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それでは今回もよろしくお願いします。
「ひどい目にあったな……」
「ええ、まったく……」
東條さんからの連絡で、ようやく無駄足だったことに気づき、ホテルに戻った。ちなみに、何があったかは割愛させていただく。男二人のしょうもない冒険譚など、ラブコメには不要なのだ。
回転扉をくぐり、ロビーの高級感あるシャンデリアの明かりにほっとすると、背後から人の気配を感じた。
「おかえりなさい」
「ああ、ただい……ま……」
「…………」
振り向くと、そこにはにっこり笑顔の美空さんがいた。笑顔は笑顔なのだが、威圧感がハンパなく、気圧されてしまう。
「あなた。わざわざ八幡君を連れて、何をしているのかしら?」
「あ、いや、これは……」
さすがは海未の母親、身に纏う覇気も覇王色ときた。てゆーか、俺も逃げ出したいんですけど。
すると、優しげに細められた目がこちらを向き、声をかけられた。
「八幡君」
「は、はい……」
「私はこの人と夜通し話がありますから、悪いけど私が取った部屋に泊まってもらえるかしら?」
そう言いながら、鍵を渡してくる。
俺はそれをしっかりと受け取った。
「はい」
「待ってくれ比企谷君!私を置いていかないでくれ!苦楽を共にした仲だろう?友よ!」
「……すいません」
美空さんに首根っこを掴まれた海未の父親に背を向け、先にエレベーターへと向かった。
「ふぅ……」
想像していたものとは遥かに違う海外旅行の日程に疲れたが、これも貴重な経験なのだろう。
荷物を置き、ベッドに寝転がると、このホテルのどこかにいる海未の顔が浮かんできた。
あいつの事だから、今頃どっかスタジオを借りて、皆をレッスンに引っ張り出しているんじゃないだろうか。
……会いたい。
ものすごく会いたい。
つまらない理由付けなどする必要もないくらいシンプルな気持ち。単純明快な答え。
どこに行けば会えるのだろうか。
もし会いに行ったら、どんな顔をされるだろうか。
ふわふわした妄想や不安が頭の中を漂い、一分一秒たりともじっとしていられない気持ちになる。
正直になりすぎた心は、自然と体を動かし、俺は当てもなく部屋を飛び出した。
「「え?」」
偶然にも同時に開いた向かいの扉。
出てきたのは、なんと海未だった。
見間違うはずもない。
さっきまでずっとその顔が見たかったのだから。
「……お、おう」
「…………」
片手を上げ、挨拶をしてみたが、返事がない。
彼女の顔は固まったままだ。
「……う、海未……」
呼びかけてみると、やがて彼女は震えだし……
「きゃあああああ~~~~~っ!」
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