捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第53話

 

「「え!?」」

 穂乃果とことりが驚愕の表情を浮かべ、こちらを見ています。その手からはトランプの束が落ち、テーブルの上で混ざり合い、ババ抜きの途中だというのに、訳がわからなくなってしまいました。しかし、この二人は何故こんなに強いでしょう?ババ抜きなど運でしかないはずなのに。も、もしかしたら……私の知らない必勝法があるというのでしょうか……。

「もう!海未ちゃん、ババ抜きなんてどうでもいいんだよ!どうせ勝てないんだし!」

「そうだよ、どうせ勝てないよ?」

 いつの間にか、穂乃果とことりが詰め寄ってきて、かなり失礼な事を言う。

「あ、貴方達……いくら何でも言いすぎでは……」

「だから、どうでもいいの!」

「そうだよ!だって……だって……」

「はい……?」

 二人が俯き、部屋が静まり返る。

 雨粒が窓を叩く音がやけに強調され、修学旅行だというのに、部屋に閉じ込められている不運が少しだけ身に染みた。

 溜息をつくと、二人がばっと顔を上げる。

「「今さら比企谷君が好きって気づいたの!?」」

「え?あ、な、何をいきなり……!」

「だって今!」

「私達が聞いたら……す、好きだって気づきましたって!」

「は、はい……」

 そう……今さっき……

『ねえ、二人共。修学旅行では、女子ってコイバナをしなきゃいけないらしいよ』

『あはは、絶対じゃないような……』

『それより、今度こそ私が一番に上がってみせます』

『そんな事言って~、海未ちゃんがこの中で一番関係あるじゃん!』

『この前も比企谷君を待ってたもんね』

『それは……た、確かに、この前、好きだと気づいたのですが……まだ特に何もありません。さあ、続きを!』

『『え?』』

 という感じです。

「はあ……二人にばれたのは不味かったかもしれません」

「いや、もうバレてるから。隠せてると思ってるの海未ちゃんだけだから」

「あはは……」

 私はどうやら、自分が思っている以上に隠し事が下手なようです。

 でも、今は本人にバレていなければそれで構いません。あの捻くれた鈍い男に……。

「ま、まあ、そういう事ですので、何というか、その……スクールアイドルという身でありながら、大変申し訳ないのですが、やはり、自分の気持ちに嘘は……」

「作戦会議だよ、海未ちゃん!」

「はい、ごめんなさ……は?」

 今、穂乃果が私の予想と全く違う言葉を口にしたような……。

「せっかく修学旅行に来てるんだから、こう、素敵なお土産を買って帰らなきゃ!ことりちゃんはデートの時の服装を考えて!」

「うん、任せて!」

「え、ええ?」

 何故か私より積極的な幼なじみに、私は不安やらちょっとした心強さやらで、何ともいえない笑みが零れてしまいました。





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