捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第34話

 

 1学期が終わり、夏休みに入ってから1週間。

 日に日に気温が高くなるように感じ、クーラーが恋しくなるこの時期。俺は炎天下で人たちを待っていた。

 ジリジリと肌が焼かれていくような感覚。暑さをもろともせず行き交うリア充。ああ、帰りた……

「八幡!」

「おう……」

 夏の暑さをふきとばすように天使が駆け寄ってくる。来てよかった。夏大好き。戸塚最高!

「ごめん。待たせちゃった?」

「いいや今来たところだ」

「それじゃ、行こうか」

「そうだな」

 俺と戸塚は挨拶もそこそこに電車に乗り込んだ。

 なんかデートみたいでテンション上がる。オラ、ドキドキすっぞ。

「八幡っていつの間にか園田さんととても仲良くなってたんだね!」

 戸塚の一言であっという間に現実に引き戻される。

 そう、今日は戸塚と二人きりのデートではなく、海未と高坂さんと南さんを含めた5人でプールへ行く事になっている。

 海未が商店街の福引きで無料チケットを当てたらしく、夏休み初日の夜に電話で誘われた。

『チケットか、良かったな』

『あの、それで……八幡の予定の方は』

『ああ、夏休み中は忙しくて』

『暇みたいですね。よかった』

『……おい』

『私は穂乃果とことりを誘いますので、貴方もお友達を誘ってきてください』

『いや、ちょっと待て……』

『あ……無理せずに小町さんとでも大丈夫ですよ』

『いや、気遣いの方向性がおかしいから。まあ、いいんだけどよ……』

 こんな感じでなし崩し的に予定が立ってしまった。まあ、断る理由も特にないし、あれから気まずくなってない事もわかったので別に構わないのだが。

 ……いつぞやの朝、海未が寝ぼけて布団に入ってきた時の事を思い出す。

『『…………』』

 互いに目を見開き、至近距離で見つめ合う。

 園田のぱっちりと大きな目や形のいい鼻、小さく開かれた桜色の唇が少しだけ震えていた。

 本当はすぐにでも目を逸らし、起き上がるべきなのだろう。しかし、それができない自分がいた。

 俺は完全に園田に見とれてしまっていた。

 朝の微睡みの中、こんなにも綺麗なものがあるのだと、ぼんやり思った。

 しばらくすると、その魔法のような時間は終わった。

『あ、貴方は朝から何をしているのですか!』

『いや、それはこっちのセリフだから』

「八幡……八幡!」

「おお……どした?」

「もう、どうしたの?ぼーっとして……」

「いや、すまん……少し考え事してた」

「もしかして……園田さんの事?」

「…………」

「あ、八幡寝たふりしてる!」

 

「ねえ、海未ちゃん。比企谷君の事考えてたの?」

「…………」

「寝たふりしちゃったね」





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