捻くれた少年と真っ直ぐな少女   作:ローリング・ビートル

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第28話

 

「最近、海未ちゃん一段と綺麗になったねぇ」

「はい?」

 練習後、タオルで汗を拭いていると、希からいきなりな事を言われる。

 私はその言葉の意味を飲みこむのに暫く時間を要したが、意味に気づいてからは、反射的に否定した。

「な、何を言っているのですか!私はい、いつも通りです」

 勿論、褒められて悪い気はしない。しかし、自分の性格上どうしても恥ずかしさの方が勝ってしまう。こういった素直じゃないところが、可愛げのなさに繋がるのだろう。

 希は私の反論などお構いなしに、私の顔を覗き込む。その目はいつものように、悪戯っぽく細められていた。ただ、私の視線は、その豊満な胸にいってしまった。男の子は大きい方を好むと聞いた事があるが、彼もこのぐらいが好きなのだろうか。だとしたら、即刻その破廉恥な精神をたたき直さなければ。

 考えていると、希が口を開いた。

「もしかして~……恋?」

「はあっ!?」

 私はここ最近、立て続けに聞かれた質問に、同じような驚き方で返した。

 視界の隅では、穂乃果とことりがニッコリと微笑み、絵里がチラチラとこちらを窺っていた。あれ?今、風も吹いていないのに、絵里のポニーテールがくるりと回った気が……。それに、ことりの笑顔もいつもより曇っている気が……。

 他のメンバーもキョトンとした目を向けていた。

 こ、これは分が悪いですね。

「全く……そんなわけないじゃないですか。私達はスクールアイドルなのですよ。恋愛だなんてとんでもない。さぁ、もう遅いので帰りましょう。そうしましょう」

 私は練習着のまま、その場をさっと立ち去った。

 ことりには後で電話でもしておきましょう。

 

『怪しすぎる……』

 

 自宅でも小さな変化が起こっていた。

 何だかやけにおかずの量が多い気が。

 私の視線に気がついたお母さんが照れ笑いを浮かべる。

「ふふっ。貴方と八幡君が一緒に運動してる姿を思い出してたら、つい勘違いして作りすぎちゃって」

「珍しいですね」

「これで貴方を」

「な、何を言っているのですか!?」

 私はまた同じような反応をして、お父さんはかなり動揺していた。唐揚げをお味噌汁の中に入れ、やたらとかき混ぜている。いや、それより……

「お母さん、今……八幡君と言いませんでしたか?」

「あら、言ったわよ。小町ちゃんも名前で呼んでいるわ」

「…………」

 おかしい。

 何故か胸がざわついてしまっている。

 たかが名前で呼んだだけではないですか。

 ……本当にどうしたのでしょう?私は。

 考えていたら、つい食べ過ぎてしまい、外を走っていたら、ことりに電話するのを忘れてしまっていた。

 





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