それでは今回もよろしくお願いします。
「あら、あなたが海未のお友達?」
「あ、絵里ちゃん」
声のする方を向くと、そこには音ノ木坂学院生徒会長にして、μ'sのメンバーの絢瀬絵里がいた。生まれて初めて見る美しい金髪碧眼に、呼吸さえ止まりそうになる。
彼女はこちらのそんな心情などお構いなしに距離を詰めてきた。
「初めまして。絢瀬絵里です」
「は、初めまして……比企谷……八幡、でしゅ……」
か、噛んじまった……。
園田から精神力を鍛えられていなかったら、言葉もはっせなかっただろう。
「ハラショー!素敵な名前ね!」
「は、はあ」
近い近い、近いよ、この人!
こ、これが外国の血の為せる業だろうか。
甘い香りに鼻腔を刺激され、意識を持っていかれてしまいそうだ。
「絵里……近くないですか?」
「あはは……」
「そう?普通だけど」
「私達の時はかなりツンケンしてましたけど」
「海未、メイド服似合ってるわ。素敵よ」
「それでは誤魔化されませんよ!」
「ねえ、はちま……比企谷君」
「は、はい……」
「今、名前で呼ぼうとしていませんでしたか!?」
「べ、別に親しげに名前で呼ぼうとしたけど、やっぱり馴れ馴れしいと思われたら嫌だから名字で呼んだとかじゃないんだからね!」
「本当にどうしたのですか!?」
「まだ皆が集まっていないからよ」
「理由が適当すぎるよ、絵里ちゃん!」
「そうかしら?とりあえず私もここに座るわね」
絢瀬さんは、俺が返事するよりはやく、隣に滑り込んできた。
甘い香りがさらに近くなり、ほんの少し鼓動が速くなるのを感じる。……いや、近すぎないですかね。肩とか押しつけられてる気さえするんだが。
「…………」
「絵里ちゃん?」
高坂さんも怪訝そうな目を向けるが、絢瀬さんは全く動じない。
「念のため詰めてるだけよ」
「念のため?」
「そうよ。念のためよ、念のため」
「絵里……私が場所を変わりましょうか?」
「大丈夫よ。念のためだから」
「『念のため』の使い方が雑すぎて意味不明ですよ!」
「ねえ、皆……好きな人、いる?」
「何故いきなり恋愛トーク?」
おかしい。絢瀬さんは、クールで仕事のできる女性の雰囲気があると園田に聞いた事があるのだが……。なんか……怖いな。何が怖いのか自分でもわからないが。
「私は……いないかなぁ」
高坂さんは照れ笑いを浮かべながら答える。つーか答えるのかよ……。
「わ、私は……」
園田までも頬を紅く染め、もじもじし始めた。お前も答えるのかよ、というツッコミ以前に、『いません』と即答しなかった事が意外だった。
「な、何をジロジロ見ているのですか」
「いや、別に……」
何と答えていいかわからずにいると、高坂さんが割り込んできた。
「ねえ、比企谷君!海未ちゃんのメイド姿、とっても可愛いよね?」
「ほ、穂乃果!?何を言っているのですか!」
「可愛いよね!」
「…………」
確かに可愛いとは思う。しかし、相手は園田だ。
普通に褒めるのは逆に失礼な気がする。
俺は園田の目を見れないまま言った。
「馬子にも衣装」
「!」
顔が一瞬にして乙女から般若になった園田から、脛を思いきり蹴られた。
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