それでは今回もよろしくお願いします。
俺達は程なくしてプールに到着した。
手早く着替えを済ませ、美少女4人の着替えを待っていた。あれ、美少女は4人じゃない?そんなはずは……
「八幡、今変な事考えてなかった?」
「い、いや気のせいだ。それより早かったな」
「僕も男の子だからね。そんなに手間はかからないよ」
戸塚は白い大きめなパーカーを着ていて、いつも通り可愛らしい。これだけでここに来た甲斐があるというものだ。
ほんわかとした幸せを噛み締めていると、ハキハキしたよく通る声が飛んできた。
「お待たせ~!」
高坂さんのこちらを呼ぶ声に、周りの男子共が少しどよめいた。しかし、その気持ちもわからなくはない。
高坂さんはオレンジ。南さんは黄緑。そして、二人の背に隠れ、恥ずかしそうにしている海未は、青のビキニを着ていた。三人共、そのすらりとした肢体を惜しげもなく太陽の下に晒している。これで人目を引くなというのが無理だ。
「うわ、めっちゃ可愛い」
「あのオレンジの子いいよな」
「緑の子のスタイル、最高」
「俺はあのパーカーの子が……」
「ちきしょう、ぼっちの癖に美少女独り占めしやがって」
「あの青い水着の子、すらっとしててとても綺麗よね~」
おい、誰だよ。ぼっちとか言った奴。そろそろ正体を現せよ。
戸塚は目を輝かせ、三人を褒める。
「わあ、皆可愛いね!」
「ありがと!ほら、海未ちゃん!いつまで恥ずかしがってるの?」
「いや、私は二人の陰で……」
海未は性格からして、肌の露出が恥ずかしいのか、二人の背に隠れようと必死になっている。勿論、全然意味はなく、その姿は余計に人目を引いてしまう。
高坂さんはその様子に溜息を吐いた。
「はいはい。わかったから」
南さんは海未を励ますように頭を撫でる。
「海未ちゃん。可愛いから大丈夫だよ」
そして、二人して海未を押し出した。
「えっ!ちょっ……!」
二人に押し出された海未が、その勢いで目の前にやってきた。彼女は羞恥で頬を紅く染め、もじもじしながらこちらを窺う。
「…………」
「…………」
気まずい沈黙。額を伝う汗は暑さのせいだけじゃないだろう。
「……な、何か言ってください」
「……いい感じだ」
「そ、そうですかそうですか……ありがとうございます」
「あ、ああ……」
顔が熱いのに知らんふりをして、さっさとプールへ向かう事にする。
「あら、皆。偶然ね」
いきなり声をかけられ、立ち止まると、高坂さんが真っ先に反応した。
「絵里ちゃん!?」
そこには金髪碧眼の高校生離れした美人がいた。
白いビキニを身に纏ったその姿は、そこらの芸能人でも太刀打ちできないくらいの美しさがある。
「久しぶり、比企谷君」
「ど、どうも……」
「隣の君は……」
「あ、はい。僕は……」
戸塚と自己紹介の挨拶をしながら近寄ってくる絢瀬さん。近い近い近い近い!わざとじゃないかと思うくらいだ。
そして、絢瀬さんの近くには、もう一人高校生離れしたスタイルの女性が立っていた。紫色に包まれた豊満な肢体に、彼女連れの男も見惚れ、彼女に叱られていた。
ちなみに本人はそういう視線に慣れているのか、あっけらかんとしている。
「これも神様のお導きやね」
「あ、希ちゃん!」
「二人も来ていたのですね」
戸塚に自己紹介を終えた絢瀬さんが、何故かまた距離を詰めてきた。肌と肌が触れ合いそうになり、かなり緊張感が走る。
「むっ」
しかも海未の視線が怖い!中学時代ならうっかりツンデレと勘違いしちゃうレベル。
「ふぅ、素晴らしい偶然ね。神に感謝するわ」
「そ、そこまでですか?」
絢瀬さんの空を仰ぐ姿に海未はやや引いていた。俺も引いている。
しかし、彼女はそんな視線は意に介さず、海未に向き直る。
「ところで海未」
「はい?」
「貴方と比企谷君は……その……どこまで進んでいるのかしら?」
「「?」」
「何というか……もう既にドキドキしながらトキドキ、トキメキスしちゃう関係なのかしら?」
「な、何ですか?その歌いたくなるようなフレーズは……」
歌いたくなるのかよ……。
「まあ、要するに付き合っているのかってことよ」
「「付き合っていません」」
つい一緒になって否定してしまう。何をどうしたらそう見えるのか。やれやれだぜ。
絢瀬さんは何故か頬をひくつかせながら、念を押してきた。
「そ、そう?」
「「はい」」
「……本当に?」
「「そんなわけないです。冗談は止めてくださいよ」」
『…………』
辺りが急に静まり返る。
沈黙の中、沢山の視線が突き刺さるというのは、ぼっちでなくとも辛い。つまり、ぼっちなら倍は辛いという事だ。
そんな中、絢瀬さんはようやく笑顔を見せ、こちらに向け、頷いた。
「……わかったわ。し、信じましょう」
『信じた!!まだ心が折れていないだと!!』
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