捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第79話

「ふぅ……」

 海未達が会場に向かう姿が見えなくなった後、きりのいい所まで終わらせて、ようやくスコップを置く。海未直伝のトレーニングをしていなかったら、腕がしばらくだるくなっていただろう。

「ハッチー、お疲れ~」

「ヒッキー、お疲れ~」

「まぎらわしいから止めてね……」

 とはいえ、ヒフミトリオと総武高校のメンバーには感謝しかない。天気予報を見て、心配だからと頼んできたヒフミトリオ。俺の頼みを二つ返事で引き受けてくれた奉仕部メンバーと戸塚。材木立、じゃなくて材木座。あとは修学旅行の時のお礼として参加してきた戸部と海老名さん。二人は、進展こそないが、前よりは二人で話す時間が増えたように感じる。海老名さんが戸部を自分の趣味に引き込まなければ、奇跡が起こるんじゃなかろうか。

 一人一人の優しい姿を目に焼き付け、気恥ずかしさをなるたけ隠しながら礼を言う。

「……ありがとな」

「いいっていいって!むしろこっちが頼んだんだし!」

「総武高校の皆さんもありがとう!」

「全然大丈夫だよ!あたしも1回スクールアイドルのライブ生で見たかったし!」

 ちなみに、元気いっぱいの由比ヶ浜の隣で、雪ノ下はだいぶお疲れのようだ。ゆきのん、ごめん。今度カマクラをいっぱい触らせてあげるから!

 他愛ない会話でひと息ついたところで、ヒデコさんがその場を締める。

「皆、本当にお疲れ様!じゃあ会場に向かいますか!」

 

「え!?音ノ木坂の子だけじゃなく、比企谷君達も!?」

「エリチ」

「はい」

 雪かきの件を話したら、皆嬉しそうに微笑みを浮かべ、目を潤ませていました。穂乃果は今もまだ泣いています。

 にこも人の心の温かさに涙ぐみながら、私の方をポンポンと叩いてきます。

「しっかし、海未の彼氏もやるじゃない。千葉から来て、一番早い時間から雪かきなんて」

「ええ」

 私は自信満々に告げた。

「世界一かっこいい、自慢の恋人ですよ」

 

 ライブ中、ステージから一瞬たりとも目を逸らすことができなかった。

 冬の夜空に響く九つの歌声。耳から心にじんわりと染みこんでくる真っ直ぐな歌詞。歌の世界観を仕草と表情で表現するダンス。神様が望んだ演出のように、はらはらと踊る粉雪。青からオレンジに変わる鮮やかすぎる照明。瞬きをするのも惜しいくらいだ。

 全体を通して言えば、素人目に見ても、μ’sとA-RISEが圧倒的だった。会場の反応もかなり良かった。

 あとはただ祈るしかない。

 会場全体の緊張感が破裂しそうなくらい膨れあがったところで、司会者のよく通る声が、スピーカーを通して会場内に響き渡る。

「それでは発表します!ラブライブ決勝大会に進むのは……」

 





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