インフィニット・ストラトス 迫害されし者達   作:NO!

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第12話

「……遅いな、マイク」

 

 あれから少し経った後、一夏は自分がいるクラスの自分の席に着きながら隣の席を心配そうに見ていた。その席はマイクが座っている席であるのと、マイクが遅い事を心配していた。

 理由としてはマイクがコインロッカーから荷物を取りに行った物の、何故か遅い事に心配していた。コインロッカーと言っても、この学園を行き来出来る駅に設けられている。

 普通なら直ぐに戻って来れる筈――なのに遅すぎる――一夏はマイクが、相棒を心配するがそれは彼だけであった。周りには生徒が居る物の、誰一人、マイク以外は来ている。

 授業の時間は未だであるが彼女達はほんの僅かな時間を有意義に過ごしていた。昨日の時点で知り合ったのと、今日話しかける者達もいた。

 と言っても交流とも言えるが友人としても接したいのだろう――逆に一人でいるのが好きな者もいるのも事実だった。例としてはセシリアがそうである。

 セシリアの性格は男性を見下す傾向があるからであり、そんな者とは関わりたくないはないのだろう。

 しかし、一夏には関係なかったが彼はマイクを心配しているのと同時に彼女の事も思い出していた。

 刀奈――彼女は一夏が逢いたかった人物であるが彼は刀奈とは昨晩、一緒に寝たのだ。寝たと言っても枕事や肉体関係は結んではいない。

 一緒に寝たいと言い出したのは彼女の方から言ってきたのだ。が、一夏は最初渋っていたが最終的には折れ、一緒に寝る事になったのだ。

 色んな意味で良い思い出になったが彼は少し恥ずかしいとも思っていた。一夏は刀奈と寝た事を思い出し顔を赤くするが首を左右に振る。

 煩悩を払おうとしていた。しかし、それは昨日とは言え、生新しい――が、そんな一夏を見ている者が居た。箒であった。

 

「一夏……」

 

 箒は一夏を見てそう呟くが彼女は未だ彼に話しかけられなかった。理由としては彼女は一夏と刀奈が付き合っているのではないかと思っていた。

 その為、彼女は失恋したと思い、泣いていた。それに話しかけられなかったのも彼に振られる恐怖があった為に、行動に移せなかったのだ。

 箒は一夏を見た直後、俯く。刹那、チャイムが鳴った。それは授業開始の合図と、警告をも意味している。

 そのチャイムを聞いて、生徒達は席に着く――中には既に席についている者達も居たがそれは別に良いだろう。

 すると、扉の方が開き、二人の教師が入って来た。

 千冬と、手に出席簿を持っている真耶だった。真耶は兎も角として、千冬は一夏を見て少し微笑む。一方、一夏を見て哀しそうかつ少し恥ずかしそうに俯く。

 二人は姉弟だが此所では教師と生徒の関係である。それを意味する様に千冬は凛々しい表情を浮かべるが真耶は教卓の上に立つと、出席簿を開く。

 

「授業を始める前に点呼しますね」

 

 真耶は嬉しそうに、そして点呼を取り始める。それは意味も無い様にも思えたが教師としては生徒が欠けていないかを確認する為でもあった。

 何気ない日常とも思えるだろう――この時までは……それは、マイクの番が来た時だった。

 

「マイク君、マイク・クライバー君?」

 

 真耶はマイクがいる席を見る。そこは机とイスしかなかったが真耶はマイクが居ない事に気付く。

 

「マイク君? 欠席ですか?」

 

 真耶は心配そうに呟くが周りは不思議に思っていた。勿論、セシリアや女尊男卑に染まった者達から見れば別に如何でも良いだろう。

 が、一夏はマイクが来ない事を心配したが彼はマイクから伝言を頼まれ、それを真耶に言おうとした。

 

「山田先生、実は……!」

 

 刹那、扉が開き、周りが扉が開いた事に気付くや否や扉の方を見やる――が、全員が驚いた。

 

「なっ!?」

「えっ!?」

「ふぇっ!?」

 

 一夏、千冬、真耶、箒、セシリア、クラスの女子達は様々な反応を見せるが全員、驚いていた。扉を開けた――と言うよりも、扉は自動式であるが扉の前に立ったのは、マイクであった。

 それだけなら別に良いし、驚く事は無かっただろう――しかし、驚いている理由はマイクではなく、マイクに両腕で抱き抱えられなからもスヤスヤと寝ている赤ん坊を見て驚いていたのだ。

 それだけなく、彼の腕にはオムツの袋や、もう片方の腕には何かが入っている袋があり、袋の中には、マイクが購入したであろう哺乳瓶や、飲み物でもある粉ミルク、一本の二リットルの天然水……他には手ぬぐい等があった。

