それでは今回もよろしくお願いします。
新学期初日。
気怠い気分で校門をくぐり、下駄箱まで辿り着くと、見慣れたお団子が目に入った。
彼女もちょうどこちらを見たので、軽く手を挙げて挨拶をする。
「おう」
「あ、ヒ、ヒッキー……おはよ」
由比ヶ浜は気まずそうな苦笑いを浮かべる。そういや、この前ショッピングモールで見られてたんだった……。
かといって、いきなりその事について切り出すのも不自然極まりないというか、自意識過剰で気持ち悪い。こちらも何を言えばいいか、よくわからないまま黙って靴を履き替えていると、由比ヶ浜の方から切り出してきた。
「そ、そういえばびっくりしたなぁ!まさかヒッキーにあんな可愛い彼女がいたなんて……」
由比ヶ浜はあははと笑い、頬をかく。やはり勘違いされているようだ。
なので、先日の海未の言葉を思い出して、ゆっくりと諭すように答える。
「あれはトレーニング仲間だよ。あいつもそう言ってただろ」
「へ、へえー、そうなんだ……」
由比ヶ浜はあまり納得していない気もしたが、この話はここで断ち切っておいた方がいいと思い、先に歩き出す。実際のところ、彼女ではないのだから、これで充分だろう。
「…………ヒッキーの寝顔をあんなに笑顔で見てたのになぁ」
由比ヶ浜の呟きは誰の耳にも拾われず、小さく空気を震わせただけだった。
休み時間に缶コーヒーを買いに行ったら、今度は川……なんとかさんと鉢合わせた。彼女は俺の顔を見て、何故か慌てるような素振りを見せた。
普段とまったく違う姿に、こっちが慌ててしまう。
「お、おう……」
「う、うん……」
缶コーヒーを自動販売機から取り出し、その場を立ち去ろうとすると、川……なんとかさんの方から声をかけてきた。
「ア、アンタ……彼女いたんだね」
また誤解されているようだったので、また同じ言葉を伝える
「いや、トレーニング仲間だ」
足早にその場を立ち去ると、背中に視線を感じた。
「……眠ってるアンタの髪を嬉しそうに撫でてたのに?」
その言葉もまた誰の耳にも拾われず、小さく空気を震わせた。
『ふふっ、普段は捻くれている癖に、寝顔は意外と幼いのですね』
『……こうしているのも……はっ、私とした事が……何故八幡の頭を撫でているのでしょうか!いや、でも……こ、これはお礼という事で……仕方ありませんね。まったく……』
「っくしゅんっ!!」
「海未ちゃん、風邪?」
「い、いえ、そういうわけでは……」
「もしかして、比企谷君だったりして?」
「な、何を言っているのですか!早く行きますよ!」
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