捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第48話

 新学期初日。

 気怠い気分で校門をくぐり、下駄箱まで辿り着くと、見慣れたお団子が目に入った。

 彼女もちょうどこちらを見たので、軽く手を挙げて挨拶をする。

「おう」

「あ、ヒ、ヒッキー……おはよ」

 由比ヶ浜は気まずそうな苦笑いを浮かべる。そういや、この前ショッピングモールで見られてたんだった……。

 かといって、いきなりその事について切り出すのも不自然極まりないというか、自意識過剰で気持ち悪い。こちらも何を言えばいいか、よくわからないまま黙って靴を履き替えていると、由比ヶ浜の方から切り出してきた。

「そ、そういえばびっくりしたなぁ!まさかヒッキーにあんな可愛い彼女がいたなんて……」

 由比ヶ浜はあははと笑い、頬をかく。やはり勘違いされているようだ。

 なので、先日の海未の言葉を思い出して、ゆっくりと諭すように答える。

「あれはトレーニング仲間だよ。あいつもそう言ってただろ」

「へ、へえー、そうなんだ……」

 由比ヶ浜はあまり納得していない気もしたが、この話はここで断ち切っておいた方がいいと思い、先に歩き出す。実際のところ、彼女ではないのだから、これで充分だろう。

「…………ヒッキーの寝顔をあんなに笑顔で見てたのになぁ」

 由比ヶ浜の呟きは誰の耳にも拾われず、小さく空気を震わせただけだった。

 

 休み時間に缶コーヒーを買いに行ったら、今度は川……なんとかさんと鉢合わせた。彼女は俺の顔を見て、何故か慌てるような素振りを見せた。

 普段とまったく違う姿に、こっちが慌ててしまう。

「お、おう……」

「う、うん……」

 缶コーヒーを自動販売機から取り出し、その場を立ち去ろうとすると、川……なんとかさんの方から声をかけてきた。

「ア、アンタ……彼女いたんだね」

 また誤解されているようだったので、また同じ言葉を伝える

「いや、トレーニング仲間だ」

 足早にその場を立ち去ると、背中に視線を感じた。

「……眠ってるアンタの髪を嬉しそうに撫でてたのに?」

 その言葉もまた誰の耳にも拾われず、小さく空気を震わせた。

 

『ふふっ、普段は捻くれている癖に、寝顔は意外と幼いのですね』

『……こうしているのも……はっ、私とした事が……何故八幡の頭を撫でているのでしょうか!いや、でも……こ、これはお礼という事で……仕方ありませんね。まったく……』

 

「っくしゅんっ!!」

「海未ちゃん、風邪?」

「い、いえ、そういうわけでは……」

「もしかして、比企谷君だったりして?」

「な、何を言っているのですか!早く行きますよ!」




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