捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第57話

「そ、それは……その……八幡は、気づいているのですか?」

 

「ぬぅ……貴様は前振りの大事さをわかっておらんな!」

「何度も同じ事言わせんな。はやく言えよ」

 

「そ、そんな……いつから……知っていたのですか?」

 

「ぐぬぬ、貴様はいつからそんなにつれない奴になったのだ?」

「初めて出会った時からだよ」

 

「えっ?な、何を……私達の出会いなど……最低なものだったじゃないですか!」

 

「これはやはり、違うクラスになった事で生まれる溝なのだな……哀れなものよ……」

「そうだな。でも、俺はそれでよかったと思ってる」

 

「っ…!…………た、確かにそうかもしれません。あの出会いがなければ、貴方ともこうして一緒にいなかったわけですし……その……八幡は私の事を……」

 

「八幡よ!見損なったぞ!貴様は我の事が嫌いなのか!?」

「好きに決まってるだろ」

 

「え、ええ!?いや、その……聞いたのは私ですが、そ、そんな、はっきりと……」

 

「いや、そんなはっきり言われても……こいつ頭おかしいんじゃねえの?」

「いや、お前にはこう言ってやった方が効果的だからな(嫌がらせの意味で)」

 

「そ、それは……いえ、私も覚悟を決めます。だから……こういった事は、目を見て言いたいので……入ってきてください」

 

 扉が内側からノックされる。おそらく着替え終わったから入ってこい、という合図だろう。

「悪いが、立て込んでるから切るわ。じゃあな」

 材木座の返事を待たずに、さっさと通話を終える。ようやく自分の部屋に戻れる。

 俺は過去の失敗から学ぶ男なので、キチンとノックをして、中にいる海未に確認を取った。

「おーい、もういいのか?」

「は、は、はい……!」

 どうしたのだろうか?たかがジャージを見せるだけだというのに、何を緊張しているのか……。

 とりあえず、扉を開ける。

「…………」

 ジャージは以前着ていた物が冬用になったような見た目で、そこまでの目新しさはないが、似合っているのは間違いない。

 正直照れくさいが、ここは素直に褒めておこう。てか、こいつは何でこんなに顔真っ赤なんだよ……。余計に言いづらいだろうが。

「……に、似合ってるんじゃないか?」

「……す」

 海未は伏し目がちになり、何か呟いたが、声が小さすぎて聞き取れない。

「悪ぃ。よく聞こえないんだけど……」

「……好きです!」

「……は?」

 今、こいつ何て言った?

 頭の中に靄がかかったような感覚がやってきて、何も考えられないでいると、海未が急に距離を詰めてきて……

「…………っ」

「…………」

 左の頬に、何やら柔らかな温もりが触れた。




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