感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!
それでは今回もよろしくお願いします。
「待たせたわね」
ようやく海未の水着を選び終えたところで、絢瀬さんがいきなり棚の陰から現れた。その顔はやたら自信に満ち溢れているのに、何故か不安な気持ちで一杯だ。
しかし、そんな心配はお構いなしに、ずいっと距離を詰めてくる。
「さあ、待ちに待った私の番よ!!」
「「…………」」
「ど、どうしたの?リアクションが冷たくないかしら?」
「「いや、なんかもう……初登場の時のテンションと違いすぎて、リアクションに困ると言いますか……」」
「どうすればそんな凄まじいハモりが出来るのよ……い、いえ、まだまだよ!私はかしこい、可愛い、エリーチカ!このまま退いたら、ポンコツ扱いされてしまうわ!」
『もう手後れでは……』
「誰よ!今言ったの!色んな方向から聞こえたわよ!」
何故か周りからさっと目を逸らす音が聞こえた気がした。ちなみに俺もその一人だ。
「まあ、いいわ。じゃあ、比企谷君。手伝ってもらえるかしら?」
「は?」
「な、何を言っているのですか!」
「え?だって、その方が……」
「認められません!」
「セリフを盗られた!」
結局、水着に着替え始めるまで、10分くらいかかってしまった……。
絢瀬さんが更衣室に入ってから数分後、元気な声が飛んでくる。
「よし!比企谷君、ちょっと確認してもらえる?」
「は?」
彼女が言った事を理解する前に、海未が一歩前に出た。
「私がします!」
「それじゃあ今日来てもらった意味がないでしょう?まったく、海未ってばポンコツなんだから」
「何故でしょう。これまでの人生で最大の侮辱を受けた気がするのですが……」
人生最大は言い過ぎなような……しかし、そうでもないような気もする。
「さ、比企谷君……ちょっと恥ずかしいから、顔だけこっち側に……」
「…………」
やばい。なんかこう、『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ』ぐらいの死亡フラグ。
「……おい、俺はどうすればいいんだ」
隣にいる海未に確認すると、彼女はそっぽを向いて、その表情を隠した。
「むぅ、絵里があそこまで言っているのだから、見て上げればいいのでは?」
「なんか怒ってないか?」
「怒ってなんかいません。ただ、いつでも貴方を成敗できるように身構えているだけです」
「…………」
いや、普通に怖いんですけど……。
成敗って時代劇以外で初めて聞いたぞ。
しかし、このまま逃げるわけにもいかない。
俺は意を決して、カーテンの向こうを見た。
そこには想像を超えた世界が広がっていた。
「ど、どう?」
「!!」
クリティカルヒット!
ハチマンは死んでしまった!
ヒント ドラゴンクエストⅢ
読んでくれた方々、ありがとうございます!