残すところ、ラブライブ決勝と
「あ、もしもし八幡?」
「……おう」
「もう寝てましたか?」
「いや、読書してだけだ。むしろ、そっちがもう寝てると思った」
「ふふっ、実は今学校にいるんですよ?「ひっきがやくーん!」あ、穂乃果!」
一瞬、何かあったのかと思ったが、受話器越しに楽しげな様子が伝わったので安堵する。雪で帰れなくなったかと思ったじゃねーか。天気予報で東京は今日、明日晴れだと知ってたけれど。
「ふう……まったく、明日は来れそうですか?」
「ああ、大丈夫だ。それよか……風邪ひくなよ?」
「ええ。夫が観に来るのですから。素晴らしい結果を皆と残してみせます」
「いや、夫て……」
「今でもはっきり思い出せます。貴方がお嬢さんを俺にください!とお父さんに頭を下げた事を」
「いや、言い間違いというか、あの日あなた怒ってたんですが……」
「でも……いつか本当にそうなればいいと思っていますよ」
「……そうだな」
「ただ、八幡が大きな胸が好きすぎて心配です」
「ご、誤解だっての……」
「優木あんじゅさんや希、絵里、花陽」
「…………」
「おかしいですね。シングル『僕とのLIVE 君とのLIFE』の通常版のジャケットでは私が一番胸が大きく見えるのですが……」
「所詮、凛達と同じ穴の狢にゃ」
「にこ達と大人しく三銃士でいるにこ」
「うるさいですよ、二人共!」
「まあ、気にすんな……」
「そうですね……ラブライブ決勝前にする話でもありませんね」
「ああ、もう遅いから寝た方がいい」
「そうですね。では、また明日……」
「「……おやすみ」」
会場前は、以前よりも緊張感が漂い、いるだけで何だか背筋が伸びてくる。海未の両親も観に来ると言っていたが、人が多すぎて見つけづらい。座席は指定なので、そこで合流すればいいのだが。
キョロキョロしていると、見知った顔を見つけ、思いきり目が合う。
「あら、お久しぶり」
「……どうも」
相変わらずのオーラを撒き散らして登場したのは、A-RISEの三人である。一応、眼鏡や帽子を着用しているが、変装ではなくオシャレアイテムにしか見えないせいで、たまにチラ見していく人もいる。
しかし、本人達は大して気にしていないようで、自然と並んで歩くことになった。
綺羅さんは普段と違い、年相応の好奇心たっぷりな瞳で、顔を近づけ、ヒソヒソ声で話し始めた。
「愛しの彼女の応援に来たけど、知り合いと合流出来なくて、困ってるっていう顔ね。もしかして、彼女の御両親と観戦とか?」
「…………」
思わず『おにただ』と言いたくなるくらいの洞察力。使い方合ってるかわからないけど。
綺羅さんは俺のリアクションによろめいた。
「え?ま、まさか、あなた達……え?御両親に挨拶?それってどこの世界?」
「落ち着け、ツバサ」
「ふふっ、まだツバサの春は遠そうね」
何故だろう……一瞬、綺羅さんから平塚先生と同じ匂いを感じた。
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