感想・評価・お気に入り登録・誤字脱字報告ありがとうございます!
それでは今回もよろしくお願いします。
「お兄ちゃ~ん」
「…………」
「もしも~し」
「…………」
「こりゃダメだ」
「…………」
「……海未さんと何かあった?」
「っ!」
「お、お兄ちゃん!?か、顔から湯気が出てるよ!!」
「海未ちゃ~ん」
「…………」
「もしも~し」
「…………」
「も、もしかして怒ってる?」
「…………」
「そんなぼ~っとした顔で首を振られても……」
「…………」
「もしかして、比企谷君と何かあった?」
「っ!」
「う、海未ちゃん!?どうしたの!?顔から湯気が出てるよ!」
顔が熱い。
プールでの一件から三日経ったが、まだ頭の中はこんがらがって、まともな思考が出来ていない。もこもこした淡く青い雲に取り囲まれたような妙な感覚のまま、夏休みらしく、ジョギング以外に家からは出ずに過ごしていた。
そのせいか、ベッドに寝転がっても、眠気が中々やってこない。
溜息を吐き、頬に掌をそっと当てる。最早何度繰り返したかわからないその動作は、あの時の柔らかな衝撃を思い出させるだけであった。
「…………」
スマホを手に取り、電話帳を開く。大した人数は登録していないので、目的の名前にすぐ行き着いた。
しかし、彼女の名前を眺めるだけで終わってしまう。
電話したところで何を話せばいいのだろうか。
そもそも俺は何を迷っているのだろうか。
中学時代のように自惚れていないだろうか。
おそらく、本人に会わない限り、何もわかりはしないのだろう。
とりあえず……何もなかった風の態度を装おう。
我ながら情けない決意を胸に、頭の中でその時のシミュレーションをしてみた。
顔が熱い。
三日前のプールでの一件以来、頭が上手く働いてない気がします。さすがに自分でも予想していませんでした。
ベッドに寝転がっても、眠気が中々やってこない。
指先で唇をそっと撫でる。
そこにある微熱を確かめるような拙い行為は、却ってあの瞬間を思い出させるだけでした。
「~~~~!」
枕に顔を押しつけ、何度もベッドの上を転がる。
こ、これでは私があの男の事が……八幡の事が気になって仕方ないみたいじゃありませんか!
……いや、しかし……
実際のところ、彼は気づいているのでしょうか?
もしかしたら、頬に何かぶつかったくらいにしか思っていないかもしれません。
もしそうだとしたら、私はただ自惚れていただけという事になってしまいます。
さすがにそれは恥ずかしい。
こうなったら……何事もなかったように振る舞ってみるしかないですね。
……ぼんやりと目が覚める。
どうやらいつの間にか寝落ちしていたらしい。
「おはようございます」
「……ああ、おはよう」
「…………」
「…………は?」
丁寧な朝の挨拶に反応してしまったが、それが海未の声である事に気づき、一瞬で意識が覚醒する。
起き上がり、声がした方に顔を向けると、そこにはジャージ姿の園田海未が正座していた。
読んでくれた方々、ありがとうございます!