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それでは今回もよろしくお願いします。
「最近、海未ちゃん一段と綺麗になったねぇ」
「はい?」
練習後、タオルで汗を拭いていると、希からいきなりな事を言われる。
私はその言葉の意味を飲みこむのに暫く時間を要したが、意味に気づいてからは、反射的に否定した。
「な、何を言っているのですか!私はい、いつも通りです」
勿論、褒められて悪い気はしない。しかし、自分の性格上どうしても恥ずかしさの方が勝ってしまう。こういった素直じゃないところが、可愛げのなさに繋がるのだろう。
希は私の反論などお構いなしに、私の顔を覗き込む。その目はいつものように、悪戯っぽく細められていた。ただ、私の視線は、その豊満な胸にいってしまった。男の子は大きい方を好むと聞いた事があるが、彼もこのぐらいが好きなのだろうか。だとしたら、即刻その破廉恥な精神をたたき直さなければ。
考えていると、希が口を開いた。
「もしかして~……恋?」
「はあっ!?」
私はここ最近、立て続けに聞かれた質問に、同じような驚き方で返した。
視界の隅では、穂乃果とことりがニッコリと微笑み、絵里がチラチラとこちらを窺っていた。あれ?今、風も吹いていないのに、絵里のポニーテールがくるりと回った気が……。それに、ことりの笑顔もいつもより曇っている気が……。
他のメンバーもキョトンとした目を向けていた。
こ、これは分が悪いですね。
「全く……そんなわけないじゃないですか。私達はスクールアイドルなのですよ。恋愛だなんてとんでもない。さぁ、もう遅いので帰りましょう。そうしましょう」
私は練習着のまま、その場をさっと立ち去った。
ことりには後で電話でもしておきましょう。
『怪しすぎる……』
自宅でも小さな変化が起こっていた。
何だかやけにおかずの量が多い気が。
私の視線に気がついたお母さんが照れ笑いを浮かべる。
「ふふっ。貴方と八幡君が一緒に運動してる姿を思い出してたら、つい勘違いして作りすぎちゃって」
「珍しいですね」
「これで貴方を」
「な、何を言っているのですか!?」
私はまた同じような反応をして、お父さんはかなり動揺していた。唐揚げをお味噌汁の中に入れ、やたらとかき混ぜている。いや、それより……
「お母さん、今……八幡君と言いませんでしたか?」
「あら、言ったわよ。小町ちゃんも名前で呼んでいるわ」
「…………」
おかしい。
何故か胸がざわついてしまっている。
たかが名前で呼んだだけではないですか。
……本当にどうしたのでしょう?私は。
考えていたら、つい食べ過ぎてしまい、外を走っていたら、ことりに電話するのを忘れてしまっていた。
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