それでは今回もよろしくお願いします。
先程の建物の中に入り、海未が戻ってくるのを待つ。
パレードもライブも無事大成功に終わった。
数多の出演者の中でも、μ’sは一際目立っていた。最近の人気上昇のせいもあってか、心なしか注目度も高いように思える。
そして、視線を集中しすぎていたせいか、何度も海未と目があってしまい、かなり照れくさかった。これが目と目で通じ合う、というやつだろうか。
「八幡」
「……おう、っと」
背後から海未に声をかけられ、振り向くと同時に、手を引っぱられた。ちなみに、ライブの際には、海賊風の衣装に着替え、これがまたよく似合っている。
「お、おい……」
海未はこちらを見る事もなく淡々と喋りだす。
「まったく、貴方は……私ばかり見すぎです」
「……いや、それは仕方ないというか……」
「あんなにじっと見られては集中出来ないではありませんか」
「わ、悪い……」
「多分、いや、絶対に破廉恥な事を考えていたのでしょう」
「そんな事は……」
「本当にどうしようもないですね」
海未は俺を叱りながらずんずん歩き、近くにあった空き部屋に入ると、鍵を閉めた。ガチャリという無機質な音に、この部屋を世界から遠く切り離したような錯覚を覚える。
何故、鍵までかけるのだろうか。そもそも何故この部屋に入ったのだろうか。
「海未?……っ」
こちらに思考の隙を与えない獣のような動きに、何の反応も出来なかった。
「……んっ……んん……ん……八幡……」
海未は激しく唇を重ねてきて、とろんとした甘やかな視線を注ぎ込んでくる。海賊風の衣装にとろけた表情のギャップが、言いようのない艶めかしさを生み、それに呼応するように、こちらも手が動く。
海未の上着をずらし、腰のラインを撫でると、そこには女性らしい柔らかなラインがあり、滑らかな肌は掌にすぅっと馴染んでいった。
「八幡……好き……」
「……海未……海未……」
お互いが自分の気持ちをうわごとのように呟き、唇を何度も重ねる。甘い空気が室内を満たし、いつしか外の歓声も聞こえなくなっていた。
俺は腰に置いた手をずらし、太股の辺りを……
「っ……」
海未の身体がビクンと跳ねた。
「わ、悪い……」
「いえ、いいのですよ……」
離れかけた俺の手を、海未は自分の太股に押しつけた。
「私の心も身体も……貴方のものです……」
「……っ」
「あと少しだけ、貴方を補充させてください」
「……いくらでも」
耳に直接甘い言葉を吹き込まれ、抗うことなどできるはずがない。
海未の熱い吐息を耳に浴びながら、さらに強く……
「あれ?この部屋誰かいるのかな?」
ドアノブを回す音に、二人して一瞬に現実へと引き戻される。目を見合わせ、ドアに目を向けた。まあ、大丈夫だろう。鍵は閉めたし。
「あ、開いた……え?」
「「…………」」
アバカムでも唱えたのか、いや鍵が壊れただけだろう。小泉が入ってきて、こちらを見て、ピタリと静止した。無論、俺も海未も抱き合ったまま、小泉を見て固まっている。
しかし、それも数秒経つと……
「あわわわ……ぴゃああ……」
この後、気絶した小泉を二人で介抱し、何事もなかったかのように振る舞うのに必死だった。
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