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それでは今回もよろしくお願いします。
「なあ、園田……」
「何ですか?」
「今日……いつもよりきつくないか?」
「知りません!ふんっ」
「なんか理不尽なんだが……」
「さ、まだまだ行きますよ!」
「お、おう……!」
どうやら今日の園田はご機嫌ななめらしい。俺、なんかしたっけ?理由を聞こうとしても、目が合ったら合ったで、顔を真っ赤にしてそっぽを向くという、にっちもさっちもいかない状態だ。なので、ここは俺らしく放置しておく事にした。これは敵前逃亡ではない。戦略的撤退である。
「はあ……はあ……海未ちゃん……もう……どこまで走るの?」
「はあ……はあ……私……もうダメかも……」
しばらく走ってから、いつもの公園で休憩する事にした。相変わらず多くの人で賑わっていて、あちこちにシートを広げてゆったりしている家族連れやカップルがいた。芝生のふわふわした感触が心地良い。
俺と園田はその賑わいから少し離れた場所に腰を下ろしていた。
「そういや、また順位上がってたな」
「え?」
「スクールアイドルのランキングだよ……」
「あ、ああ、そうですね!ありがとうございます」
園田はやたらとあたふたしながら頭を下げる。この前とテンションが違いすぎて、こちらが反応に困る。
さっきあんなに走っていたから具合が悪いとかはないと思うが、念のため聞いておいた方がいいかもしれない。
「なあ、もしかして具合悪いのか?」
「ち、違いますです!」
「……やっぱおかしいぞ」
「そ、そんな事はありません!飲み物を買ってきます」
「あ、おい……!」
自動販売機の方へ駆けだした園田について行こうとしたら、足がもつれた。
「っと!」
「きゃっ!」
普段ならまだ踏ん張れたかもしれないが、さすがに足がくたくたになっていて、それもできず、園田を巻き込み、芝生に倒れ込んだ。
「悪い。だ、大丈夫か?」
「ええ。だいじょう……」
園田が怪我をしてないようなので安堵したのも束の間……。
「…………」
「…………」
彼女の顔が目の前にあった。
どのくらい近いかというと、あと少しで唇が触れ合うくらいの近さである。
……やばいやばいやばいやばいやばい!!
自分が置かれている状況に気づき、起き上がろうとするも、体が動いてくれない。俺は完全に園田に魅せられていた。
園田は不思議と声も出さず、とろんとした目をこちらに向けるだけだ。そして、いつの間にか肩に置かれていた彼女の手に徐々に力が入っていった。
そのまま熱い吐息が何回か交わってから、理性が飛びかけた瞬間……
「「ちょっと待ったぁ~!」」
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