インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第13話

「クライバー、何故、赤ん坊を連れて来た? 普通なら警察に届ければいいだろ?」

 

 真耶が赤ん坊を見ている間、此処は生徒指導室――そこは問題を起こした生徒を指導する場所でもあったが現在、問題を起こした生徒がいた。

 その生徒はマイクであった。マイクは赤ん坊を連れて来た事で問題を起こしたのだ。その為彼は一夏の姉であり、担任でもある千冬が彼に問う。

 二人は生徒指導室に置かれている机と椅子があったが二人は向かい合う世に座っていた。が、何故か千冬の隣には、私服姿の壮年の男性が座っており、彼はマイクを寂しそうかつ疑問そうに見ていた。

 ――彼彼は誰だ? ――彼。マイクは千冬の隣にいる男性を怪訝そうに見ていた。彼は赤ん坊の事が気掛かりでもあったが千冬の話よりも、千冬の隣にいる男性を気にしていた。

 

「聞いているのかクライバー?さっきから何故学園長を見ている?」

 

 ――学園長? ――。マイクは千冬の言葉に眉間に皺を寄せる。しかし、彼は男性が学園長である事に驚いていた。

 ここは女子校であり、ISは女性にしか扱えない――その為、教師は全員女性であるのと、学園長も女性かと思っていたのだ。

 そんなマイクに男性は優しく微笑む。

 

「驚いているようですが織斑先生の言ってる事は本当ですよ? 私は轡木(くつわぎ )十蔵《じゅうぞう 》――この学園の用務員でもあり、学園長をも兼任しています」

「学園長か、アンタが?」

 

 マイクは十蔵を見て疑問に思う――この御時世、男性は女性に迫害されているが彼が学園長である事に驚きと、物腰が柔らかそうかつ優しそうな表情を浮かべている十蔵を見て何も言えなくなった。

 

「クライバー、学園長に失礼だろう? それよりも何故、警察に届け出なかった

?」

 

 千冬はマイクが学園長に疑問を抱く様な言葉を発した後、千冬は少し怒るがマイクに改めて指摘した。

 しかし、マイクは何故か黙る。

 

「…………」

 

 千冬の言葉にマイクは無言で目を逸らし、俯いた。なぜならマイクは警察を呼ばなかったのは、警察を頼らなかったのは、彼が警察その物を信じてはいなかったからだ。

 理由としては警察は市民を守る組織として認識されているが極一部は腐敗していた。警察が罪を犯し、身内が何かをやらかしたら強大な権力で揉み消す。

 警察は信用に値するのかをマイクは疑問と不信感を抱いていた。しかし、日本の警察は優秀と言われているが彼は警察を呼ばなかったのは、日本の警察もそんな奴がいるのではないかと思っていたのだ。

 日本だけではない、外国、特に白人警官が黒人を迫害し、殺害した事件も後を絶たなかったのだ。最悪な事に、それを咎める事も無い。

 彼は警察を呼ばない理由がそれでもあったが赤ん坊がコインロッカーに置き去りされたら、それを連絡したどうだ? 逆に自分を疑うだろうし、それは軽い事件だ――そう認識するだろう、と。

 マイクは警察を呼ばない事を千冬や十蔵に言わない中、十蔵は不意に口を開いた。

 

「織斑先生、此所は私に任せてください」

「学園長? どうしてですか?」

 

 千冬は十蔵の言葉に対し訊き返すが十蔵は答える。

 

「彼は青年であり、貴重な男性操縦者です――ですが男性であるのと、此所は同じ男性である私なら彼は話し易いでしょうから」

「しかし学園長、私はクライバーの担任です――此所は私にお任せください」

 

 千冬は引き下がらなかった。しかし、十蔵は千冬に対しある事を指摘した。

 

「織斑先生、確かに彼、クライバー君は貴方の受け持つクラスの生徒であり、彼の担任です――ですが貴女が受け持つクラスはクライバー君だけではありません――貴女には他の生徒も居ます」

 

 十蔵の言葉に千冬は瞠目した。が、十蔵の言い分は正しかった。何故なら千冬の生徒はマイクだけではない――彼女には一夏や箒、セシリアや他の生徒達もいる。

 彼女は、千冬はクラスの担任として、生徒を纏める教師としての自覚も無ければならなかった。

 

「織斑先生、貴女には教室に戻って他の生徒達を落ち着かせ下さい――クライバー君は私が責任もって連れて帰りますから」

「……判りました」

 

 十蔵の言葉に千冬は瞠目するが彼女は直ぐに表情を険しくし深く頷いた。理由としては千冬は学園長には逆らえないのと、千冬はクラスを受け持つ教師としての自覚もあったからだ。

 千冬は変わった――彼女は一夏を喪うまで周りの気持ちを考えず、そして一夏を喪った事で改めて周りの話しにも耳を傾ける様にもなったのだ。

 しかし、千冬は親しい者達にしか話を訊かないがそれには理由があった。だが今は生徒達を宥めるのが先であり、マイクは学園長に任せようと判断した。

 十蔵の、学園長の言う通り、男性には男性の方が良いのと、学園長なら彼は心を開くと思ったからである。

 

