それでは今回もよろしくお願いします。
1月も終わりに近づき、もうすっかり年明け気分は抜け、街はいつも通りの賑わいを見せていた。とはいえ、秋葉原の街は年中賑わっているのだが。
何だかんだ言って、この人混みも半年前よりは慣れてきた気がする。
そう、彼女を少しだけ早く見つけられるくらいには……
「あ……八幡、こっちです!」
「おう」
先に見つけたのはこっちのはずなのに、目が合った途端に声をかけられ、何だか先を越された気分だ。
こちらに向けられる笑顔につられて、自然と駆け足になり、海未の元へ駆け寄ると、何故か彼女はくすくすと笑いだした。
「どした?」
「いえ、八幡らしくないと思いまして……ふふっ」
「いや、めっちゃ俺らしいだろ。彼女目指してひたむきに走る姿とか……」
「そうですね。そのとおり」
「聞き流してんな……」
「それより八幡。今日はどこにしますか?」
「ああ……静かで二人っきりになれる場所の方がいいだろ」
「そ、そそ、そうですね……」
何故そこで顔を赤らめるんですかね。
「……海未?もしもーし、海未さん?」
「は、破廉恥です!」
「何がだよ……」
最近、彼女のようすがちょっとおかしいのだが…。
少々話がずれたが、今日会うことにしたのは、お互いの進路を報告し合うためだ。進路に関しては、お互いに思うまま選んだ方がいいという理由で、相談はしなかった。
とはいえ、現状を考えれば目指すべき道は一つしかなかった。
結局、俺達はこの前のファミレスに来ていた。
お互いに肩の力を抜いた状態で話し合いたかったからかもしれない。
そして、俺の答えに海未は目を丸くした。
「貴方が……東京の大学に?」
「ああ」
志望している大学をスマホで表示して彼女に見せる。
「ここは……私と同じ……」
「……ああ」
「でも貴方は……」
「これが俺にとっての一番だ。なんつーか、俺にはまだはっきりやりたい事がない」
「…………」
「でも……お前となら見つかると思ってる」
一年前の自分なら考えもしなかった事。
大切な誰かと同じ景色を見て、同じ時間を過ごす事で何かが見えてくる。
それを海未は教えてくれた。
「本当に……いいのですか?」
「……お前と、いれるなら、な」
「あ、ありがとうございます……では、貴方が東京に来た暁には、私が面倒を見て上げましょう」
「……たまに炒飯と餃子を作ってくれたらありがたい」
「他にも作れますよ!」
「む、無理すんな……?」
「ほう……そういう事を言うなら……」
海未がコーヒーに口をつけ、ひと息ついたのと同時に、脚に何かがくっついた。
「……う、海未?」
「どうかしました?」
「いや、どうしたも何も?」
海未の細い脚が俺の脚に絡みつき、肉食獣の舌のように舐め上げてくる。
力の強弱、動きの緩急が絶妙で、コーヒーの苦みを忘れさせられるくらいにぞくぞくと刺激された。
……これはやばい。語彙力が抜け落ちそうなくらいやばい。
「う、海未……そろそろ……」
「反省するまではやめません」
やっぱりわざとじゃねえか。
ま、まあ、もう少しだけなら……。
「ね、ねえ、あのカップル……足で乳繰りあってるよ!」
「さすが東京……」
「マジひくわー」
「「…………」」
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