それでは今回もよろしくお願いします。
「はっ……はっ……」
「あら、おはよう」
「っす……」
朝のジョギング中。最近よく見かけるおばちゃんが笑顔で声をかけてくれたので、走りながら会釈する。こういう時に笑顔を添えられない辺りが俺のぼっちたる所以だろう。
そんな事を考えていると、いつの間にか我が家に辿り着いていた。一人で思索に耽る事ができるあたり、ジョギングはぼっち向けのスポーツといえるだろう。
俺はシャワーを浴び、支度を済ませ、朝食を摂る事にした。
「…………」
「どした?」
「お兄ちゃんがお兄ちゃんじゃない」
「……小町ちゃん。お兄ちゃん、傷ついちゃうよ」
朝から兄の存在全否定とか。
うっかり死んじゃうレベルじゃねーか。
「だって、最近のお兄ちゃん……マジメじゃん」
「いや、ぐれるよりマシだろ……」
「そうじゃなくて。ちょっと前までは朝はギリギリだったり、たまに起きなかったりじゃん。それが最近では朝からジョギングして……それに……」
小町はこちらに近寄り、俺の体をペタペタと触りだした。
「小町ちゃん。兄と妹だなんてエロゲー展開、お兄ちゃんは認めませ「キモい」はい」
「やっぱり最近、たくましくなったね」
「まあ、あんだけ運動させられたらな……最近二度寝しようとすると、あいつの鬼のような形相が夢に出て来るんだよ」
夢の中でも圧迫してくるとか……そろそろパワハラで奴を訴えてもいいんじゃないですかねぇ。
小町はそんな俺を見ながら、これ見よがしに大きな溜息をついた。
「はあ……お兄ちゃんが朝からのろけるなんて……小町も予想外だよ」
「……は?」
今、のろけとかとろみとか聞こえたような……。
小町は味噌汁をすすり、一息ついてから、ニヤリと怪しい笑顔を浮かべる。
「は?じゃないよ。だってお兄ちゃん、海未さんの事が好きなんだよね?」
「小町。熱でも出てるのか?今日は学校休むか?」
「違うよ!だってお兄ちゃん今までの女子に対しての態度と明らかに違うもん!」
「はあ……いいか、小町。これに関しては俺が違うんじゃない。あいつが今までにいないタイプの女子なだけだ」
「そ、そうなんだ……」
「ああ、そうだ。よく考えてみろ。出会って一、二カ月程度の男子を無理矢理鍛え上げる女子がいるか?」
「はあ……」
「ったく、ひどい奴だな。あれじゃ、嫁の貰い手なんか……電話が来やがった。噂をすれば影か」
「…………」
一体何の電話だろうか。まあ多分、俺がトレーニングをサボっていないかどうかの確認だろう。
「どした?……いや、朝の挨拶って……ああ、はいはい。おはよーさん」
「いや、サボってねーから。そっちこそどうなんだよ」
「まあ、あれだ。新曲の練習……頑張れよ」
「手作り料理?いや、お前下手そう……いや、すいません。わかりました。ありがたくいただきます」
小町は誰にも聞こえないくらいの声で呟いた。
「いや、仲良すぎだから」
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