捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第77話

 

 12月に入り、寒さはいよいよ本格的なものとなり、たまに雪も降るようになった。

 そんな冬の夜。着信音すら、どこか楽しげに聞こえてくる。

「……どした?」

「こんばんは。もう寝るところでしたか?」

「いや、もうちょい起きとくつもりだった」

「なら、少しお話ししませんか?」

「ああ、いいけど……」

「どうかしましたか?」

「いや、調子の方はどうかって思ってな」

「もちろん絶好調です!」

「お、おう、ならいい……」

「八幡は最近学校の方はどうですか?」

「母ちゃんみたいな聞き方だな……まあ、いつも通りだ」

「……想像がつきますね」

「おい、止めろ。哀しそうにするな」

「奉仕部の方はどうですか?」

「今もまだ『右手が……』で笑いがとれる」

「あれは私も吹き出しそうになるので、早く忘れたいです」

「そうしてくれると助かる」

「そういえば……お母さんとお父さんが八幡と一緒に食事をしたがっていましたよ」

「……おっと、いきなり重大イベント発生しかけていますよ。どういう事でしょう」

「何故、敬語?実は八幡と付き合っている事が二人にバレてしまったのです」

「ああ、なんか想像つくな……」

「それでお母さんが、『孫は25歳までにお願いね』などと言い出して、お父さんが泣き出して……」

「…………」

「涙を拭いながら『その男を紹介しなさい』と言ってました」

「お、おう……ラブライブが終わってからな……」

「確かにそうですね。ライブに集中しないといけません。それでは、今日はもう寝ますね。付き合っていただき、ありがとうございます」

「……別に電話くらい、いくらでも付き合う。その……恋人、だしな……」

「ふふっ、ありがとうございます。八幡……大好き」

 こちらが反応する前に、通話は切られ、耳の中には甘ったるい感触が残っていた。

 

 翌日の夜、見知らぬ電話番号から着信がきた。

 いつもならシカトする所だが、直感的な何かにつられ、通話状態にして、耳にスマホを当てた。

「ハッチー、久しぶりー!」

「じゃあな」

 通話を切る。

 しかし、すぐに二度目の着信がきたので、仕方なしに出る事にした。

「ひどーい!何で切るのさ?」

「いや、その前になんで俺の番号を知ってるのか、教えて欲しいんだが」

「穂乃果に聞いたんだよ!」

 高坂さんには、いつか絶対にほむまんをタダでもらいまくろう。

「それで……音ノ木坂トリオは……」

「何、その覚え方!ひどくない?」

 背後から「そうだそうだ~!」と抗議の声が聞こえてくる。音ノ木坂かしまし娘でもいいかもしれない。

「と、とりあえず、用件を聞きたいんだが……」

「あ、そうか!実はね……」

  

 





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