捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第7話

 

「まさか、貴方の家に上がる事になるとは……」

「冒頭から随分な台詞だな」

 小町の薦めで家に来た園田は、シャワーを浴び、母親の服を借りていた。最初は必死に断ろうとしていたが、小町の泣き落としにより、割とあっさり陥落した。

「ふふっ、冗談ですよ。ありがとうございます」

「礼なら小町に言っとけよ。誘ったのあいつだし」

「そうですね。貴方の妹とは思えません」

「一言多いんだよ」

 園田は「失礼します」とソファの離れた位置に座り、本棚の方へ目を向ける。

「凄い量ですね」

「親父がどんどん増やしていくんだよ」

「そうですか」

「お茶どうぞ。いや~お兄ちゃんがこんな綺麗な方と仲良くなってたなんて♪」

「「仲良くない」」

「ほら、息ぴったり♪」

 こんな暴力女とこんなお約束のシーンを演じるのは甚だ不本意なんだが……まあ、こいつ相手なら中学時代のような勘違いをする事もないから別にいいか。

「そういや、何で今日は千葉に来てたんだ?」

「お母さんに買い物を頼まれまして」

「そっか」

「それに千葉はいいところですからね」

「そうか!」

 思わず力が入ってしまった。

「ど、どうかしましたか?」

 園田が俺の様子に少し驚く。いかん、郷土愛が炸裂しかけた。

「いや、何でもない」

「鋸山も今年こそは登ってみたいものです」

「ああ、そういや俺も行った事はないな」

「そうなんですか?」

「単純に行く機会がないしな。休みの日に外出たくねーし」

「たるんでますね。何か部活動はやってないのですか?」

「奉仕部に入ってる」

「奉仕部?ボランティアみたいなものですか?そんなにハレンチなのに……」

「ハレンチは関係ねえだろ。あとハレンチじゃない」

「まだ認めようとはしないのですね。でも何で奉仕部に?」

「兄は強制入部させられたんですよ!これがそのきっかけの作文です」

 小町は園田にケータイの画面を見せる。だから何で撮影しているんだよ。てかお前があの作文持ってたのか。

 園田はその文面を見て、わなわなと震えだした。

「な、何ですか、これは!」

「いや、俺なりに青春の固定観念というものに一石を投じようとしてだな……」

「まったく。ハレンチなだけではなく捻くれてもいるんですね」

「そうなんですよ~。妹としては早く矯正したいんですが」

「ほっとけ」

 園田は僅かな逡巡の後、俺をしっかり見据えながら言った。

「そうですか、では比企谷八幡。来週末我が家に来なさい」

「……は?」

「貴方のその歪んだ性根を叩き直して上げます。今日のお礼も兼ねて」

「いえ、謹んでお断りさせていただきます」

「い・い・で・す・ね!」

「…………」

 俺はその有無を言わさぬ迫力に黙って頷く他なかった。はっきり言って怖い。控えめに言って怖い。

 視界の端で小町が喜んでいるように見えた。





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