捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第95話

 

「海未ちゃん、大丈夫?」

「ええ……」

 気遣いの言葉をかけてくれることりに何とか笑顔を返し、飛び立っていく飛行機に目を向ける。

 飛行機に乗るのは割と楽しみなのですが、やはり不安はあります。やはりもう一度八幡に電話を……いえ、いけません園田海未。最近、彼への甘えが度を超えている気がします。あんなに励ましてもらったではありませんか。

 それに……帰ったら、彼との遊園地や水族館やフルマラソンが待っています!

 おっといけない。つい頬が緩んでしまいましたね。

「…………!?」

 不意に視線を感じ、振り向く。

 だが行き交う人波の中にそれらしい人影は見当たりませんでした。

 ラブライブ優勝の影響もあり、街で声をかけられる事も増えましたから、その所為かもしれません。ステージの上での注目はクセになってしまいましたが、それ以外では慣れないですね。

 私は意識を遠い異国の地に向けた。

 

「あ、危ねえ……」

「間一髪だったな、さすがは我が娘……」

「いや、見すぎですから……」

「し、仕方ないだろう……私服姿の海未は可愛いだろう?な?」

「……それはそうですけど」

 俺と海未の父親は、柱の陰で安堵の息を漏らす。たまに向けられる冷たい眼差しはきっと気のせいだろう。

 別に俺達は見送りに来たわけではない。

 その証拠に、隣には二つの大きなスーツケース。

 そう、俺達は今からアメリカに行く……。

 事の発端は、先日の海未の父親からの電話だ。

 

「比企谷君、アメリカに行かないか?」

「はい?」

「アメリカに行かないか?」

「いや、行きませんけど……」

「ま、待ってくれ。話を聞いてくれ。君も心配だろう?海未がアメリカに行くなんて……」

「…………」

 心配じゃないといえば嘘になる。なんならついて行ってやりたいくらいだ。

「そうだろう?ついて行きたいだろう!?」

「いや、心読まないでくださいよ……」

「安心してくれ。二人分のチケットは既に手配してある」

「安心する要素が見当たらないんですけど……つーか、奥さんと行けばいいんじゃないですか?」

「ふむ……妻には反対されたのだ。過保護すぎると……」

「はあ……」

 まあ、当然だろう。海未自身も反対するだろう。

「……今回は諦めた方が……」

「比企谷君」

「?」

「海未と見るニューヨークの夜景は……綺麗だろうなぁ」

「…………」

 

 俺は決して下心でここまで来たんじゃない。そう、全てはμ'sの……海未の安心安全な旅を願っての事で……。

「ほな二人共、見つからんようにね♪」

「「…………」」

 こうして、九人+二人の賑やかな旅が始まりを告げた。





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