捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第89話

「え~!まだ買ってないのぉ!?」

「はい……」

 明日のバレンタインデーに八幡へ渡すプレゼント。

 ああでもない、こうでもないと堂々めぐりしてしまい、未だに何も買えていません。いつから私はこんなに優柔不断になってしまったのでしょうか?

「普通にチョコ買って渡すじゃダメなの?」

「だって……」

 そう、おそらくこの感情が一番、プレゼント選びの足枷となっています。

「何?」

 首を傾げる穂乃果に、少し恥ずかしいのですが、言うことにしました。

「……やっぱり、特別なものにしたいじゃないですか」

「…………」

 彼と恋人同士になって、初めてのバレンタインデー。今、手作りチョコに割ける時間がなくとも、何か渡すのなら、特別なものを渡したい。

 私の言葉を聞いた穂乃果はポカンとしていました。

「海未ちゃん……」

「何ですか?」

「ぎゅ~~~っ!」

「ほ、穂乃果!?」

 何故か穂乃果が思いきり抱きついてきて、少し苦しいです。

「海未ちゃん、可愛いよ海未ちゃん!」

「だから一体どうしたというのですか!」

 

 数分後……。

「皆、プレゼントを考えよう!」

『お~!!』

 μ'sメンバーが部室に集合して、大きく拳を突き上げていた。

「何でこんな大事に……」

「ほら、皆で意見を出しあえばきっといいアイディアが浮かぶよ!それに早く決めた方が、練習に集中できるよ!」

「まあ、それもそうかもしれませんね」

「じゃあ、花陽ちゃんから!」

「お米、とか……」

「ブッブーだよ!はい、凛ちゃん!」

「ラーメンにするにゃ~!」

「アウトだよ!はい、にこちゃん!」

「晩御飯でも振る舞えばいいじゃない。得意料理は?」

「炒飯と餃子です」

「あまりバレンタインデーっぽくないわね」

「余計なお世話です!」

「真姫ちゃんは何かない?」

「う゛ぇえ!?わ、私?」

「真姫ちゃんモテそうだもんね♪」

「え…………スとか」

「何?」

「キス……とか……ああ、もうイミワカンナイ!!」

「海未ちゃん、キスしてあげれば?」

「そんな……」

「やっぱりまだ恥ずかしい?」

「そりゃそうよ。この前みたいな雰囲気にならないと」

「いえ、その……接吻は会う度にしているので、大切な儀式とは思いますが……やはり別のものを……」

『…………』

 何故皆固まっているのでしょう?

「そ、そうよね~キスくらいするわよね~」

「するチカ」

「ちなみに何回くらいしたん?」

「え?か、数えてなんか……!」

「ん~?」

 希は手をわしわしさせ、にじり寄ってくる。

「わ、わかりましたよ。…………い」

「え?何回って?」

「287回、です」

『…………』

 また皆が固まってしまいました。

「ちょっと……いくら何でも多すぎない?あの二人って週1で会うか会わないかじゃないの?」

「あわわ……海未ちゃんが……大人になっちゃってる……」

 どうしたのでしょう。恋人同士が接吻を交わすのは当たり前のことで……もしかして少ないのでしょうか?

 悩んでいると、絵里がそっと肩に手を置いてきました。

「海未、いい方法があるわよ」

「絵里……でも、貴方は……」

「大丈夫よ。もう吹っ切れたわ。そろそろAFTER STORYも更新されるし」

「何の話ですか?」

「こっちの話よ。それより、二人にとって最高のプレゼントは……」

 私は絵里の話に、真剣に耳を傾けた。

 





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