捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第58話

 

「はあっ……はあっ……ご~め~ん!」

「もう、穂乃果ったら……また遅刻よ?」

「また海未ちゃんに怒られちゃうよ~」

「穂乃果……」

「ひぃっ!?う、海未ちゃん、ごめん!きょ、今日は目覚ましが鳴らなくて~!!」

「穂乃果、偉いですね。今日はいつもより5分も早いですよ」

「ごめ~ん!!…………え?」

「海未……?」

「どうしたん?」

「海未……ちゃん?」

「さ、皆!今日も一日、ファイトですよ!」

「海未?あ、あなた何かあったの?」

「そ、そんなハラショーな事はありませんよ!さあ、今から練習いっくにゃ~!」

「あ~、それ凛の!」

「ラブアローシュート、ト、ト、ト、ト~!バァン♪」

「海未……ちゃん……」

「こ、恐いよぅ……」

「イ、イミワカンナイ……」

「ダ、ダレカタスケテェ……」

「海未ちゃんが壊れたにゃ……」

「これは……比企谷君関連かな?」

「チカ」

「絵里もおかしい気がするんだけど……」

 

「…………」

「八幡」

「…………」

「八幡ってば!ふぅ……どうしちゃったんだろ」

「…………」

 やばい。休日の一件以来、思考回路がずっと停止している。

 あの突然の出来事の後……

『きょ、今日はもう帰ります……』

『…………』

『へ、返事はいつでも構いませんので……』

『……あ、ああ……』

 その時の事を思い出しながら、頬に手を当てると、確かな熱を感じる。今も彼女の唇の感触は甘く刻みつけられていた。一回目の時と違うのは、今回の出来事は偶然の産物ではなく、彼女自身の明確な意志の元、起こったという事だ。そして、それが意味する事は……。

 いや、実際に彼女の口からも聞いたのだ。今さらそこを考えても仕方がない……つーか、実際のところどうなんだ?海未と出会ってから、まだ4ヶ月程度だ。しかも、住んでいる場所も離れているので、会うのは月に2、3回ぐらい、後は電話で話すぐらいだ。それで、本当に好きになるのだろうか……。

 俺自身はあいつの事をどう思っているのだろうか。果たして……好き、なのだろうか。

 結局、何一つ手につかず、修学旅行の班決めや、奉仕部の依頼などがあっという間に決まってしまっていた。

 

「えっ?京都へ?」

「ええ、お父さんが福引きで当てたのよ。それで、あなたも最近、部活の掛け持ちやデートで中々家族一緒の時間がなかったでしょう?だから……」

「はあ……」

「ちなみに、5人分だから……穂乃果ちゃん達か、八幡君達か選べるわよ」

「な、何を言っているのですか!」

「あらあら、素直じゃないんだから」

「け、結婚していない男女が同衾など……破廉恥です!」

「そこまでは言っていないのだけれど……」

 

 





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