捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

75 / 106
 感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!

 それでは今回もよろしくお願いします。


第74話

 先程の建物の中に入り、海未が戻ってくるのを待つ。

 パレードもライブも無事大成功に終わった。

 数多の出演者の中でも、μ’sは一際目立っていた。最近の人気上昇のせいもあってか、心なしか注目度も高いように思える。

 そして、視線を集中しすぎていたせいか、何度も海未と目があってしまい、かなり照れくさかった。これが目と目で通じ合う、というやつだろうか。

「八幡」

「……おう、っと」

  背後から海未に声をかけられ、振り向くと同時に、手を引っぱられた。ちなみに、ライブの際には、海賊風の衣装に着替え、これがまたよく似合っている。

「お、おい……」

 海未はこちらを見る事もなく淡々と喋りだす。

「まったく、貴方は……私ばかり見すぎです」

「……いや、それは仕方ないというか……」

「あんなにじっと見られては集中出来ないではありませんか」

「わ、悪い……」

「多分、いや、絶対に破廉恥な事を考えていたのでしょう」

「そんな事は……」

「本当にどうしようもないですね」

 海未は俺を叱りながらずんずん歩き、近くにあった空き部屋に入ると、鍵を閉めた。ガチャリという無機質な音に、この部屋を世界から遠く切り離したような錯覚を覚える。

 何故、鍵までかけるのだろうか。そもそも何故この部屋に入ったのだろうか。

「海未?……っ」

 こちらに思考の隙を与えない獣のような動きに、何の反応も出来なかった。

「……んっ……んん……ん……八幡……」

 海未は激しく唇を重ねてきて、とろんとした甘やかな視線を注ぎ込んでくる。海賊風の衣装にとろけた表情のギャップが、言いようのない艶めかしさを生み、それに呼応するように、こちらも手が動く。

 海未の上着をずらし、腰のラインを撫でると、そこには女性らしい柔らかなラインがあり、滑らかな肌は掌にすぅっと馴染んでいった。

「八幡……好き……」

「……海未……海未……」

 お互いが自分の気持ちをうわごとのように呟き、唇を何度も重ねる。甘い空気が室内を満たし、いつしか外の歓声も聞こえなくなっていた。

 俺は腰に置いた手をずらし、太股の辺りを……

「っ……」

 海未の身体がビクンと跳ねた。

「わ、悪い……」

「いえ、いいのですよ……」

 離れかけた俺の手を、海未は自分の太股に押しつけた。

「私の心も身体も……貴方のものです……」

「……っ」

「あと少しだけ、貴方を補充させてください」

「……いくらでも」

 耳に直接甘い言葉を吹き込まれ、抗うことなどできるはずがない。

 海未の熱い吐息を耳に浴びながら、さらに強く……

「あれ?この部屋誰かいるのかな?」

 ドアノブを回す音に、二人して一瞬に現実へと引き戻される。目を見合わせ、ドアに目を向けた。まあ、大丈夫だろう。鍵は閉めたし。

「あ、開いた……え?」

「「…………」」

 アバカムでも唱えたのか、いや鍵が壊れただけだろう。小泉が入ってきて、こちらを見て、ピタリと静止した。無論、俺も海未も抱き合ったまま、小泉を見て固まっている。

 しかし、それも数秒経つと……

「あわわわ……ぴゃああ……」

 この後、気絶した小泉を二人で介抱し、何事もなかったかのように振る舞うのに必死だった。

 

 

 




 読んでくれた方々、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。