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それでは今回もよろしくお願いします。
飛行機が飛び立ち、あとは眠ってる間にアメリカに着いちゃう!という段階になったが、神様はどうもイタズラ好きらしい。
「全然気が抜けないんですが……」
「仕方あるまい。ここしか空いてなかったんだ……」
よりにもよって海未達の真後ろの座席になるとか……。
変装しているとはいえ、極力顔を見られないよう、窓の外の景色に目をやりながら、前の席にも意識を向けていると、東條さんの楽しげな声が聞こえてきた。
「ねえねえ、海未ちゃん♪」
「はい?何でしょうか……」
「愛しの彼と離れ離れが寂しい?」
「ちょっ……い、いきなり何を言い出すのですか!」
「ん~?」
「……もう……否定はしませんけど」
恋人としては嬉しい反応だが、隣から殺気をビシバシ感じるので、早々にこの話題は打ち切って欲しい。てか、東條さんはわざとやってんだろ?そうなんだろ?
「ふふっ、素直でよろしい♪そういえば、二人って初対面の頃はどうだったの?」
おいおい、マジで勘弁してくれ。海未の父親が眠ったふりして前のめりになり、頭を前の座席の背もたれに近づけているから。この人、一言一句聞き逃さないつもりだ。しかも、俺と海未の初対面は……
「そうですね……初対面の時は……」
海未は躊躇うように話し始める。いや、さすがにそのまま言ったりは……
「……実は、股間に顔を埋められました」
「……へ、へえ~。まあ……あるよね」
ねえよ。てか、そのまま言っちゃうのかよ。
「それで言い争いになり、ついには頭突きをしてしまったんですけどね。ふふっ、今となってはいい思い出です」
「あはは……」
「それからというもの、会う度に胸を触られたり、着替えを覗かれましたね。もちろん、全て事故なんですが」
「…………」
止めて!本当に止めて!隣からの覇気で死んじゃうから!
体を起こした海未の父親は、小声だが妙に重い声で話しかけてきた。
「比企谷君」
「は、はい……」
「アメリカに着いたらゆっくり話し合おう」
「はい……」
アメリカに到着してからは、駆け足で先にタクシーに乗り、ホテルに到着した。チェックインを済ませ、すぐに動けるようにするためだ。
しかし、ここで思わぬトラブルに直面した。
「ふむ、海未達はやけに遅いな。他の子達は到着しているというのに……」
「……渋滞に巻き込まれたんですかね」
サングラスに帽子というありふれた変装をして、ロビーにいるのだが……うん、最早ストーカーじみてますね、これは。今さらながら、何しに来たんだ感ハンパない。
いや、それより今は海未が……
「穂乃果。場所はちゃんと伝えた?」
「うん」
「もしかして、綴り間違えたんと違う?確か……」
東條さんが綴りを書き、高坂さんが確認する。
「……あ」
「「なにぃっ!?」」
高坂さんの反応に、俺達は慌てて立ち上がる。
もちろん、周りの注目を集めた。
「え?え?」
「「…………」」
μ'sメンバーも何事かとこちらを見ていたが、俺達は黙ってホテルを飛び出した。
5分後……。
「あ、海未……ちゃん」
「ううっ……ぐすっ……はちまぁん……」
「あはは……凛ちゃんがホテルの名前覚えてくれてたからよかったよ……」
「あらら……二人共、入れ違いになっちゃった」
「希、どうかしたの?」
「ううん、何でもないよ」
数時間後……。
「あの……」
「どうした、比企谷君?」
「俺達はどこにいるんですかね……」
「奇遇だね。私も同じ事を考えていた」
俺達は異国の知らない街を当てもなく5時間以上彷徨い続けた。
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