それでは今回もよろしくお願いします。
「はあ……はあ……」
「だ、大丈夫ですか?」
飲み物を二つ持った海未が駆け寄ってきて、隣に腰かける。
ロマンチックな空気で園内に入ったまではよかったが、一つ目のアトラクションに乗ってから海未がMAXハイテンションになり、ひたすらアトラクションに乗りまくっていたら、午前中にも関わらず、体力をかなり消費してしまった。
「はい、飲み物です」
「悪い……」
温かいお茶を流し込むと、少し気分が楽になった。
「ごめんなさい。つい、はしゃぎすぎてしまって……」
「……気にすんな。いつも忙しい奴はこういう時くらい思いきり羽目を外すべきだろ」
「……そ、そうかもしれません。では……」
「……っ」
一瞬だけ唇が重ねられる。
寒さのせいか、海未の唇はやけに冷たかった。
「……げ、元気……出ました?」
「…………ああ」
出ないわけがない。
「キ、キ、キス……こんな公衆の面前で……」
「落ち着いて六花ちゃん!前見て歩かないと危ないよ!」
「六花には刺激が強すぎたみたいね」
「真琴さんも顔真っ赤ですよ」
「「…………」」
覚えておこう。
いつも誰も見ていないとは限らない。
最後は観覧車に乗ることにした。
観覧車で見下ろす夜景は、目が眩むような鮮やかな輝きを放ち、一年最後の浮かれ騒ぎに彩りを添えていた。
「ラブライブ、よかったな。決勝も応援してる」
「ありがとうございます。貴方の奉仕部での活動も応援してますよ」
「……あまり依頼は来ないけどな」
「そんな事言って……この前も生徒会選挙で……」
「ああ、そんな事あったな……」
修学旅行の一件で、未だに『右手が……』といっただけで笑いがとれるのがアレだが、今後は3人でしっかりと相談しながら依頼の手助けをする、という方向で話はまとまった。これも一つの成長なのかもしれない。
「まあ、あれだ。お前が頑張ってやってるの見たら……俺も何かやろうって思ったんだよ」
「そ、そうですか……あの、私だって……」
「?」
「私だって……貴方がいるから……貴方がいるから、毎日がこれまでよりずっと、輝いているんです」
「…………」
「ふとした夜の寂しさも、貴方に会える日の朝の喜びも……貴方が教えてくれたんですよ」
海未はそっと手を重ねてきた。
俺はその手に、さらにもう片方の手を重ね、素直な気持ちを告げた。
「……出会ってくれてありがとう」
「ふふっ、ずるいですよ。私が先に言おうと思ってたのに」
「じゃあ、次の機会に先に言ってくれ」
「何度も言うのですか?」
「何度も言うんだよ」
きっとその方がいい。
『ありがとう』の想いは尽きることはないのだから。
観覧車はゆっくりと回り、二人がまた唇を重ねる頃、そのゴンドラを頂上へと翳した。
読んでくれた方々、ありがとうございます!