 しかし、彼はマイクは周りを見て、眉間に皺を寄せる。

 

「何だよ? 遅刻した事は謝るよ」

「ま、マイク君、そ、その赤ん坊はどうしたんですか!?」

 

 真耶は少し戸惑いながらも赤ん坊を指差すがマイクは少し呆れる。

 

「静かにしてくれ、此奴は今寝てんだろうが?」

「す、すみません……じゃなくて、その赤ん坊はどうしたんですか!?」

 

 真耶は驚きながらも指摘した。だが、真耶はマイクが抱き抱えている赤ん坊がマイクの子ではないかと疑っていた。真耶だけではない――周りもそう思っていたが真耶は別の意味でも怯えていた。

 マイクが赤ん坊を誘拐したのではないか、と。勿論、マイクはそんな事をしないがマイクは答えた。

 

「此奴は居たんだよ……コインロッカーの中にな」

 

 マイクは少し怒りながら言った。そして、それを聞いた真耶は大半の女子達は驚きのあまり、叫んだ。

 

「え……えぇぇぇっーーーーっ!?」

 

 女子達の叫び声は教室内に木霊する――刹那、その叫び声を聞いた赤ん坊は驚きのあまり、目を覚ますと、大きな声で泣いた。

 

「う、ウェーーーーーーン!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫でちゅよ〜〜もう誰も叫びませんでちゅからね〜〜」

 

 あれから少し経った後、此所は教員室――教員室と言っても女性しか居なく、男性から見れば入りづらい立場だろう――しかし今は色んな意味でも明るくも少し困惑の空気が漂っていた。

 そこは教員室の、教員である真耶が使っている机――そこには真耶と、近くには別の女性教員が三、四人居た。その教師達は科目関係であるのと受け持つクラスが無いからであった。

 それに彼女達は今、真耶に両腕で優しく包み込む様に抱き抱えられながらあやされている赤ん坊を見て、安堵とやるせない気持ちで一杯だった。

 彼女達は真耶が赤ん坊を連れて来た事には驚いたが、真耶はマイクが赤ん坊を連れて来たのと、赤ん坊がコインロッカーに預けられている形で置き去りにされていた事を教えられ、怒りをも感じていた。

 だが今は、真耶に抱き抱えられている赤ん坊を見ていた。赤ん坊は真耶の言葉を理解したのかは判らないが少し笑っていた。

 ――キャッ、キャッ――。

 赤ん坊は真耶を見て笑うが真耶は哀しそうに笑う――何故なら真耶は赤ん坊が、この穢れない存在がコインロッカーに入っていた事に戸惑いと怒りを感じていた。

 戸惑いは、赤ん坊がコインロッカーに入っていた事だった、理由としてはコインロッカーは空気が少なく、命の危険もあった。それだけでなくもう一つ、赤ん坊が無事である事に安堵していた。

 これはマイクにも感謝しているがマイクは誘拐的な事をやらかした。それに今、彼は千冬やとある人物と共に指導室に居る。授業の方は自習になったが赤ん坊の事を思えばどうって事は無かった。

 しかし、怒りの方は、この赤ん坊を――赤ん坊を捨てた者――つまり保護者に怒りを感じていた。何故捨てたのだろうか? 真耶は疑問に思っていた。

 赤ん坊は穢れなく、次世代を担う存在だ――なのに何故捨てるのだろうか? それにこの子は未だ良かった――否、運が良かったのだろうか?

 何故なら真耶は、この赤ん坊を見てある事を思い出す。赤ん坊の死体遺棄事件――その事件は後を絶たなかった……それにその事件は大抵親が容疑者であり、親が身勝手な理由で虐待し、殺したのだ。

 この赤ん坊の場合はコインロッカーに捨てられていた――他に同じ様な事件があったが大抵は既に亡くなっている。

 痛ましい事件ばかりだった――否、それは大半だが中には生きている赤ん坊も少なくはない。

 逆にまた死んだ子は二度と戻ってこない――真耶はそう思うと赤ん坊を抱き締める。

 この子は生きてる――この子はマイクが助けたのだ――真耶はマイクに感謝もしたが逆にまた、この子は親に捨てられた事を知らないのだ。

 真耶はそう思うと目を閉じ涙を流した。この赤ん坊を思うと、そう思わずにはいられなかった。

 そして真耶はこう思った――せめて、この子には幸ある未来、と切に願い、こう言った。

 

 

 

 

 

 

 ――大丈夫よ、大丈夫だから――と。

 

 

 

 

 

 

 

 




 次回、千冬、マイクに指摘する。

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