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それでは今回もよろしくお願いします。
修学旅行が終わってから、早1週間。
学校での生活に、特別大きな変化はない。
強いて挙げるなら、戸部が海老名さんから本を借りる姿を頻繁に目撃するようになった事と、クラスメートとの間に、変な壁を感じるくらいだ。まあ、仕方ない。ATフィールドとは誰もが持つ心の壁だからな。
ちなみに、奉仕部の部室に行った時も……
『ヒッキー……』
『……来たのね』
『……ああ』
『『…………』』
『……右手が』
『……ぷっ、ヒ、ヒッキー、あはは!』
『や、止めなさい!思い出してしまうじゃない……ふふっ』
『……ふっ』
『何でドヤ顔!?』
とまあ、こんな感じで至って平和な日々を過ごしている。しばらく雪ノ下からの罵倒は防げそうだ。
ちなみに、学校以外の時間は……
朝。
スマホが震えているので画面を確認すると、つい頬が緩んでしまう。
それを悟られぬよう、眠そうな声を搾り出した。
「……おう」
「お、おはようございます」
「……あー、おはよう」
「「…………」」
沈黙が訪れると、そこには互いの息遣いがスマホ越しに響き合う。
先に口を開いたのは海未だ。
「今日も、お互いにいい日にしましょう……八幡」
「ああ」
「…………す」
「?」
「そ、それでは!」
いきなり通話が途切れる。
海未に告白して、修学旅行から帰ってきてからは、毎朝電話がかかってくるようになった。これが意外と嬉しい。むしろこの為に寝るまである。
「八幡!」
「おう……」
戸塚がいつの間にか前の席に座り、笑顔で声をかけてきた。いかん、戸塚の接近に気づかないとは俺らしくもない。
「最近、毎日楽しそうだね」
「そ、そうか?」
そんな事言われると、一人でニヤニヤしているんじゃないかと心配になっちゃうんだけど。
「えっと、その……八幡は園田さんと恋人同士になったんだよね?」
「え?あ、ああ……」
戸塚の言葉に、忘れていた何かを思い出してしまう。
「よかったよ、二人がくっついて。実は心の中で応援してたんだよ?」
「そうか、ありがとう……京都でも心配かけたな」
「いいよ、そんな……」
戸塚と話しながらも、不安が胸に広がっていた。
やばい。
海未に好きだと告げたが、付き合おうというのを忘れていた……。
もしかしたら、電話の時の不自然な間は、それが原因ではなかろうか。海未はそういう順序を大事にする方だし、不誠実に思われたんじゃないだろうか。
……何が何でも、今日中に言おう。
俺は、授業が終わったら、すぐに海未に会いに行く事に決めた。
その頃……
「♪~~」
「海未ちゃ~ん。休み時間の度に生徒会室で踊るのは止めようよ~」
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