それでは今回もよろしくお願いします。
秋の京都は、やはり世界有数の観光都市らしく、大勢の観光客で賑わっていた。正直、大人しく京都駅内の喫茶店で本でも読んでいたい気分だ。
「ヒッキー、またバカな事考えてたでしょ?」
「……今、お前にだけは言われたくない単語ナンバーワンが含まれていた気がするんだが」
「ちょ、どうでもいいでしょ!そんな事は!」
「つーか、そこまで顔に出てたか?」
「うん。ヒッキー、最近その辺りが感情豊かっていうか……」
「…………」
まじか。
ポーカーフェイスを意識して、これまで生きていたつもりだったのだが……いや、多分由比ヶ浜の言う通り、少しだけ変わったのだろう。そして、それが何によるものかは明白だった。
あれから、まだ連絡を取っていない。向こうからも。
せめて修学旅行が終わるまでには答えを…………いや、今は考えるのは止めておこう。
今やるべきは、クラス一のお調子者・戸部の、実る確率が殆どゼロに近い恋心の処理……もとい、戸部と海老名さんが両想いになるよう、アシストする事だ。
両想い、という言葉が頭によぎった時、少し顔が熱くなった気がした。
いや、そうも言っていられない。
実は修学旅行の前日に、海老名さんが部室にやってきた。一件、ただ駄弁りにきただけに見えるが、去り際の彼女は、明らかに『依頼』を残していった。しかも、雪ノ下と由比ヶ浜は気づいていない。
……まあ、やれるだけやってみるか。
「♪♪♪」
「…………」
「穂乃果?どうしたのですか?ずっとこちらを見ていますが……」
「…………」
「こ、ことりまで……視線が恐いですよ」
京都に向かう新幹線の車内。
幼馴染み二人が向けてくる視線に、こちらを探るようなものを感じる。一体何があったのでしょうか?
穂乃果は顔を耳元に近づけ、少し声のボリュームを落とし、
「海未ちゃん、最近何かあった?」
「何が、と言われましても……」
「その……比企谷君と……」
「え?そ、そんな……ふふっ」
先日、彼に……想いを告げた後の事を思い出す。
自分でも信じられないスピードで駅に到着し、ジャージ姿のまま電車に乗り、駅を出てからも猛スピードで自宅まで走りました!ちなみに、この時は頭の中が真っ白で、何も考える余裕がありませんでした。
『た、ただいま戻りました、お母さん!』
『どうしたの?そんなに急いで……あと顔真っ赤よ?』
『はわっ!』
……そのまま私は、ベッドの中に潜り込んでしまいました。
ど、どうしましょう!ついに言ってしまいました!あ、しかし、八幡は既にわかっていると言ってましたし……そ、それに……私の事が……好き……って……す、好きって……しかし、彼の好きは私のとは違う意味かもしれませんし……でも、もう言ってしまいましたし……何より……彼の頬に……キ、キ、キスを……。
それからは、自分のテンションが異常なまでに上がったり、下がったりで、八幡からの連絡を待つ日々。とは言え、まだ1週間くらいしか経っていませんが。あまり考えたくはありませんが、もしかしたら……迷惑だったのでしょうか?
「海未ちゃん?」
「今度は落ち込んじゃったね……大丈夫?」
二人の気遣わしげな声が、俯いた私の耳朶を撫でる。
あまり心配をかけるのも、申し訳ない気がします。先日のことりの件もありますし、一人で思い悩むのも、良くない気がします。
「あの、二人共……よかったら、話を聞いていただけませんか?」
「……うん!」
「もちろんだよ!」
二人はそう言って、いつものように笑ってくれる。
今さらですが、私は幼馴染み達に、初めての恋愛相談をする事にしました。
「…………」
「ほら、あなた。泣かないの。海未だってそういう年頃なんだから。ね?」
読んでくれた方々、ありがとうございます!