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それでは今回もよろしくお願いします。
「まったく、貴方は何を考えているのですか!」
「…………」
「わざわざ、お父さんと一緒にアメリカまでついてくるなんて……常識がなさすぎます。本当に八幡はハレンチですね。知っていましたけど」
「…………」
「しかも、私達と同じホテルを取るなんて行動力も呆れます。その行動力をもっと別のことに回せないのですか?」
「あの、海未さん……」
「何ですか?話はまだ終わっていませんよ」
「いや、この態勢で説教とか言われても……」
現在、俺は美空さんが取った部屋のソファーに腰かけているのだが、海未は……俺の膝の上に、向かい合うように腰を下ろし、至近距離に顔を寄せている。さっきから、彼女が口を開く度に、鼻先に息がかかり、こそばゆい。あと、太股の感触が非常によろしくない。
しかし、彼女はお構いなしのようだ。
「何ですか?文句は言わせませんよ。しばらくこうしていてもらいます。仕方ないですから、貴方は私の頭を撫でながら、思いきり抱きしめていてください」
まだ最後に会ってから二日も立っていないのに、何でアメリカで再会したというだけで、この子はもぎゅっとloveで接近して来ますかね。正直言うと、理性を保つのに一苦労なのだが、いつ理性を失っても、俺の責任ではない気がする。
そんな事を考えながら、海未を思いきり抱きしめる。
言い出しっぺの彼女は顔を真っ赤にした。
「っ!は、八幡……その……胸が……」
浅い胸に顔が少し触れるが、気にしてやらない。
「こういう時は、『ごちそうさまですっ!』っていうのが常識だぞ」
「嘘つき……」
そのままそっと、さらさらの長い髪に触れる。撫でる度に、甘い香りが部屋の中を満たし、いつもと変わらない場所にいる気さえしてくる。
「海未……」
「は、八幡……」
「……部屋、戻らなくていいのか?」
冷や水をぶっかけるような俺の言葉に、海未はきっと目を鋭くし、声を低くした。
「今、聞き捨てならないことを言いませんでしたか?」
「い、いや、ほら……あまり帰りが遅いと心配されるんじゃないかと……」
「安心してください。あと一時間くらいは大丈夫です。手は打っておきましたから」
「…………」
「手は打っておきましたから」
「そ、そうか……」
そう言われちゃ、引き下がる理由はない。
何をどうしたかは聞かないでおこう……。
「……その、あれだ……しばらく、このままで話さないか?」
「ええ、貴方が望むなら」
オレンジの照明がぼんやりと照らす海未の優しい表情を見ながら、俺達は取り留めのない話を、一時間目いっぱい続けた。
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