捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

82 / 106
 感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!

 それでは今回もよろしくお願いします。


第81話

「はあ……はあ……」

「だ、大丈夫ですか?」

 飲み物を二つ持った海未が駆け寄ってきて、隣に腰かける。

 ロマンチックな空気で園内に入ったまではよかったが、一つ目のアトラクションに乗ってから海未がMAXハイテンションになり、ひたすらアトラクションに乗りまくっていたら、午前中にも関わらず、体力をかなり消費してしまった。

「はい、飲み物です」

「悪い……」

 温かいお茶を流し込むと、少し気分が楽になった。

「ごめんなさい。つい、はしゃぎすぎてしまって……」

「……気にすんな。いつも忙しい奴はこういう時くらい思いきり羽目を外すべきだろ」

「……そ、そうかもしれません。では……」

「……っ」

 一瞬だけ唇が重ねられる。

 寒さのせいか、海未の唇はやけに冷たかった。

「……げ、元気……出ました?」

「…………ああ」

 出ないわけがない。

「キ、キ、キス……こんな公衆の面前で……」

「落ち着いて六花ちゃん!前見て歩かないと危ないよ!」

「六花には刺激が強すぎたみたいね」

「真琴さんも顔真っ赤ですよ」

「「…………」」

 覚えておこう。

 いつも誰も見ていないとは限らない。

 

 最後は観覧車に乗ることにした。

 観覧車で見下ろす夜景は、目が眩むような鮮やかな輝きを放ち、一年最後の浮かれ騒ぎに彩りを添えていた。

「ラブライブ、よかったな。決勝も応援してる」

「ありがとうございます。貴方の奉仕部での活動も応援してますよ」

「……あまり依頼は来ないけどな」

「そんな事言って……この前も生徒会選挙で……」

「ああ、そんな事あったな……」

 修学旅行の一件で、未だに『右手が……』といっただけで笑いがとれるのがアレだが、今後は3人でしっかりと相談しながら依頼の手助けをする、という方向で話はまとまった。これも一つの成長なのかもしれない。

「まあ、あれだ。お前が頑張ってやってるの見たら……俺も何かやろうって思ったんだよ」

「そ、そうですか……あの、私だって……」

「?」

「私だって……貴方がいるから……貴方がいるから、毎日がこれまでよりずっと、輝いているんです」

「…………」

「ふとした夜の寂しさも、貴方に会える日の朝の喜びも……貴方が教えてくれたんですよ」

 海未はそっと手を重ねてきた。

 俺はその手に、さらにもう片方の手を重ね、素直な気持ちを告げた。

「……出会ってくれてありがとう」

「ふふっ、ずるいですよ。私が先に言おうと思ってたのに」

「じゃあ、次の機会に先に言ってくれ」

「何度も言うのですか?」

「何度も言うんだよ」

 きっとその方がいい。

 『ありがとう』の想いは尽きることはないのだから。

 観覧車はゆっくりと回り、二人がまた唇を重ねる頃、そのゴンドラを頂上へと翳した。




 読んでくれた方々、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。