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それでは今回もよろしくお願いします。
「……雪、また降ってきたな」
「ええ」
昼間は降ったり止んだりだった雪も、日が沈んでからは本格的に降り積もり、街を徐々に白く染め上げていた。
俺達はパレードは見ずに、観覧車を降りたら、そのまま帰路につく事にした。話し合って決めたわけでもなく、自然とそうなっていた。
途中、繋いだままだった手も、通常の繋ぎ方から、所謂恋人繋ぎになっていて、これまでとは違った形で温もりを分け合っていた。
「八幡」
「どした?」
「いい一年、でしたね」
「……あと、3時間ぐらい残ってるけどな」
「じゃあ、もっといい一年にできますね」
「そう、だな」
「来年はさらに鍛えてあげますよ」
「え?そっちかよ……」
「そっち、とは?」
「いや、そりゃあ、色々あんだろ。こ、恋人同士なら……」
「っ!?な、な、何を破廉恥なことを考えているのですか!」
「待て。俺は……」
「言い訳は聞きたくありません。ライブの時も優木あんじゅさんの胸を何度も見ていましたね」
「み、見てねーし……」
「嘘は通じませんよ。舞台袖から確認してました。28回見てましたよ」
「…………」
思わず『うぐぅ……』と呻きそうになった。天使の羽が付いたリュックを用意しておくべきだったな。雪降ってるし。
「やっぱり貴方は破廉恥です」
「いや、ここ最近は絶対にお前の方がはれん……」
「削ぎ落としますよ」
「ごめんなさい」
どうやって?なんて恐くて聞けない。
「まったく……一年の終わりだというのに……ふふっ」
海未が吹き出したのに合わせて、こちらも頬が緩む。
「何やってんだろうな、俺達……」
「ええ、本当に。あ、もう着いたみたいですね」
歩きながら話していたら、あっという間に我が家に到着していた。
「お、お邪魔します」
「ただいまっと」
二つの挨拶に対して返ってくるものはない。
親父と母ちゃんは年末だというのに仕事があり、小町は友達と初日の出を見に行くそうだ。年末に家族が揃わないのは寂しくもあるが、こうして二人っきりになれたことは、やはり嬉しい。
心の中で三人に『よいお年を』と告げた俺は、親父と母ちゃんのために買った栄養ドリンクを冷蔵庫に入れ、ポットのスイッチを入れ、お湯を沸かす。
「コーヒーでいいか?」
「あ、はい!」
海未はリビングでコートを脱いでから、やけにそわそわしていた。外で冷えたにしても、顔が赤い。
「……トイレか?」
「違います!……あの……」
「?」
いまいちはっきりしない海未の反応に首を傾げていると、彼女は深呼吸して、何か決心したようにはっきりと告げた。
「シャワー、借りてもいいですか?」
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