それでは今回もよろしくお願いします。
俺から……告白?ドア越しに?
いや、そんなはずはない。
「海未……告白ってお前からじゃなかったっけ?」
俺の言葉に海未は小さく笑う。
「も、もうっ、照れているのですか?私の事をどう思っているか聞いたら、貴方は好きだと言ったではありませんか」
「……俺、あの時……材木座と電話してたんだが」
「え?」
海未の顔が笑顔のまま、ピキッと固まる。やっべえ、すごい恐いんだけど。いやしかし、ここで誤解させたままなのも悪い。
笑顔のままの海未は汗を一筋流した。
「あ、貴方は……材木座さんという方が好きなのですか?」
「絶対に違う!!」
そこは全身全霊で否定させてもらう。
「材木座は男だ」
「そ、そそ、そうですか……八幡は……男の方が……」
「だから違うっての」
ダメだ、こいつ……はやく何とかしないと。
俺は深呼吸をして、京都の夜の冷たい空気を吸い込む。それでも、胸の奥のよくわからない熱は冷める事はなく、心臓の鼓動をより速くした。
その波打つ感情に任せ、海未の両肩に手を置き、しっかりと目を見る。
彼女は無言になり、同じように見つめ返してきた。
風が竹の葉をかさかさ揺らす音が響き、世界に二人だけみたいな気持ちになった。
後は、気持ちが自然と口から零れた。
「…………俺が好きなのは……お前だ」
そのまま、以前の海未の行動をなぞるように、頬に浅く口づける。ほんのり優しい温もりが唇を通し伝わってきた。海未は身じろぎもせずに、じっと身を任せてくれていた。
「「…………」」
顔を離し、また見つめ合うと、さっきより頬が紅く、少し震えだす。
海未の瞳は、優しく濡れていた。
「私も、です。貴方が……好き」
「…………」
目が閉じられ、何かを待つように顔がこちらに向けられる。薄紅色の唇は、今まで近くにいながら気づかなかった自分が恥ずかしいくらい、綺麗に整った形をしていて、目が吸い寄せられた。
ここに自分のものを重ねるのは、正直躊躇われるが、ここで逃げるほど、男として腐ってはいない。
手を繋ぎ、そのままゆっくりと……
「はちま~ん!はやく帰って我とUNOをするぞ!!」
「「!」」
慌ててお互い飛び退く。
それと同時に、ふわふわした空気は霧散して、辺りに飛び散っていった。
「「…………」」
つい、二人して材木座を睨んでしまう。
「あ、なんか、すいません」
奴は素に戻っていた。
「送ってくれて、ありがとうございます」
「……ああ」
「帰りは、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。多分、俺とかいない事に気づかれていないし」
「それはそれで……」
海未が泊まっている宿の前で、別れを惜しむように会話を引き延ばす。
妙にくすぐったい時間が流れ、それは微笑みに変わる。
俺と海未の関係は、確かに変わろうとしていた。
「ことりちゃん、私達忘れられてるよね……」
「うん……そうだね……」
読んでくれた方々、ありがとうございます!