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それでは今回もよろしくお願いします。
三日後、千葉駅へ到着すると、待ち合わせの場所に、既に見覚えのある二人組がいた。その二人の抜群の容姿のせいか、そこだけぽっかりと空間ができている気がする。二度見していく人も珍しくなかった。
ある程度近づくと、海未の方が俺に気づき、目を鋭くする。何でだよ。
「八幡、遅いですよ。何故千葉にいる貴方の方が後から来るのですか」
「ああ、あれだ。色々あんだよ」
「また嘘ばっかり……」
「いや、俺は無罪だ。有罪というなら証拠を出せ」
いつもの
「はいはい。夫婦喧嘩はそれくらいにしときなさい」
「「誰が夫婦だ」」
「くっ……改めて見せつけられるとダメージが大きいわね……で、でも勝負はこれからよ!」
「絵里?勝負とは一体……」
「胸の大きさ勝負よ!」
「いきなり理不尽すぎます!」
ただの死体蹴りである。てか思春期の男子がここにいるんですが、それは……。
「しかし、何故に千葉……別に東京でも……」
「そこは絵里が譲らなくて……」
絢瀬さんの方を見ると、何やら一人でブツブツ呟いていた。
「よしこれまでは作戦通り。あとは私の水着姿で……」
あれ、何だろう?少し寒気が……冷たい視線に晒された事はこれまでに何度もあったが、これはそういったものとは別種の寒気である。なんかこう……獰猛な獣に死角から睨まれているような……。
「八幡?どうしたのですか。寒そうにして……こんなに暑いのに」
「俺もよくわからん……」
それは確かに、嵐の前の静けさだった。
「……じゃあ、俺は本屋に行ってくるわ」
「待ちなさい」
海未に首根っこを掴まれる。
「そんな自然に逃げようとしないでください」
「いや、やっぱり、恥ずかしいし……」
カラフルな女性用水着に彩られたコーナーは、もう夏休み終盤とはいえ、女性客はゼロではなく、女性物のコーナー特有の甘い香りも漂い、ぼっちでなくとも、男には入りづらい。
「貴方の心に疚しい気持ちがなければ大丈夫です」
「いや、そういう問題じゃねーだろ……」
「大丈夫よ!私達の彼氏みたいに振る舞っていれば!」
「絶対に問題がある……」
私達って複数系になってるし。
「さ、それでは」
「let’s go!」
「え?あ、いや、まだ心の準備が……!」
「むぅ……」
「どした?」
「いえ、あまり可愛らしい水着という物を意識した事がないもので……」
「ああ……お前、どっちかというと機能や耐久性重視してそうだもんな」
「た、確かに……しかし、そうもはっきり言われると、乙女心としては複雑ですね」
ちなみに絢瀬さんは、どんな水着を選ぶかを楽しみにしていてと言い、向こうの棚へと行った。彼氏云々の話はどこへいった。いや、別にいいんだけど。
海未は何着か手に取っては、首を傾げ、また同じ事を繰り返している。
「……何着か着てみりゃいいんじゃねーの?」
「それもそうですね……では、どれがいいか選んでいただけますか?」
「いや、絶対に失敗するから止めとけ」
「……それでも」
「?」
「それでも……貴方に選んで貰いたいのです」
海未はこちらをチラチラと見ながら、頬を紅く染めた。そんな表情をされると、こちらも無下には出来ないわけで……てかその表情、最近狙ってやってるんじゃなかろうか。
結局、体が自然と動いていた。
「…………わかった」
そう言って頷くと、海未は微笑みを見せた。
その空気が妙にこそばゆくて、間を埋めるように、口を開いた。
「まあ、それぐらいしねーと来た意味ないからな。さっさと決めようぜ」
「そ、そうですね」
「ふふふ……これチカ。これこそ最高の水着チカ」
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