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それでは今回もよろしくお願いします。
「…………ん?」
ぼんやりと目を覚ますと、沢山の人の声や足音が耳に入ってきて、割とすんなりと意識が覚醒する。
それとほぼ同時に、溜息と声が降ってきた。
「やっと起きましたか」
海未がこちらを見下ろしている。
「……あれ、何で?」
「貴方は倒れたのですよ」
「な、何故……」
真っ先に疑問が沸く。
すると、海未がポカンとした表情になった。
「何も……覚えていないのですか?」
「確か……お前の水着を選びに……そして、絢瀬さんが……あれ?」
おかしい。記憶の風景に靄がかかり、上手く思い出せない。スピリチュアルやね!
「まったく、あれぐらいで興奮して気絶するなんて……貴方は本当に破廉恥なんですね」
「え、何?本当に何があったの?すげー気になるんだけど……」
「ふふっ、忘れてしまうのならその程度の事です。ちなみに、絵里は希と亜里沙につれて行かれましたよ」
「いやだ~!エリチカおうち帰らない~!比企谷く~ん!」
「お姉ちゃん!最近なんかおかしいと思ってたら……さっきの人は誰!?亜里沙にも紹介して!!」
「なっ!?認められないわ!!」
「お姉ちゃんの冷蔵庫にあるプリン食べちゃうよ!」
「くっ……それは反則よ!」
「エリチ……変わったなぁ……」
「じゃ、じゃあ、亜里沙、一緒に戻りましょう?」
「ダメだよ!もっとオシャレしてからじゃないと……」
「はいはい、二人共。早く帰るよ」
「そういえば八幡……そろそろどいて欲しいのですが……」
「へ?」
今さらになって、自分が置かれている状況を理解する。
海未は俺を見下ろし、頭には柔らかい感触。
つまり、俺は彼女に膝枕されていた。
「わ、悪い!」
「…………」
慌てて起き上がると、彼女はそっぽを向いたが、それも数秒で、すぐにいつもの調子に戻った。
「ま、まあ、困った時はお互い様です。さっきは水着選びを手伝ってもらいましたし。そういえば、貴方が眠っている間、貴方のお友達に声をかけられましたよ」
「お、おい、マジか。つーか、お友達って……」
お友達とやらに心当たりはないが、クラスの誰かに、さっきまでの状態を見られたのは、かなりまずい気がする。何がまずいのかもわからないが。
「……どんな奴だった?」
「えーと、まず茶色い髪にお団子が特徴のかなり可愛らしい方でしたよ」
「…………」
由比ヶ浜か……。
「も、もう一人は……
ポニーテールのすらりとした綺麗な方です」
川……なんとかさんか。
ただでさえ交流の少ないクラスメートの中から、あえてその二人を遭遇させるとか……神様もイタズラ好きすぎるだろ。
「そういや、声をかけられたって……」
「何と言いますか、まず貴方かどうか確認をして……私との関係を聞いてきました」
「……そ、それで?」
「トレーニング仲間……という事にしておきました」
「あ、ああ……」
変わった括りである。
「ああ、そういえばあの方達は貴方の名前を知らないようでした」
「?」
「私が八幡と言ったら、何故か不思議そうにしていましたから」
「…………」
何故だろう。誤解を生んでいる気がしてならない。いや、自意識過剰だろうか。
「それにしても……随分、魅力的な方達と知り合いなのですね」
「あ?あれは……まあ、クラスや部活が一緒で……」
「貴方を見る目が親しげだったと言いますか……去り際に足がふらついていたのが心配でしたが」
……二人して夏バテだろうか。トレーニングを変わってやりたい気分だ。
「まあ、親しげっつーか、顔見知りだから、あれだ。普通なんじゃねーの?」
自分でもよくわからない言い訳じみた言い方になりながら、立ち上がり、海未の方を向く。
すると、彼女は頭を抱えていた。
「わ、私は何を……べ、別に、学校が違うのだから、私の知らない知り合いがいるのは当然なわけで……」
「おーい……」
夏休み最後のイベントは、予想より賑やかに、それでいてどこか穏やかに過ぎていった。
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