捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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 残すところ、ラブライブ決勝と


第92話

 

「あ、もしもし八幡?」

「……おう」

「もう寝てましたか?」

「いや、読書してだけだ。むしろ、そっちがもう寝てると思った」

「ふふっ、実は今学校にいるんですよ?「ひっきがやくーん!」あ、穂乃果!」

 一瞬、何かあったのかと思ったが、受話器越しに楽しげな様子が伝わったので安堵する。雪で帰れなくなったかと思ったじゃねーか。天気予報で東京は今日、明日晴れだと知ってたけれど。

「ふう……まったく、明日は来れそうですか?」

「ああ、大丈夫だ。それよか……風邪ひくなよ?」

「ええ。夫が観に来るのですから。素晴らしい結果を皆と残してみせます」

「いや、夫て……」

「今でもはっきり思い出せます。貴方がお嬢さんを俺にください!とお父さんに頭を下げた事を」

「いや、言い間違いというか、あの日あなた怒ってたんですが……」

「でも……いつか本当にそうなればいいと思っていますよ」

「……そうだな」

「ただ、八幡が大きな胸が好きすぎて心配です」

「ご、誤解だっての……」

「優木あんじゅさんや希、絵里、花陽」

「…………」

「おかしいですね。シングル『僕とのLIVE 君とのLIFE』の通常版のジャケットでは私が一番胸が大きく見えるのですが……」

「所詮、凛達と同じ穴の狢にゃ」

「にこ達と大人しく三銃士でいるにこ」

「うるさいですよ、二人共!」

「まあ、気にすんな……」

「そうですね……ラブライブ決勝前にする話でもありませんね」

「ああ、もう遅いから寝た方がいい」

「そうですね。では、また明日……」

「「……おやすみ」」

 

 会場前は、以前よりも緊張感が漂い、いるだけで何だか背筋が伸びてくる。海未の両親も観に来ると言っていたが、人が多すぎて見つけづらい。座席は指定なので、そこで合流すればいいのだが。

 キョロキョロしていると、見知った顔を見つけ、思いきり目が合う。

「あら、お久しぶり」

「……どうも」

 相変わらずのオーラを撒き散らして登場したのは、A-RISEの三人である。一応、眼鏡や帽子を着用しているが、変装ではなくオシャレアイテムにしか見えないせいで、たまにチラ見していく人もいる。

 しかし、本人達は大して気にしていないようで、自然と並んで歩くことになった。

 綺羅さんは普段と違い、年相応の好奇心たっぷりな瞳で、顔を近づけ、ヒソヒソ声で話し始めた。

「愛しの彼女の応援に来たけど、知り合いと合流出来なくて、困ってるっていう顔ね。もしかして、彼女の御両親と観戦とか?」

「…………」

 思わず『おにただ』と言いたくなるくらいの洞察力。使い方合ってるかわからないけど。

 綺羅さんは俺のリアクションによろめいた。

「え?ま、まさか、あなた達……え?御両親に挨拶?それってどこの世界?」

「落ち着け、ツバサ」

「ふふっ、まだツバサの春は遠そうね」

 何故だろう……一瞬、綺羅さんから平塚先生と同じ匂いを感じた。





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