捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第75話

 ハロウィンイベント翌日の朝。

 祝日の為、月曜日が休みになるという素晴らしい幸運。この素晴らしい休日に祝福を!と言わんばかりの気分で、俺は二度寝をする…………つもりだった。

「…………」

「すぅ……すぅ……」

 目の前に自分の恋人の寝顔が現れる前までは……。

「……う、海未?」

「すぅ……すぅ……」

 小さく呼びかけてみるが、海未は規則正しい寝息を立てるだけで、起きる気配はない。

 ジャージ姿で無防備に眠る彼女。

 上着からは少しだけ浅い胸の谷間が覗いている。

 長い睫毛も、陶器のように滑らかで新雪のように白い肌も、薄紅色の形のいい唇も、見ているだけで胸が高鳴る。

 いや、別に変な事を考えているわけじゃないよ?ハチマン、ウソ、ツカナイ。

 でも……だからこそだ。

 だからこそ、何もしないというのは失礼じゃなかろうか?無防備に眠っている彼女に申し訳ないんじゃなかろうか?

 今、俺の胸の中で約1480人くらいが『行け!』と言った気がする。

 ……よし、GO AHEAD!

 俺は意を決して海未の方へ……

「おはようございます」

 海未は片目を開き、人差し指を俺の唇に当てた。

「…………」

「まったく、貴方は朝から破廉恥な人ですね」

「……何の話でしょうか?っ……」

 海未に唇を塞がれ、先の言葉は継げなくなる。

 互いの感触を確かめ合うように動いてから離れ、そこには温もりが残る。

 ぼんやりした朝焼けを受け止めるカーテンに目をやった後、彼女を見つめると、ぱっちりした瞳が優しくこちらを見据えていた。

「もう少し……一緒に眠っていたいですね」

「……てか、いつからいたんだ?」

「秘密ですよ」

「そうか」

「ふふっ、それより寒いです。こっちに来てくっついてください」

「……破廉恥なのは禁止じゃないのか?」

「これは違います。純粋に暖をとりたいだけです。出来れば貴方の温もりで」

「暖をとってる間に変な気分になるかもな」

「かもしれませんね。それは私も一緒です」

「そうなったら、どうするんだ?」

「その時は貴方が責任をとってくれるのでしょう?」

「……どうだろうな」

「拒否権があるとでも?」

「……きっと、ないんだろうな。まあ、あれだ……善処する」

「どのように?」

「……結婚する」

「ふふっ、それはとても素敵ですね。貴方となら……」

「…………」

「もう、自分から言って照れないでください」

「ああ。そういや、髪……綺麗、だな」

「い、いきなりどうしたのですか?」

「なんつーか、初めて会った時から……綺麗だと思ってた……」

「もう……からかっているのですか?」

「……いや、違う。ちょっといいか?」

 海未の髪をさらさらと優しく撫でる。彼女は微笑みと共に目を細め、その緩慢な動きを受け入れてくれていた。そして、仕返しと言わんばかりに、俺の髪を優しく撫でてくる。

 そんな風に二人してじゃれ合いながら、取り留めのない会話をしている内に陽は昇りきり、昼に近い時間になってしまった。

 




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