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海未の父親が放つ覇気とも殺気ともとれる圧倒的なオーラに飲まれそうになるが、ぐっと奥歯を噛みしめ、しっかり相手の目を見据える。日頃から海未に、学校では雪ノ下に鍛え上げられた挨拶スキルを発揮する時がやってきた……!
俺は一歩踏み出し、頭を下げた。
「初めまして。比企谷八幡と申しましゅ!」
あー、噛んだー、っべーわー。
後ろで海未の吹き出す声が聞こえる。おい。
頭を下げているので表情は見えないが、親父さんは無言だ。しかし、ここまで来た以上、引き下がる気はない。
俺は頭を下げたまま、先を続けた。
「お嬢さん……を……」
自分でも信じられないくらいに足が震え、唇が渇き、言葉が上手く出てこない。交際宣言がこんなにも緊張するものだと思わなかった。
「八幡……」
海未が小さな声で名前を呼ぶ。
その声に背中を押されるように、俺は声を張り上げた。
「……海未を俺にください!!」
『…………』
あれ?
なんか違う気が……。
「は、はち、はち……八幡!?」
「あらあら……」
「……う、海未がけ、け、結婚……」
自分の言い間違いに気づき、顔を上げると、海未の父親は立ったまま気絶していた。
美空さんの提案により、俺は園田家で夕食をいただくことになった。
ちなみに、海未はさっきから湯気が出てきそうなくらいに顔を真っ赤にして、あわあわしている。
「ま、ま、まったく貴方は……なんであの場面で言い間違えるのですか!もう、馬鹿……」
「いや、な、何でだろうな……」
「…………」
「ふふっ、海未ったら照れちゃって」
「ち、違います!」
「…………」
海未の父親は黙って俺を見ている。うん、めっちゃ恐い。
しかし、言ってしまったものはどうしようもない。勇気、本気、素敵、前向きが鍵なのである。
「比企谷八幡君」
「は、はい……」
突然、先手を打つように名前を呼ばれ、肩がびくんと跳ねる。
「……海未との交際は認めよう。だ、だが……まだ結婚は早い」
「お父さん!あれは八幡が間違えただけです。私達が交際している事を伝えようとしたんですよ」
海未の言葉を聞いて、海未の父親はわかりやすく、顔を弛緩させた。
「え?そ、そうか……よかった~……」
「もう……」
「まあ、海未はしっかりしているし、最近よくあるできちゃった結婚とかしたりしないよな、あははは!」
「するわけないじゃありませんか。何事も順序は大事です。ふふっ」
「はっはっはっ!」
「もう、お父さんったら……」
何故だろう……。
今、壮大な前振りが行われている気がする。まあ、気のせいでしかないだろうが。
そこで、穏やかな笑みを湛えた美空さんから声をかけられる。
「八幡君」
「はい……」
「海未を、よろしくね」
「……はい」
そう。油断していたのは俺だけではない。
この時、美空さん以外は、実際にそうなるとは思っていませんでした。
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