捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第78話

「これは……」

 私達を校舎から出すまいとするかのような猛烈な吹雪。

 今朝の天気予報を見て覚悟はしていましたが、これほどとは……。

 それでも穂乃果は深呼吸をして気合いを入れる。

「い、行くしかないよ!」

 必死に勇気を搾り出す彼女の声に、私は黙って頷く。ことりも同じように頷き、一歩前に踏み出した。

「きゃっ!」

 しかし、突風に傘を持って行かれそうになり、危うく転びそうになる。

「ことり!」

「ことりちゃん!」

「あはは……大丈夫だよ!行こう!」

 ことりの力強い言葉に背中を押されるように、私達は並んで歩き出しました。

 決して近い距離ではないうえに、雪の積もり方も普段とは比較にならないくらいですので、不安はありますが、待ってくれているμ’sのメンバーの為、応援してくれている皆の為に……。

 それから雪がこんもりと積もった校門までの道を抜け、階段に差し掛かり、寒さにつつかれる気持ちをさらに引き締めたのですが、私達は覚悟していた光景とは別のものを見ました。

「皆……」

 何とそこにあったのはクラスメイトをはじめとした音ノ木坂学院の生徒達が必死に雪かきをする姿でした。

「はい、これ!」

 さらに、フミコさんが3人分のスノーシューズを渡してくる。

「あ、ありがとうございます」

「さ、早く行った行った!」

「ありがとう!よし、行こう!!」

 皆に深く頭を下げ、駆け出そうとすると、ミカさんに呼び止められた。

「あ、海未ちゃん!」

「はい?」

「会場近くで一番早い時間から必死に頑張ってる人いるから、労ってあげて!」

「は、はい…………あ」

 すぐにその頑張っている誰かさんの顔が思い浮かぶ。

 

 会場までの道は綺麗に雪がどかされていて、さらに近道まで誘導してもらえました。他校の生徒もいましたし、彼と同じ奉仕部と思われる方や戸塚君もいました。きっと不器用な彼が必死に頼んでくれたのでしょう。

 私達はすれ違う人達に御礼をいいながら、会場までの道を走り続けた。

 

 会場近くの歩道に彼はいました。

 いつもの捻くれた目つきも、今日は一心不乱に雪に注がれ、スコップで綺麗な道を作り上げています。

「八幡……」

「おう……」

 呼びかけると、彼は顔を上げ、汗を拭い、こちらを向きました。

 本当なら今すぐにその胸に飛び込みたい。

 しかし、今から私は勝負の場に出るので、甘えてなどいられません。

 彼も同じ事を思ってくれているのか、互いに無言の微笑みと、ハイタッチを交わす。

 乾いた音がどんよりした冬空に高らかに響いた。

 その音は二人だけにしかわからない、気持ちと温もりを共有する為の合図にも思えました。

 

 




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