それでは今回もよろしくお願いします。
「お、おい……」
やたら堂々とした海未にこちらが戸惑う。視界の端では絢瀬さんが東條さんに取り押さえられていた。
そして、綺羅ツバサは足を震わせている。
「こ、こ、ここ、恋人?高校生で?」
「落ち着けツバサ、ごくごく当たり前の事だ」
「べ、別に?動揺なんかしてないし?私はファンが恋人だし?あ、すいません。フライドポテト大盛りで!」
「もう、ヤケ食いしないの。あ、ちょっといい?」
綺羅ツバサを優しく窘めた優木あんじゅは、俺の隣に腰掛けてきた。高級感のある甘く優しい香りと隣から漂う殺気に挟まれ心拍数が上昇する。海未はいてつく波動を覚えたようだ。
そんなこちらの心情などお構いなしに、優木あんじゅは俺の顔を覗き込んでくる。整いすぎるくらいに整った顔立ちが目の前に来た。
「ふぅ~ん、意外と可愛い顔立ちしてるのね」
「そ、そんな事ないでしゅ……」
噛んでしまった。
「ふふっ、可愛い♪」
間近で微笑まれ、膝に置いた手に力が入る。肘の辺りに微かに胸が当たっている気がするのは気のせいだろう。
いや、俺は全く動じていない。今、俺の心は動かざること山の如しだ。ハチマン、ウソ、ツカナイ×100。
すると、右手に小さな手が重ねられた。
右を向くと、海未はその瞳を不安に潤ませ、頬が紅潮している。あと少しで感情の波がうねりを起こし、全てを飲み込んでしまいそうな気配がした。
やがて、その唇が小さく動く。
「……はちまぁん……」
「!!」
やばいよやばいよ!
か、可愛すぎる……何だよ、あの少し拗ねたような声。普段より幼く煌めく瞳。
人前じゃなければ、俺でも迷わずに抱きしめていたくらいだ。
周りも同じように悶絶していた。
「こ、ことりちゃん、どうしよう、海未ちゃんが……」
「か、可愛い……!」
「抱きしめたいくらい可愛いです!」
「か、かよちん?凛を抱きしめてどうするの?」
「ふん、あのくらい……にこだって……」
「止めときなさい……」
「ええもん見れたなぁ」
「認めるしかないわぁ……」
「「「……可愛い。可愛いよ海未ちゃん」」」
「くっ、これが彼氏持ちの魅力か!」
「落ち着けツバサ。それ以上食べたら太るぞ」
「あらあら、本当に好きなのね」
「はい……」
素直に答える海未に顔が熱くなりすぎて、指先一つまともに動かせない。
改めて、これが『恋』という感情なのかと気づかされた。そりゃあ、落ちるなんて表現されるはずだ。俺は彼女に、この底知れないくらい熱い場所に落とされたのだ。
俺は素直な気持ちで、海未のやわらかな手をそっと握り返した。
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