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それでは今回もよろしくお願いします。
「少し出てきます」
「え、今から?」
「もう暗いよ?」
戸塚君から、八幡達が手伝う告白作戦の仕上げに選ばれた場所を聞き、向かおうとすると、穂乃果達に心配そうな声をかけられました。二人共、何かを察しているような気さえしてきます。
「大丈夫ですよ。お父さんとお母さんが帰ってくる前には戻りますから」
私が落ち着いた声音でそう告げると、穂乃果が無言で靴を履き、私の隣に並んだ。
「海未ちゃん、私も行くよ」
その口元には、昔から私を落ち着かせる優しい微笑みが添えられていました。
「多分、心配事でしょう?」
ことりもいつの間にか隣にいる。どうやら、私は心配をかけていたようです。
「それに、海未ちゃん。おっちょこちょいだから、帰りに道に迷ったら大変だし」
「貴方にだけは言われたくありません」
「ふぅ……」
「あれ、ヒッキー緊張してるの?」
「あなたがそこまで人を気にかけるのも珍しいわね」
「違うっての」
戸部は間違いなくフラれる。
しかし、それを回避する方法は幾つかある。
一つは戸部を説得する。
まあ、これは無理だ。
今さらな話な上に、葉山が何度も説得して無理だったものを、俺がやったところでどうにかなるものではない。
もう一つは海老名さん側に何かアクションを起こす。
要は、海老名さんが今誰とも付き合う意志がない事が戸部に伝わればいい。これに関しては、やれる事があるかもしれない。例えば、戸部の前で海老名さんに告白するとか。
しかし、そんな事はできない。
くさい言い方だが、待たせている奴がいる。
俺はあいつと同じように、真っ直ぐに、あいつに応えなきゃならない。
その上で、俺は俺のやれる事をやる。
……それが自己犠牲だったとしても。
意を決した俺は飛び出した。
「うおおおおぉぉぉーーーー!!!!」
「え?」
「ヒッキー!?」
「比企谷?」
「「な、何だ!?」」
周りの声は気にせず、俺は叫びながら二人の間に割り込み…………寝転がった。
「ヒ、ヒキタニ君!?」
「わわっ!何!?」
「み、右手が!右手が!右手がぁ~~~~!!!封印が解けるぅ~~~~!!!!」
俺は体育祭の時の材木座のように、ひたすら地面でジタバタと暴れ、海老名さんにアイコンタクトを送った。
『後は自分で何とかしろ』
「あー……」
海老名さんは察してくれたのか、ぽつぽつと話し出す。
「いやー、ヒキタニ君ドン引きだよー。いくら私が今彼氏を作る気がないとしても、ドン引きだよー。そ、そういえば戸部っち、話って何?」
「え?あ、いや……お、俺、帰りの新幹線で本読みたいから貸してくんない?」
「あー、いいよ」
「あはは……」
「あはは……」
「右手がぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「何……これ?」
「あはは……」
「八幡……貴方という人は……ふふっ、まあいいです。後で飲み物でも奢ってあげますよ」
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