捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第82話

 

「……雪、また降ってきたな」

「ええ」

 昼間は降ったり止んだりだった雪も、日が沈んでからは本格的に降り積もり、街を徐々に白く染め上げていた。

 俺達はパレードは見ずに、観覧車を降りたら、そのまま帰路につく事にした。話し合って決めたわけでもなく、自然とそうなっていた。

 途中、繋いだままだった手も、通常の繋ぎ方から、所謂恋人繋ぎになっていて、これまでとは違った形で温もりを分け合っていた。

「八幡」

「どした?」

「いい一年、でしたね」

「……あと、3時間ぐらい残ってるけどな」

「じゃあ、もっといい一年にできますね」

「そう、だな」

「来年はさらに鍛えてあげますよ」

「え?そっちかよ……」

「そっち、とは?」

「いや、そりゃあ、色々あんだろ。こ、恋人同士なら……」

「っ!?な、な、何を破廉恥なことを考えているのですか!」

「待て。俺は……」

「言い訳は聞きたくありません。ライブの時も優木あんじゅさんの胸を何度も見ていましたね」

「み、見てねーし……」

「嘘は通じませんよ。舞台袖から確認してました。28回見てましたよ」

「…………」

 思わず『うぐぅ……』と呻きそうになった。天使の羽が付いたリュックを用意しておくべきだったな。雪降ってるし。

「やっぱり貴方は破廉恥です」

「いや、ここ最近は絶対にお前の方がはれん……」

「削ぎ落としますよ」

「ごめんなさい」

 どうやって?なんて恐くて聞けない。

「まったく……一年の終わりだというのに……ふふっ」

 海未が吹き出したのに合わせて、こちらも頬が緩む。

「何やってんだろうな、俺達……」

「ええ、本当に。あ、もう着いたみたいですね」

 歩きながら話していたら、あっという間に我が家に到着していた。

 

「お、お邪魔します」

「ただいまっと」

 二つの挨拶に対して返ってくるものはない。

 親父と母ちゃんは年末だというのに仕事があり、小町は友達と初日の出を見に行くそうだ。年末に家族が揃わないのは寂しくもあるが、こうして二人っきりになれたことは、やはり嬉しい。

 心の中で三人に『よいお年を』と告げた俺は、親父と母ちゃんのために買った栄養ドリンクを冷蔵庫に入れ、ポットのスイッチを入れ、お湯を沸かす。

「コーヒーでいいか?」

「あ、はい!」

 海未はリビングでコートを脱いでから、やけにそわそわしていた。外で冷えたにしても、顔が赤い。

「……トイレか?」

「違います!……あの……」

「?」

 いまいちはっきりしない海未の反応に首を傾げていると、彼女は深呼吸して、何か決心したようにはっきりと告げた。

「シャワー、借りてもいいですか?」

 

 





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