海未のあまりの可愛さに、質問攻めは収まり、その場はお開きとなった。ちなみに、彼女はその魅力にまったく無頓着で……
「あの……皆は一体どうしたのでしょうか?」
などとのたまっている。
しばらくゾロゾロと歩いてから、高坂さんが俺達二人に笑顔を向けてきた。
「じゃあ、私達はこっち行くから!二人はごゆっくり~!」
「また明日ね!」
「はあ……さよなら、私の初恋」
「絵里ちゃん、シュンとしないで!ねえ、話聞くにゃ!」
「美しい友情の始まりやね」
「明日は明日の風が吹くもんね」
「色々混ざってない?」
「海未!恋愛もいいけど、次のライブ頼んだわよ!」
「ええ!任せてください!」
矢澤さんの言葉に海未は力強く頷く。それを見て、3人組がヒューヒューと囃し立てた。ちなみに、A-RISEのメンバーは一足早く店を出た。最後にあんじゅ編がどうのこうのとか言っていた気がするが、何の事だろうか。
「じゃあね、ハッチー!海未ちゃんをしっかり送り届けるんだよ!」
「まだ高校生ってこと忘れちゃダメだよハッチー!」
「ハッチー、ファイト!」
「ハッチーって……」
そんな恥ずかしい名前の人は知らない。
「ハ、ハッチー……」
「いや、お前まで呼ばなくていいから……」
海未にツッコミを入れ、いくつかの視線を背に受け、二人で並んで、歩き出した。
俺も海未も黙って、とぼとぼと彼女の家までの道を歩く。空は少し薄暗くなり、もうしばらくすれば、夜の帳が下りてきて、この街も、俺の住む街も優しく包み込むのだろう。
ふと隣を見るのと同時に、海未が口を開いた。
「八幡……」
「……どした?」
「私達……本当に恋人になったんですよね?」
「あ、ああ…………っ」
海未は突然俺の手を強く握り、細い路地へと連れ込み、自分の唇を俺の唇に、さっきより強く押しつけてきた。
咄嗟の出来事に、俺は海未を押しとどめる。
「ご、ごめんなさい、嫌でしたか?」
「……んなわけあるか。でも、まあ、あれだ……いきなりどうした?」
「…………から」
「?」
「貴方の事が……大好きだから」
真っ直ぐすぎる言葉に心があっさり貫かれる。
海未の目はとろんとしていて、上気した頬を一筋の汗がすーっと流れた。制服の下で呼吸に合わせて動く胸も、やけに艶めかしい。
理性を保っていられる自分は、割とすごいと本気で思う。
「…………俺も、同じ気持ちだから……っ」
言い終えると同時に、また口を塞がれる。柔らかな感触がどんどん馴染んできて、脳に深く刻みつけられていく。
唇を離した彼女は、また同じようにうっすら濡れた瞳を向けてきた。
「……はちまぁん……」
……反則すぎる。
結局、海未を送り届け、自宅に帰る頃には、日を跨ぎそうな時間になっていた。
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