「では私はクラスの者達を見てきます――申し訳ありませんがこれで失礼します」

 

 千冬は立ち上がると、学園長に一礼し、今度はマイクを見た。マイクは今だ俯いていたが千冬は彼に言う。

 

「クライバー、私は自分のクラスに戻る――お前は学園長の質問にはちゃんと答えろ――それと……」

 

 千冬は少し間を置く様に黙るが直ぐに言葉を続けた。

 

「クライバー――お前は私のクラスの生徒であるが、私はお前を、大切なクラスの生徒の一人である事も忘れてはいない……それだけは覚えていてくれ」

 

 千冬の言葉にマイクは少しピクッとした。しかし、千冬はマイクを大切な生徒の一人としても認識していた。自分が受け持つクラスの生徒は大切な教え子達であり、その者達を信じていた。

 自分のクラスの者達は出来る――そう信じていた。それに千冬はマイクが赤ん坊を連れて来た事には驚いている物の、ある事を指摘した。

 

「クライバー、お前は赤ん坊を連れて来た事には驚いているが、警察に届け出なかった事には怒りが沸く――だがお前は正しい事をした――それだけは忘れるな――それにお前を信じている」

 

 千冬は彼に言った――それは彼を信じているのと、彼は優しい者ではないのかと思っていた。

 理由としては彼が赤ん坊を助けたのと、粉ミルクや天然水等を購入したのは赤ん坊の食料を確保する為ではないかと思ったからである。

 勿論、マイクは赤ん坊を救いたいのと、購入したのも彼なりの優しさがあったが彼はそれを言わなかった――否、彼はそれは恥ずかしいと思っていたからであり、警察に頼まなかったのは信じるに値するのかを疑問に思っただけである。

 マイクは千冬の言葉に何も言わないが千冬は再び学園長に一礼すると、指導室を出て行った。

 指導室にはマイクと、学園長の二人しか居なかった――それは重苦しい空気が流れたが学園長が不意に呟いた。

 

「さて……クライバー君?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、一夏がいるクラスは少し戸惑いの空気が流れていた。理由としてはマイクが赤ん坊を連れて来たのと、赤ん坊がコインロッカーの中にいた事に驚きを隠せなかったのだ。

 生徒達は赤ん坊を心配していた。いくら女尊男卑に染まったとしても赤ん坊がコインロッカーの中にいた事は驚くしかないだろ。

 逆にまた、赤ん坊を捨てた者に対して怒りをも表している者達も居た。

 

「赤ん坊をコインロッカーに捨てるなんて最低よ! それじゃあ赤ちゃんが可哀想よ!」

「そうよね!? 最近子供の虐待が多いのに、そんな事をするのは親じゃないわよ!」

「最近は死んでいる事が多いのにね!」

 

 生徒達は赤ん坊を捨てた親を非難する――そうだろう、捨てた事は赤ん坊を殺す様な者であり、赤ん坊を大事にしていない――それは虐待であるのと、親ではないと思っていた。

 逆にまた、赤ん坊を心配しているのか困惑している者達も居た。

 

「マイク……お前は何故」

 

 周りが親に怒りを沸く中、一夏は自分の席に着きながら頭を抱えていた。彼は赤ん坊の事も気にしていたがマイクの行動にも戸惑いを隠せないでいた。

 彼は何故赤ん坊を連れて来たのだろうか、何故警察を呼ばなかったのか、と――だが一夏は直ぐに気付いた。

 

「まさかマイクの奴……」

 

 一夏はマイクが警察に不信感を抱いている事に気付いた。理由としては彼が警察が腐敗している事で呼ばなかったのではないか、と。

 勿論それには理由があったが一夏はマイクの警察嫌いが災いした事と、想定外な出来事で後悔していた。

 一夏が悪い訳ではないが彼はマイクの行動を読めなかった事に後悔していた。

 

「(全く、どういうおつもりですかしらね?)」

 

 そんな中、セシリアは自分の席に着きながらマイクが赤ん坊を連れて来た事に怒りを覚えていた。彼女は女尊男卑に染まっているが特に

一夏とマイクがISを動かした事に怒りをも覚えていた。

 理由はセシリアは……刹那、セシリアの表情に影が差す。理由はセシリアは、彼女も赤ん坊を心配していたからである。

 セシリアが赤ん坊を心配しているのには理由があったが彼女は赤ん坊を自分と同じ境遇にいると思っていたからであった。

 そして、セシリアは不意に呟いた、それはセシリアなりの優しさと心配をも意味している。

 

 

 

 

 

 

 

 ――大丈夫なのでしょうか、それに可哀想……――と。

 

 

 

 

 




 次回、セシリアの気まぐれの優しさ。

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