捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第45話

 

「待たせたわね」

 ようやく海未の水着を選び終えたところで、絢瀬さんがいきなり棚の陰から現れた。その顔はやたら自信に満ち溢れているのに、何故か不安な気持ちで一杯だ。

 しかし、そんな心配はお構いなしに、ずいっと距離を詰めてくる。

「さあ、待ちに待った私の番よ!!」

「「…………」」

「ど、どうしたの?リアクションが冷たくないかしら?」

「「いや、なんかもう……初登場の時のテンションと違いすぎて、リアクションに困ると言いますか……」」

「どうすればそんな凄まじいハモりが出来るのよ……い、いえ、まだまだよ!私はかしこい、可愛い、エリーチカ!このまま退いたら、ポンコツ扱いされてしまうわ!」

『もう手後れでは……』

「誰よ!今言ったの!色んな方向から聞こえたわよ!」

 何故か周りからさっと目を逸らす音が聞こえた気がした。ちなみに俺もその一人だ。

「まあ、いいわ。じゃあ、比企谷君。手伝ってもらえるかしら?」

「は?」

「な、何を言っているのですか!」

「え?だって、その方が……」

「認められません!」

「セリフを盗られた!」

 結局、水着に着替え始めるまで、10分くらいかかってしまった……。

 

 絢瀬さんが更衣室に入ってから数分後、元気な声が飛んでくる。

「よし!比企谷君、ちょっと確認してもらえる?」

「は?」

 彼女が言った事を理解する前に、海未が一歩前に出た。 

「私がします!」

「それじゃあ今日来てもらった意味がないでしょう?まったく、海未ってばポンコツなんだから」

「何故でしょう。これまでの人生で最大の侮辱を受けた気がするのですが……」

 人生最大は言い過ぎなような……しかし、そうでもないような気もする。

「さ、比企谷君……ちょっと恥ずかしいから、顔だけこっち側に……」

「…………」

 やばい。なんかこう、『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ』ぐらいの死亡フラグ。

「……おい、俺はどうすればいいんだ」

 隣にいる海未に確認すると、彼女はそっぽを向いて、その表情を隠した。

「むぅ、絵里があそこまで言っているのだから、見て上げればいいのでは?」

「なんか怒ってないか?」

「怒ってなんかいません。ただ、いつでも貴方を成敗できるように身構えているだけです」

「…………」

 いや、普通に怖いんですけど……。

 成敗って時代劇以外で初めて聞いたぞ。

 しかし、このまま逃げるわけにもいかない。

 俺は意を決して、カーテンの向こうを見た。

 そこには想像を超えた世界が広がっていた。

「ど、どう?」

「!!」

 クリティカルヒット!

 ハチマンは死んでしまった!

 

 ヒント ドラゴンクエストⅢ





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