捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

44 / 106

 感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!

 それでは今回もよろしくお願いします。


第43話

 三日後、千葉駅へ到着すると、待ち合わせの場所に、既に見覚えのある二人組がいた。その二人の抜群の容姿のせいか、そこだけぽっかりと空間ができている気がする。二度見していく人も珍しくなかった。

 ある程度近づくと、海未の方が俺に気づき、目を鋭くする。何でだよ。

「八幡、遅いですよ。何故千葉にいる貴方の方が後から来るのですか」

「ああ、あれだ。色々あんだよ」

「また嘘ばっかり……」

「いや、俺は無罪だ。有罪というなら証拠を出せ」

 いつもの

「はいはい。夫婦喧嘩はそれくらいにしときなさい」

「「誰が夫婦だ」」

「くっ……改めて見せつけられるとダメージが大きいわね……で、でも勝負はこれからよ!」

「絵里?勝負とは一体……」

「胸の大きさ勝負よ!」

「いきなり理不尽すぎます!」

 ただの死体蹴りである。てか思春期の男子がここにいるんですが、それは……。

「しかし、何故に千葉……別に東京でも……」

「そこは絵里が譲らなくて……」

 絢瀬さんの方を見ると、何やら一人でブツブツ呟いていた。

「よしこれまでは作戦通り。あとは私の水着姿で……」

 あれ、何だろう?少し寒気が……冷たい視線に晒された事はこれまでに何度もあったが、これはそういったものとは別種の寒気である。なんかこう……獰猛な獣に死角から睨まれているような……。

「八幡?どうしたのですか。寒そうにして……こんなに暑いのに」

「俺もよくわからん……」

 それは確かに、嵐の前の静けさだった。

 

「……じゃあ、俺は本屋に行ってくるわ」

「待ちなさい」

 海未に首根っこを掴まれる。

「そんな自然に逃げようとしないでください」

「いや、やっぱり、恥ずかしいし……」

 カラフルな女性用水着に彩られたコーナーは、もう夏休み終盤とはいえ、女性客はゼロではなく、女性物のコーナー特有の甘い香りも漂い、ぼっちでなくとも、男には入りづらい。

「貴方の心に疚しい気持ちがなければ大丈夫です」

「いや、そういう問題じゃねーだろ……」

「大丈夫よ!私達の彼氏みたいに振る舞っていれば!」

「絶対に問題がある……」

 私達って複数系になってるし。

「さ、それでは」

「let’s go!」

「え?あ、いや、まだ心の準備が……!」

 

「むぅ……」

「どした?」

「いえ、あまり可愛らしい水着という物を意識した事がないもので……」

「ああ……お前、どっちかというと機能や耐久性重視してそうだもんな」

「た、確かに……しかし、そうもはっきり言われると、乙女心としては複雑ですね」

 ちなみに絢瀬さんは、どんな水着を選ぶかを楽しみにしていてと言い、向こうの棚へと行った。彼氏云々の話はどこへいった。いや、別にいいんだけど。

 海未は何着か手に取っては、首を傾げ、また同じ事を繰り返している。

「……何着か着てみりゃいいんじゃねーの?」

「それもそうですね……では、どれがいいか選んでいただけますか?」

「いや、絶対に失敗するから止めとけ」

「……それでも」

「?」

「それでも……貴方に選んで貰いたいのです」

 海未はこちらをチラチラと見ながら、頬を紅く染めた。そんな表情をされると、こちらも無下には出来ないわけで……てかその表情、最近狙ってやってるんじゃなかろうか。

 結局、体が自然と動いていた。

「…………わかった」

 そう言って頷くと、海未は微笑みを見せた。

 その空気が妙にこそばゆくて、間を埋めるように、口を開いた。

「まあ、それぐらいしねーと来た意味ないからな。さっさと決めようぜ」

「そ、そうですね」

 

「ふふふ……これチカ。これこそ最高の水着チカ」





 読んでくれた方々、ありがとうございます!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。