をとってしまったのだ。

 それは虐待とも言えたが千冬は一夏を喪った後、千冬は相手にしなかった一夏への謝罪と一夏が辛い思いをしていた事には気付けなかった。

 あの時の千冬は一夏への謝罪は罰が当たった事だと言う事にも気付き、そして彼との絆を取り戻したいのは、罪滅ぼしの為でもあった。

 出来る事なら一夏の為に、姉として、再び姉弟の時間を取り戻したい――千冬はそう願うと共に、再び生徒達を見る。

 

「諸君、これだけは覚えてくれ――、自分だけで、一人で子供を育てようとはするな――出来る事なら周りに頼れ、そして子供に厳しくも温かく見守り、非行の道へと走らせるな――子供に辛い思いをさせるな」

 

 千冬はそう言うと、周りは困惑した――しかし、千冬の切なる願いと共に生徒達に子供に間違った道に走らせない様に言い聞かせていた。

 逆にまた、彼女達は幸せだった――彼女達には頼れる人や親もいる――逆にまた、親もいない生徒もいるだろう。

 

「子供に辛い思いをさせるな……」

 

 そんな中、セシリアは千冬の言葉を聞いてある事を思い出した。それはセシリアも孤児であったからだ。セシリアは幼き頃、母親に英才教育を叩き込まれた。

 それは厳しくも、時には優しい母親だった。逆に父親もいたが彼は母親に媚びているしかないのと、そんな父親をセシリアは疎んでいた。

 セシリアがそうなったのもそれが原因だった――逆にISが誕生して、更に両親の仲はギクシャクしていた――三人でいる事はあまり無くなっていた。

 そんなある日、セシリアは両親を事故で喪った――あの時は何故か一緒に居たのだ。それはセシリアには判らないがセシリアは哀しみに暮れた。

 があるメイドがセシリアを支え、セシリアの為に母親代わりとしても支えてくれた。

 セシリアは改めて思った――今の自分がいるのは、両親やそのメイドのお陰だった――そして、自分は一人じゃない――自分には亡き両親が見守ってくれるのと、そのメイドが傍にいてくれたからだと。

 

「……私は幸せでしたわね……」

 

 セシリアは哀しそうに微笑むと、直ぐに何かを思ったのか頷くと、千冬に対し手を上げながら訊いた。

 

「織斑先生、お願いがあります!」

「ん、何だ?」

 

 千冬はセシリアを見ると、セシリアは答えた。

 

「あの赤ちゃんを一日だけ、私達が見ても構いませんか!?」

 

 ――なっ!? ――。セシリアの言葉に周りは驚く。しかし、セシリアは言葉を続ける。

 

「あの赤ちゃんは今独ぼっちです! それでは可哀想ですわ!? それに織斑先生の言う通り、一人では何も出来ませんし、少しでも二との温もりを与えたいですわ!」

「し、しかしオルコット、それは私もあの赤ん坊が可哀想なのは判るが何故、周りにも言うのだ?」

「少しでもあの赤ちゃんに、少しでも人の温もりを、誰かの優しさを少しでも与えたいのですわ! それに皆さんもお願いします!」

 

 セシリアは立ち上がり、周りを見る。

 

「昨日の時点で私に不快な思いを寄せている人もいるかもしれませんがお願いします! それに私は別にいい子である事をするような事はしませんし考えてもいません! 私の事は不快な思いを寄せたままでも構いません! ですが力をお貸しください! 私には一人で育てる自身はありませんが皆さんのと一緒なら出来ます! どうかあの赤ちゃんの為にお願いします、お願いします!!」

 

 セシリアは軽く頭を下げる。それはセシリアなりの懇願でもあった。本来なら赤ちゃんを見る事はしたくないがセシリアは違った。セシリアはあの赤ん坊が自分と同じ境遇である事に同情しているのだ。

 それはセシリアの強い気持ちでもあったがそれは誰の徳にもならない事は明らかだった。それでもセシリアは皆にお願いした。

 自分は罵倒されて構わない――だがせめて、子供には、赤ん坊には少しでも多くの人に愛情を注がれ、一人じゃに事を教えたいのと、温もりを与えたい――それはセシリアの切なる願いと、セシリアなりの優しさでもあった。

 そんなセシリアのお願いに周りは困惑する中、ある人物が口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 ――皆済まないが、セシリアのお願いを聞いてやれないか? ――と。

 

 

 

 

 

 




 次回、周りの優しい温もり……。

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