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それでは今回もよろしくお願いします。
体育祭当日。
再び相模関連のトラブルはあったものの、何とか無事に開催できた。
そして、驚きなのは、競技の方で意外と健闘できている事だ。流石に葉山グループのような運動部の主力選手には及ばないが、帰宅部相手なら余裕で追い抜けるし、その辺の運動部相手なら、十分に善戦できた。
……これも鬼軍曹のスパルタの賜物だろう。
確か、あいつは今日が修学旅行最終日だったはずだ。別に、こちらへ来るわけではないが、帰ってくると思うと自然と身が引き締まる。海未さん、プレッシャーまじぱねぇっす。
「ヒッキー、やるじゃん!」
「八幡、すごいね!」
「あ、ああ……」
由比ヶ浜と戸塚が駆け寄ってきて、賞賛の言葉をくれる。こういうのに慣れてなさすぎて、かなりリアクションに困る。なんか悲しすぎるぞ。
誤魔化すように頬をかいていると、戸塚が小さな唇を耳元に寄せてくる。い、今、ご褒美のキスされるかと思った……。
「園田さんにいい報告が出来そうだね!」
「っ!」
突然何を言い出すのだろうか。
俺が戸塚の方を見ると、悪戯っぽく笑っていた。ちくしょう、可愛いじゃねえか。
「ったく、いきなり変な事言うんじゃねえよ……」
「あはは、ごめんね?でも、そうするだろうなって……」
「まあ、結果がどうだったかはしつこく聞かれそうだな。うっかりビリになった日にゃ、地獄のトレーニングが待っている」
「が、頑張ってね……」
さて、後あの競技は……。
その日の夜。
「なるほど。反則行為による失格ですか」
「まあな」
「何故得意気なのですか……」
「いや、ここまできたら開き直るのが一番かと……」
「まったく、もう……」
最終競技の棒倒しで、こっそり包帯で鉢巻きを隠してカモフラージュしながら敵陣に入った俺は、競技終了後に、無情にも失格を言い渡された。それにより逆転はならず、紅組は負けてしまったのである。
そして、反則行為について、海未に説教を喰らう事を覚悟していたのだが……
「まあ、反則に関しては、貴方は意味もなくそのような事をする人ではありませんので……」
「おお、そうか。やっとわかってきたか」
「調子に乗らないでください」
「はい」
「それと……お疲れ様です。文化祭に引き続き、奉仕部として頑張っていたのですね……少しくらい言ってくれればいいのに……」
「いやほら……言うタイミングがなくてな……」
「そういう事にしておきましょう。それと、お土産を渡したいのですが、今度の日曜日の午後は空いていますか?」
「ああ……多分な」
「聞くまでもありませんね。ごめんなさい」
「おい、何故ごめんなさいをつけた?ちょっとダメージ受けたんだけど」
「ふふっ、今日はゆっくり休んでください。では、また明日」
一応こちらを気遣ったのか、通話はあっさりと途切れた。何の気なしに通話履歴を見ると、殆ど『園田海未』になっている。
……明日は平日だが、明日もこの時間にかけてくるのだろうか。
多分、俺はそれを待っているのだろう。
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